異世界と現代兵器 ~いや、素人にはちょっと~

霞草

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第五章

103話

 奴隷商に告げられた内容に驚き横に座るリアナを見ると、確かに首に奴隷紋と呼ばれる模様が見える。
 彼女は俯いており、足の上に落ちた涙がシミを作っていた。

 原因はやはりあの糞伯父だった。

 リアナの支度金を奪った伯父は2日間の間に賭博と飲食店、娼館に借金を作っていた。
 どうやったらたった2日間でそんなに借金を作れるのかと思うほどの額を聞いて、呆れを通り越して感心してしまった。

 伯父が逮捕された翌日、リアナは仕事を辞めて家に帰った。

 その日の夜に先ずは賭博場の借金取りが来た。
 借金は伯父名義だったため、伯父の家にある物は全て伯父の物だと主張した賭博場の借金取りに取られてしまった。
 その中には父親が使っていたドライフルーツ作りの道具も含まれていた。父親の物だと言っても取り合ってもらえなかったようだ。

 更に翌日、ここの大家が家賃の取り立てに来た。伯父は半年も家賃を滞納しており、家財を家賃代わりにと取りに来たが、既に賭博場が全て持ち帰った後だったため、リアナとラモーナに即刻退去するように言った。
 ここを出されると他に行く当てはない。リアナはお店から受け取ったたった1日分の僅かな給金(俺が店に払った代金の一部なんだけどね)から、取りあえず1週間分の家賃を払って家から追い出されるのを回避した。

 そして大家が帰った後、今度は居酒屋の店主が借金を取り立てに来た。
 伯父の物は一切ないので払えないと言うと、その必要はないと言ってきた。
 どういうことなのか聞くと、伯父は後でリアナが払いに来るからと言ってリアナのツケで飲み食いしていたらしい。
 それでもリアナは一切知らない話しなので事情を話すと、居酒屋の店主は半額でもいいから払ってくれと懇願してきた。
 このままでは家族が養えないと泣きつかれたリアナは半額ならばと了承した。
 だが手持ちのお金はほぼ無く、全額渡すとラモーナ共々食べられなくなってしまう。その為、毎週少しずつ支払い、ひと月で完済することで折り合いを付けてもらった。
 その時、店主は返済の契約書を交わして欲しいと言ってきたので契約書を交わした。

 残ったお金でドライフルーツ作りの道具を買い揃えて製造する。そして販売を開始できたら家賃と居酒屋の支払いは何とかなるだろうと考えていた。
 食事に関してはかなり我慢しなければならないが致し方ないと。

 しかし、伯父の借金はこれだけではなかった。
 その日の夜、居酒屋の店主がツケを回収できたという話を聞いた他の店主がわらわらと家を訪ねてきた。
 全員がリアナが後で払いに来ると言っていたとして、居酒屋の店主と同じようにリアナに支払いを求めた。
 リアナは、居酒屋の店主には全額ではなく半額だったと言うと、それで構わないから払ってくれと言われた。
 だがリアナにはもう財力がなく、半額ですら払えないと伝えたところ、店主達は急に暴れ出した。
 その様子に怯えだしたラモーナを見たリアナは、店主達の脅しに屈して居酒屋の店主と同じ条件で半額を支払うという契約書を交わしてしまった。
 そして最初の支払日となった一週間後、つまり今日。大家と居酒屋の店主、その他の店主達の一週間分の返済額、総額凡そ16万バル。
 当然そんな額を用意できるわけはなく、なんとか返済日数を伸ばしてもらおうとした。
 しかし、店主達との契約書には、1回でも返済できなければ自分の身を売って全額返済すると書いてあった。
 リアナはそんな文章は覚えてないと言ったが、実際に契約書に書かれていた為、反論できなかった。
 その日、偶々マホンから来ていた奴隷商のコンスタンスに声がかかり、リアナを購入した。
 リアナの奴隷化手続きと借金総額825,000バルの返済が終わり、奴隷商以外が帰宅。
 姉妹が離れ離れになるので、コンスタンスが2人に最後のお別れの時間を与えていたところに俺がやって来た。
 ちなみに、テーブルに置かれている麻袋の中身は、身売り金から借金を返済した残金が入っている。
 このお金はラモーナに渡して生活費になる。ラモーナは未成年のため、マホンまで行けば教会が保護してくれることだろう。それくらいの旅費は残っているとのことだ。
 通常、リアナ程の容姿であればもっと高く購入できるが、処女ではないために価格を下げざるを得なかったらしい。
 それって俺のせいか?

「リアナはこれからどうなるんですか?」
「明日の朝マホンへ向かいます。その後、必要な教育を施して販売となります」

 販売って。人を物のように言いやがるわ。

「私も商売ですので。ただ……彼女は処女ではありません。いくら容姿がよくても処女ではない娘は余り売れ行きがよくありません。販売を開始して直ぐに売れることはないでしょう。まぁ、お客様次第ですので確実ではないですけどね」

 コンスタンスが俺に買いたいなら頑張れ的な目で見てくる。
 この人、案外いい人なんじゃ?いや、傷物を早く手放したいだけか?

「……マホンでいつ、いくらで売るんです?」

 コンスタンスの思い道理に話しが運ぶのはちょっと癪だが仕方がない。
 見習い冒険者にいったいいくらで売りつけるつもりなんだろうか。

「そうですねぇ。物覚えは良さそうですので……マホンに到着後4~5日程で教育は終わりそうです。価格は……250万バルでいかがですか?」

 いかがですかって、俺に売る気満々じゃねぇかよ。
 リアナは自分の価格を聞いてオロオロしてるし。
 しかしなんで250万バルなんだ?
 以前、冒険者ギルドで耳にした奴隷の価格は、若い娘は400万バルはするって言っていた。
 処女ではないとはいえ、250万バルは破格の値だ。何か裏があるのか?

「250万バル。お気に召しませんか?1人で変異種を倒す新進気鋭の見習い冒険者、ランクEに昇格間近と言われているドルテナさんなら、なんとか手が届く価格だと思うのですが……」

 今の懐事情はかなり余裕があるから250万バルなら……って、そこじゃない!
 何で俺のことをそこまで知ってるんだ?
 それにランクアップでランクEになるのは家族と今回の討伐隊メンバーくらいだ。
 見ず知らずの奴隷商が何で知っている?ギルド職員が冒険者の情報を漏らすとは思えないし。

 俺は目の前のコンスタンスを警戒し、いつでも銃を取り出せるようにした。
 それを察知した護衛と思う男も身構えるが、コンスタンスが手を上げて制止した。

「私は情報と言うものはとても重要だと考えております。特に、商会のあるマホンに関するモノには力を入れております。ドルテナ様の情報もその際に偶々耳にしたのです。ドルテナ様は奴隷の相場もご存じのご様子。当商会として、今後更なる活躍が期待できる方とご縁を得るよい機会と捉え、相場よりお安い価格を提示させていただきました」

 どこまで俺のこと知ってんだよ!奴隷商、こぇ~。

「先程お伝えいたしましたように、奴隷としての教育に4~5日かかります。その間に代金をご用意頂けるようであれば、ご予約ということで他の方にお売りすることはありません」

 はぁ~。俺が必ず買うものだと確信して話をしてるんだろうな。
 いまだに俯いたままのリアナと、姉に抱きつくラモーナを見て迷いは消えた。

「……分かりました。リアナは買わせていただきます。但し、マホンではなくここで」

 そう言ってアイテムボックスから250万バルを取り出してテーブルに置いた。
 コンスタンスの顔が一瞬ピクッとなったような気がした。

「ここでは無理ですか?」
「いえ、可能で御座います」

 目の前に出された譲渡の契約書を交わしてリアナの所有権を得た。
 その後、奴隷の扱いに関する法律等を教えてくれたコンスタンスは、マホンのお店の場所を伝えて帰って行った。

「ドルテナさ……ご、ご主人様。よろしくお願いいたします」
「いや、成り行きでこうなったけど、リアナを奴隷として扱うつもりはないからね。だから今まで通りで構わないよ」
「それでも……わかりました。よろしくお願いいたします。ドルテナ様」

 うむ。リアナも意外と頑固だな。呼び方はそのうちなんとかするにして、妹さんをどうするかだな。

「さてと、妹さんだけど、今夜どうする?」
「ドルテナ様?!私だけではなくラモーナまでご所望ですか?!」
「ち、違うわ!今夜の寝床はどうするの買って事!ここには家具類全てないんだろ?どこで寝るんだよ」

 ラモーナも雛が親鳥を見るような目をしないの!可愛いから思わず抱きしめたくなるじゃないか。リアナの妹にそんなことできないけど。

「それは……」
「はぁ~。だったら俺が泊まってる宿に来るか?まだ空きはあるだろうから一部屋取ってやるよ」
「でも、今後のことを考えると出費は抑えておかないと……」

 リアナは俺の奴隷となっているので俺の元へ付いてくるが、ラモーナはそうではない。
 マホンまで行けば教会の孤児院で見てもらえるが、成人したら出て行かなくてはならない。その時のためにもお金はできるだけ残したいのだろう。
 とはいえ、姉妹を離ればなれにするのも気が引ける。

「それは奴隷の福利厚生の一環みたいなものだ。気にするな」
「そんな話聞いたことないですよ?」
「いいんだよ。俺がそれで満足するんだから、ご主人様が満足するようにするのも奴隷の勤めだろ?さぁ行くぞ」

 俺は2人を立たせて背中を押すようにして家を出て宿を目指した。

 フェンリルの事もあるがマホンにはエルビラがいる。帰ったら住居について本気でどうにかしよう。
 あぁ、この状況をどうやってエルビラに伝えよう。行方不明になって帰ってきた上にフェンリルと奴隷がいるとか……。風俗に行った話しはしなくていいよね?
 そんなことを心配しながら宿に帰った。

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