異世界と現代兵器 ~いや、素人にはちょっと~

霞草

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第六章

134話

「無事に戻ってきたな」
「はい、遅くなってすみません」

 エルヴィスはマリンに跨がって戻ってきた俺に怪我がないことを確認して、安堵の表情を浮かべた。
 俺を心配してくれていたようで少し嬉しい。

「それで、この子達の奴隷紋が消えたと言うことは」
「主のケルッコ、死亡時の継承者リクハルドは倒しました」
「そうか。これでこの子らも自由の身だな」

 そう言って木の根元で仲良く3人で寝ている子供達に目をやる。
 どうやら俺が帰ってくるまでの間に寝てしまったようだ。

「ドルテナ、簡単に何があっのた教えて欲しい。掻い摘まんでで構わない。もう時間も時間だしな」
「わかりました。まず、山の山頂付近の櫓から再び ── 」

 と、脱出するまでの出来事を簡単に説明した。
 勿論金庫の話もした。
 後でバレて面倒くさい話になってはかなわないからだ。

「物資や金目の物の取り扱いについては私にも判断しかねる。マホンに帰ってから父上に聞くしかないだろうな」
「ですよね。相手はヴォルトゥイア帝国ですからね」
「さて、俺達も少し寝よう」
「わかりました」

 俺は畳まずに広げたままのテントをアイテムボックスから出して設置。
 俺のテントは結構広い。
 なので、子供達も一緒に入っても十分な広さがある。

 子供達をテントに移動させて、俺とエルヴィスも横になり眠りについた。


◆◇◆◇◆◇


 翌日。

 直ぐ近くで誰かが話している声が聞こえて目が覚めた。

「ふわぁ~」
「お、おはようございます!」

 元気な朝の挨拶が聞こえた方を見ると、昨日助け出した子供達が既に起きていた。

「やぁ、おはよう。少し寝過ごしたかな」
「そんなことは。あの、ありがとうございました。朝起きたらなくなってて、これドルテナさんのお陰ですよね?」

 そう言って自分の首をさすりながら俺に頭を下げてきた。
 他の子供達も同様に頭を下げる。
 拉致されていた3人の子供の首にあった奴隷紋は綺麗になくなっていた。

「気にするほどのことじゃないよ。たまたま俺がやりたいことが結果的にそう言うことを引き起こしたに過ぎない。目的のついでってやつだよ」

 手を横にヒラヒラさせながら子供達のお礼に答える。
 今更だけど、ちょっと恥ずかしい。

「さてと、朝御飯にするか。外に出て準備するから手伝ってくれる?」
「「「はい!」」」

 元気な子供3人と共にテントから出ると、ここを守るようにマリンが横になっていた。

「おはよう、マリン。見張りありがとうね」
『おはようございます、ご主人様。見張りと言っても何もすることはありませんでした』

 俺は労いの意味も込めてマリンを撫でる。
 愛からわず手触りのいい毛並みを堪能していると心が落ち着いてくる。
 ずっとこのまま撫でていたい欲求を抑え込み、朝御飯の準備に取りかかる。
 準備と言ってもテーブルとイスを並べるだけだ。

「じゃあ、このテーブルとイスを並べてくれ。それとこれをテーブルの上に」

 焼きたてのパンが入ったバスケットを子供に渡す。
 テーブルとイスが並べられたのを確認して朝御飯となる串焼きや温かいスープを出す。
 勿論取り皿も忘れない。
 更にはワイン樽を改造して作った巨大な水瓶も出しておく。
 樽には蛇口が取り付けられているので、この水で顔を洗ったり手を洗うことができる。
 飲み水としても利用できる。

 一通り準備ができたところで子供達にエルヴィスを呼びに行かせた。
 暫くしてテントからエルヴィスが起きてきた。

「おはようございます。寝苦しいところで申し訳ございませんでした。少しはお休みになられましたか?」
「やぁ、みんなおはよう。大丈夫だ。これくらいのことは平気さ。なんたって冒険者だからね」

 でた!エルヴィスの俺冒険者!
 なんでそんなに冒険者に拘るかな。いや、まぁ、それに付き合いますけどね。

「まずは朝御飯を食べましょう。それから今後の予定を相談したいと思っています」
「わかった。お腹が減ったままだと行動に支障が出るからね」

 エルヴィスがイスに座ると子供達も空いているイスに座り、テーブルに置いてある串やパンを美味しそうに頬張っていた。
 実際に美味しいしね。



「えっと、みんな食べ終わったようだから今後の話をしたいのですが、よろしいですか?」

 食後のお茶を飲んでいたエルヴィスに伺いを立てると、頷いて了承した。

「では、昨夜の内にあの砦は無力化しましたが、まだ全ての建物内を捜索していません。あそこに残されている物は全て持ち去り、何が行われていたかわかればと思います。その為の資料としても1つ残らず持って帰るつもりです」

 あそこで何をしようとしていたのか、またどういう指示が出ていたのかもわかればいいと思う。
 エルヴィスも異論がないようで、何も言わず再び頷く。

「その時にエルヴィスさんも一緒に回ってもらえますか?そこで何があったのが詳しく話をします」
「まだ簡単にしか聞いてないから頼むよ。その間子供達はどうする?」
「砦内で待っていてもらいます。一応マリンに護衛をお願いしますが、既に敵勢力はいませんのでここよりも安全だと言えます」
「それなら安心だな。それで、その後はどうする?」
「その後、あの砦を2度と使用できないように徹底的に壊します。特に砦を覆っている壁や見張り台の櫓は跡形もなく破壊するつもりです」
「砦をか?あの規模の物を1人で破壊するのは流石に無理ではないのか?」

 エルヴィスがお茶を飲みながら聞いてきた。

「敵のいなくなった無人砦を破壊するのは問題ありません。とはいえ一瞬では無理なので少し時間をいただくことにはなりますが」
「少しの時間でできるのであればお願いしよう。あのような砦など1つでも消しておきたいしな」

 まだ使ったことのない武器を試すいい機会だし、何より子供を自爆テロに利用する屑が使用していた砦などこの世からなくなってしまえばいいんだ。

「ありがとうございます。それが終わりましたら、まずはエルヴィスさんをシウテテに送り届けます。その後に子供達を村まで送り届ける予定です」
「いや、先に子供達を送り届けよう。私なら大丈夫だ。この子達を親元に帰す方を優先したい」
「わかりました。では先に子供達を送りましょう」
「助かる。それで、マホンではなくなぜシウテテに向かうのだ?マリンの移動速度ならマホンまでそんなに時間はかからないだろ?」
「えっとですね。エルヴィスさんを送り届けた後は、ちょっと別行動をとろうかと思いまして。あまり時間をかけていると難しくなるかも知れませんし。何より、家族のいるマホンに帰ると反対されて出してもらえないかなぁ、なんて思うんです。」
「……何をする気だ?」

 エルヴィスの表情が引き締まり、冒険者の顔からダスマダ領を治める領主一族の顔へと変化した。
 俺が何を考えているのか、何をしようとしているのかを見極めようとしている感じだ。

「昨夜話したダンジョンを攻略して潰してこようかと……」

 その為に必要な書類とダンジョンの場所を記した地図は手に入れている。
 だけど、のんびりしているとケルッコを殺したことがバレてあの書類が無意味になっては困るのだ。

「なに?本気か?……うむ。確かにドルテナは経験者ではあるが、あの時は他の者もいたのだろ?それを1人で、敵地に乗り込んでまでできるのか?」
「幸い食料などは相当量を持っています。それにダンジョン内で魔物を狩ればそれも食料にできます。香辛料などの調味料も十分にありますから。それに、最強パートナーのマリンがいますからね」

 テントの外にいるマリンと一緒なら、寝ている間の夜警の心配もない。水の補給は今から向かう砦でもできる。

「……そうか」

 エルヴィスは言葉少なくではあるが了承してくれた。

「ところで、君達の村はここから遠いの?」

 子供達を送ると言っても村の場所を知らない。
 大体の方向がわかれば、マリンに乗せてもらって上空から捜すのもいいかもしれない。

「捕まってここに来るまで3日かかったよ。でも道はわからない。目隠しをされてたからどこを通ったのか……」
「そっかぁ。ここら村までの道がわからないのか……方向だけ……も無理か。近くに町とか村はなかったの?」

 村ならば必ず街道に繋がっているはずだ。
 隣町か隣村かはわからないが、そこから辿れば住んでいた村にたどり着けるだろう。

「この国は俺達種族にとって住みにくい場所なんだ。人族に見つからないように住んでいるからちゃんとした道があるわけじゃない」

 隠れ里ってわけか。
 そうなると上空から捜すしかないか。
 でも完全な自給自足をしようとすればそれなりに大きな村になってしまわないだろうか。
 そうすれば誰かに見つかってしまう可能性が高くなるが……。

「他の村と全く行き来していないわけじゃないでしょ?どこか君達にとって安全な村とかはないの?」
「あるけど、隣の国なんだ」
「隣の国?シネスティア国ってこと?」
「うん。行ったこともないし村の名前も知らないけど、兎族の村なんだ」

 マヂか!?
 それってヒュペリトの事じゃないのか?
 でもあの村から出てる街道はシウテテにしかなかったが?

「その村にはアテがあるけど、その村から繋がる街道には君達の村はないよ?」
「だから道はないよ。毎回違う場所を通るようにして道ができないようにしているんだ」

 それで道ができないのか。
 となると、ヒュペリトに行けばこの子達の村を支援している人に出会えるかも知れないか。

「そうなんだね。なら君達をヒュペリトという村に連れて行く。きっとそこが君達の村と繋がりのある村と思うから。君達の安全はこの人が保証してくれるよ。ですよね?」

 俺に話を振られたエルヴィスは大きく頷く。

「あぁ、君達の安全は必ず守る。安心してくれていい」

 あの砦からこの子達を助けたいと言っていたエルヴィスだ。それ位のことはやってくれると思って正解だった。

「ね?さてと、では早速行動しましょう」

 俺達は誰もいなくなった砦に向かった。

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