異世界と現代兵器 ~いや、素人にはちょっと~

霞草

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第六章

135話

 砦にある櫓に子供達とマリンを残して砦の中を捜索中だ。
 建物に入っては中の物を片っ端からいただいていく。
 書類などヴォルトゥイア帝国に関する事が書かれている可能性が高いので、エルヴィスに渡している。
 砦内には兵士の宿舎や荷馬車、それを引く馬達もいた。
 たぶんこの馬達を使って俺達を襲撃したんだろう。
 砦内を周りながらその場その場で俺が目にしたこと、やったことをエルヴィスに話していく。
 最初はエルヴィスが攫われた後の話から始まり、俺がこの砦を見つけるまでを話した。
 そして、エルヴィスを助けるために潜入したスニーキングミッションを話すと、目を輝かせて聞いていた。
 エルヴィスは領主三男坊のくせに冒険者をやろうという性格だ。
 敵に見つからないように潜入するという部分にワクワクしているのだろう。

 しかし、この砦内での出来事を話していく内に段々と顔が引きつり、「ドルテナの戦闘力は人外の域に達していないか?」等と、言っていた。
 全く失礼な話だ。
 俺は人族の人間だよ。13歳でランクDの一般冒険者になっちゃったけど。それに中身は……。

「後はあの建物で全て終わりです」
「それが終わったらちょっと早いが食事にしよう」
「そうですね。以外と時間がかかってしまいました」

 太陽の位置を見ると昼には若干早いかも知れないが、途中の山道で食べるより建物内で食べた方が周りを気にする必要がない。
 最後の建物内を見て回り、子供達とマリンが待っている櫓に向かう。

「あ!帰ってきたよ!」

 上から聞こえた声に顔を上げると子供達が櫓から手を振っていた。

「遅くなってゴメンよ。ちょっと早いけどお昼御飯にしよう」
「やったぁ。ごはんだぁ」

 俺とエルヴィスは子供達の素直な反応に顔を綻ばせながら櫓を上がって行く。
 アイテムボックスから適当にお昼御飯を見繕って出してテーブルに並べ始めると、待ちきれない子供達が「いただきます!」と言って食べ始めた。

「こらこら、落ち着いて食べなさい。そんなに慌てなくてもまだ食べ物はあるから。喉が詰まっても知らないぞ。さぁ、エルヴィスさんもどうぞ」
「ありがとう。それで、この後はここを出てヒュペリトに向かうんだな?」
「はい。馬達も連れて行くんですよね?」
「あぁ、手間になるが頼む。このまま山に放つと狼などに襲われて死ぬのがオチだからな」

 この砦にいた馬達を全てヒュペリトまで運びたいとエルヴィスから相談されていた。
 ここまでヴォルトゥイア帝国の兵士も馬に乗って来ていたことを考えると、馬が通れる程度の道はあるはずだ。
 俺はマリンに乗っていたし、なにより空も飛んでいたから地上の状況を全部わかっているわけではない。
 そのマリンに乗って移動すれば直ぐヒュペリトに着くが、それはしょうがない。
 ヒュペリトに着いたらもう一度家族宛に手紙を出そう。
 ヒュペリトなら商人もいるだろうから配達の依頼も出せるだろう。

「それで、ある程度離れたらドルテナはこの砦を破壊するために別行動をとるのだろ?」
「はい。移動のためマリンを使いますが、移動が終われば直ぐにマリンはエルヴィスさんの護衛のために戻ってきます。その間は申し訳ないのですがご自身で身の安全の確保をお願いします」
「わかった。その程度なら私にでも可能だ」

 この砦を使えなくするために徹底的に破壊してしまうつもりだ。
 方法は、オートマチック・グレネードランチャー【Mk47】という武器を使う。
 これは、設置式の武器でグレネード弾を連続して発射させることが可能だ。
 射程は約1500mもある。
 これを一晩過ごした場所に設置し、グレネード弾を砦全体に満遍なく叩き込む。
 一度も使ったことがない武器ではあるが、数を叩き込めば砦を破壊することは十分に可能だろうと思っている。
 こういう武器を使う機会はなかなかないだろうから、試射目的が多少なりとも含まれていたりする。
 いや、俺が使ってみたいだけだな。

 当初の予定では、安全面を考えてエルヴィスと子供達も一緒に連れてくる予定だった。
 しかし馬と行動を共にしているのであれば、連れてくることはできない。
 その為、馬達が爆発音を気にならない距離を確保して待機させることにしたのだ。
 爆発音を聞いて馬に暴れられても困からね。
 砦を破壊し終わったらマリンに迎えに来てもらう。
 距離が離れているから連絡手段はないが、爆発音が途絶えたら迎えに来てもらうようにしている。



 お昼御飯を食べ終わった俺達は馬を回収して砦の門までやって来た。
 馬は俺とエルヴィスがそれぞれ引き連れて行くことになった。
 子供達はマリンの背中に乗ってもらう。
 飲み水もここの井戸から補充してあるのでかなり余裕はある。
 食料だが、食堂横にあった倉庫にも沢山の食材が保管されていた。
 調理は必要だが、調理器具ももらったし薪も十分ある。

「エルヴィスさん、よろしいですか?」
「あぁ、先ずはヒュペリトに向けて出発!」
「「「「おおぉ!!」」」」
『じゃあ、マリン。先導お願いね』 
『はい、お任せを』

 歩き始めたマリンと子供達の後に続いて、エルヴィスと俺が進んで行く。
 獣道と言ってもいいような山道を30分ちょっと歩いたところで、少し開けた場所に出た。
 距離的にも時間的にもいい感じなのでここで休憩を取ってもらう。
 その間に俺は砦の破壊にちょっと出かけてこよう。

「エルヴィスさん、今から砦の破壊に行ってきます。マリンは直ぐに帰ってきますが、その間の警戒には十分気を付けてください。幸い、この辺りに山賊や盗賊、魔物と言った者は感じられません。それでも警戒だけはよろしくお願いします」
「任せておけ。何かあればこれを使うさ」

 そう言って取り出したのは、ヴォルトゥイア帝国の秘匿兵器【魔弾】。
 勝手に秘匿とか言ってるけど……たぶんあっているだろう。
 この魔弾はあの砦の倉庫に保管してあった物の1つだ。
 アイテムボックスに入れておけば衝撃で爆発するといったこともない。
 マリンには、俺を運んでいる間でも爆発音が聞こえたら最優先で戻るように言ってある。

「必ず使ってくださいよ。それと、結構な範囲で爆風の影響を受けると思います。敵を倒すと言うよりは、マリンを呼び戻すつもりで使ってください。それと絶対に、決して近くに投げないでください」

 エルヴィスには使用上の注意を伝えてはある。
 今エルヴィスが手にしている魔弾は改良型らしく、俺が持っているハンドグレネード【M67】と似たような使い方になっていた。
 とは言っても安全ピンがあるわけではなく、叩きつければ爆発するという仕掛けらしい。
 砦を出るときに試しに1つ使用してみたが、結構な威力だった。
 誤って自分の近くに投げつけた場合、爆風などにより自分自身がやられてしまう可能性が高い。

「くどいぞ。私もドルテナが使用しているところを見ているんだ。何がどう危険なのかはわかっている。そう心配しなくても大丈夫だ」

 俺が何度も気を付けるように言っているからちょっと機嫌が悪い。
 でもエルヴィスに怪我をされては困る。
 何せ領主の三男坊だからね。
 だったら砦なんて放っておけばってなるんだろうけど、子供に自爆テロをさせるような輩は絶対に許せない。
 あのまま砦を残しておいて、ヴォルトゥイア帝国がまた同じ事を始める何て事になったら嫌だ。
 いずれヴォルトゥイア帝国の者があの砦にやってくるだろう。
 その時に徹底的に破壊された砦を見て怖じ気づいてくれれば……と、思っている。

「わかりました。では行ってきます」

 俺はマリンに跨がり、砦が一望できる反対側の山に向かった。
 1分とかからず辿り着くその移動速度に改めて驚いた。

「やっぱり空を移動すると早いよね。さてと、エルヴィスの事よろしくね」
『お任せを』

 俺を降ろしたマリンは直ぐにエルヴィスの元へ帰っていった。

 1人残った俺は、改めて砦を見る。
 距離的には砦全体が射程圏内に収まっている。

「ではでは、やりますか」

 アイテムボックスからオートマチック・グレネードランチャー【Mk47】を取り出す。
 見た目は機関銃のようだが、銃身は大きなグレネード弾の為に太い。
 グレネード弾は弾薬箱に収まっている。
 撃ち尽くすと、アイテムボックスから弾薬箱を取り出してセットするか、オートマチック・グレネードランチャー自体をアイテムボックスに出し入れするようになる。
 試射と練習を兼ねているので、今回は自分で再装填をしてみる。
 今回は敵がいるわけではないので、時間がかかっても問題はない。
 敵が向かってきている状況で初めてやるより、こういう時に何度も練習しておくことは重要だろう。

 このオートマチック・グレネードランチャー【Mk47】には何やらモニターが付いている。
 鑑定スキルによる取説によると、グレネード弾の種類が幾つかありそれを選択したり、目標物までの距離を測ったりできるらしい。

 「グレネード弾に種類とかあるの?何々、目標物上空で爆発?着弾したらとかじゃないのか?空中で爆発して何か意味があるのか?ハイテクすぎて素人にはどう使い分けたらいいのかわかんないよ……。んで、設置上の注意点。反動を押さえるために重りを置け?」

 取説(鑑定スキル)曰く、グレネード弾を発射した際の反動で本体が浮き上がるのを防ぐ必要がある。と書いてある。
 重りっていってもそんな便利な物持ってないし、砦からもらってきた物の中にも使えそうな物はない。
 そう思ってアイテムボックスに入っている物のリストを見ていると、このために用意された物を見つけた。
 たぶん最初から入っていたのだろう。俺は入れた覚えはない。
 それは、「土嚢」。今まで入っていることすら知らなかった。

「いつの間に入ってたんだ。アイテムボックスの中もそろそろ整理しないとダメだな。物が多すぎて探すのも一苦労になってきてるもんなぁ」

 都合良く見つかった土嚢を数個取り出してオートマチック・グレネードランチャー【Mk47】の三脚に被せていく。
 これで浮き上がりを抑えられるだろう。

「これで準備よし。では開始しますか。グレネード弾の種類は……よくわかんないから、着発信管ってやつでいいな」

 着発信管はグレネード弾が着弾したら爆発するタイプである。
 素人にはイメージしやすい弾頭だろう。

 オートマチック・グレネードランチャー【Mk47】の三脚はあまり高さがない。
 なので本体の後ろに座った状態となる。
 レバーをガシン!ガシン!と2回引いて目標物に狙いを付ける。
 狙いを付けるのは機械がしてくれるのだが……。
 狙いを付けたら後は引き金となっている部分を引くのではなく下へ押し込む。

ー タンッ  タンッ  タンッ ー

 銃声とはまた違った発砲音を鳴り響かせたオートマチック・グレネードランチャー【Mk47】は、目標物に見事命中させた。
 砦から白煙が上がった後、少し遅れて小さく爆発音が聞こえてくる。
 狙ったのは砦の入口。
 白煙が風に流されると、見事に吹き飛ばされた姿を現した。

「おぉぉ。これなら数を撃てばいけるな」

 オートマチック・グレネードランチャー【Mk47】の成果に気をよくした俺は、残りのグレネード弾も全て発射した。
 そして全て撃ち尽くした弾薬箱を本体から外し、新たにアイテムボックスから弾薬箱を取り出した。

「弾の交換だな。えっと、まず弾薬箱を外してからここを開ける。で、新しい弾薬箱を取り付けて……ここにグレネード弾をはめるのか。で、蓋を閉めると……。よし、これで弾の交換は終わり。レバーを……さて、ちゃんと撃てますように」

 再び引き金を押すとグレネード弾が次々と放たれていき、砦に着弾。
 白煙があちこちに上がるたびに砦が破壊されていく。
 何回も弾薬箱を交換して10分ちょっとは打ち続けていただろうか、砦は完全に廃墟と化しており、建物のという建物全てが見るも無惨な姿を晒している。

「これでこの砦は使い物にならなくなったな。子供に自爆テロなんかさせるからだ。それさえなければ生き残れていただろうにな」

 廃墟となった砦を見て少し心の溜飲が下がった。

 オートマチック・グレネードランチャー【Mk47】をアイテムボックスに入れて暫くすると、マリンが迎えに来てくれた。

「お、来た来た。さてと、これで一仕事終わりだ。ヒュペリトに向かうとしますか」

 俺は手を振ってマリンを迎えた。

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