異世界と現代兵器 ~いや、素人にはちょっと~

霞草

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第六章

147話

 変異種のゴブリンがいたモンスターハウスを出た俺達は、再び4階に向かって歩き出した。
 そして、4階に繋がる部屋に着くまでに数回モンスターハウスを攻略し、魔石を大量にゲットすることができた。

「ここが、ヨ、4階に繋がる部屋に到着…です」

 ヨラナの案内で迷うことなく洞窟を歩き、4階に繋がる部屋までやって来た。
 洞窟はこの3階までで、4階からは林と湖があるエリアになるらしい。
 視界が開けているので魔物を見つけやすいが、こちらも見つかりやすいらしい。
 しかし、危険察知スキルで遠くの魔物でもわかるため、障害物がなく開けていることは俺にとって何ら問題ない。
 早速4階に!と思っていると、ヨラナの様子が少しおかしい。
 急に落ち着きがなくなり、ソワソワしている。
 ソワソワといっても楽しそうな雰囲気ではなく、落ち着きがなく、心ここにあらずといった感じだ。
 表情も少し強張っているように感じる。

「ヨラナ?大丈夫?体調でも悪くなった?」

 ヨラナはブンブンと首を横に振って否定した。

「も、申し訳ございません。大丈夫です」
「いや、どうみても大丈夫じゃないんだけど?」
「ドルテナの申す通りだ。その様に血の気が引いた顔で言われて、誰が納得できようか」

 顔が少し青ざめているヨラナは、俯きながら訳を話し始めた。

「……はい。実は、私の耳が聞こえにくくなった原因が起こったのが、この先の4階なのです。あの時の恐怖が……どうしても忘れられず……」

 ヨラナは震える体を押さえようと自分の腕で体をギュッと抱きしめるが、震えが治まることはなかった。
 そんなヨラナをエマがそっと抱きしめた。

 この2人はお互いを姉妹のように、親友のように思い合っているのだろうな。

「…………。ありがとう、エマ。エルヴィス様、ドルテナ様、お時間を取らせてしまい申し訳ございません。もう大丈夫です。さぁ、4階に参りましょう」

 目に少し涙を浮かべたままだが、震えも止まり、先程に比べて表情も明るくなっヨラナが4階に繋がる燈籠に触ろうとした瞬間、ドクン!と空気が震えた。

「キャッ!」
「何事だ!」
「ヨラナ、大丈夫か!」
「今のは何?」

 俺よりもこの世界のことに詳しいマリンに視線をやるが、首を横に振りわからないと伝えてきた。

 今の感じ……空気が震えた感じだったな。

 空気の震えと共に聞こえたドクンという音が、心臓の脈打つような感じに思えたしまう。

 前世の宇宙映画でそんなんがあったな。
 宇宙船で逃げ込んだ星の洞窟が、実は強大な宇宙生物の口内だったってやつが。
 このダンジョンその物が何かの生物……ってのはあり得ないな。
 となると、このダンジョン自体に何か起きたと考えるべきか?

「……ドルテナ」
「すみません、私にもわかりません。何かあってもこの部屋は魔物が入れない安全地帯ということですから、ここにいる限り安心してもいいと思います。気になるようでしたら、4階に行って先に進まずに地上に戻れば、明日からは4階からスタートできます」
「そうだな……。ここは慎重に行った方がいいだろう。4階に行ってそのまま地上に戻ることにする」
「はい。私もその方がいいと思います。じゃあヨラナ、行こうか」

 エルヴィスの選択は適切だろう。
 あのドクンという感じはあまり気持ちのいい物ではない気がする。
 4階に行って地上に戻れば次回は4階からスタートできる。

「はい、わかりました。では」

 そう言ってヨラナが燈籠に触ると4階に転移していった。
 それに続いて俺、エマ、エルヴィスの順で燈籠に触り転移した。

 最後に転移してきたエルヴィスが周りの風景を見て聞いてくる。

「ここが4階なのか?話しに聞いていた風景と全く違うのだが……」

 話しに聞いていた4階は、湖と林があるエリアだ。
 俺達が今いるのは洞窟内。
 そして目の前には見たことのある扉があり、その横にはこれまた見たことのある人が座っていた。

「……どうゆう理由かわかりませんが、ここはダンジョンへの入口の部屋ですね」
「間違えてしまったと言うことか?」
「いえ、私達は間違いない?4階に繋がる方を触りました」

 俺達は4階に繋がる蟷螂を触ったはずだ。それは間違いない。
 なのに何故地上に戻った?

 部屋の出口の横にいるのは、ダンジョンに入る際に手続きをしてくれた役人だ。
 ダンジョンから持ち帰った魔物や魔石を買い取るものあの役人だ。
 出口の扉には警備のために兵が立っている。
 その兵の顔に見覚えがあり、俺達がダンジョンに入った際にいた警備兵だ。

 ダンジョンに入るときと異なっている点もある。

 まず、魔物や魔石を買い取るところにダンジョン帰りの兵士がダンジョンから持ち帰った物を買い取ってもらう手続きをしている。
 まぁ、これは通常あり得ることだろう。
 次に、室内には買い取りをしてもらっている兵士以外にも大勢の兵士のグループがいた。
 役人が話を聞いているグループと、俺達のように困惑しているグループがある。
 そうこうしているうちに、他の兵士のグループがまた現れて、自分達が入口に戻ってきたことに驚いていた。
 周りの様子を窺うに、入口に転移したのは俺達だけではないようだ。
 そうしていると、ある役人が室内にいる全員に聞こえるように大きな声で話し始めた。

「入口に戻ってきた方にお知らせします。原因は不明ですが、毎月のダンジョン拡張時と同じ現象が起きております。戻られた皆さんに内部の様子を聞き取り調査しております。我々が話を伺うまではこの室内にてお待ちください。待ち時間の間に買い取りの手続きをしていただいても構いません。ご協力をよろしくお願いします!」

 毎月のダンジョンの拡張と言うのは、月に一度ダンジョンの階層が追加されることを指している。
 この際に、ダンジョンは中にいる人を外に出すらしい。
 その為、転移装置に触ると次の階に進まずに入口に転送されるそうだ。
 これは全ての人がダンジョンから出るまで続くらしい。
 そしてダンジョン内に誰もいなくなると、そこから丸1日掛けて階層が追加されるらしい。
 これが終わって初めて人が入れるようになるそうだ。
 追加されるのは最下層のみ。
 だからダンジョンが再開されても最初からスタートとはならず、行ったことのある階層に転移できるらしい。

 だが、今日はその毎月の拡張日ではないと聞いていたのだが……。
 その拡張時に起こる現象が今起きている、という通常ではない自体に、管理している役人達が事態の把握のため各自に聞き取りをしていると。

 俺達も他の兵士と同じように魔石を買い取ってもらうために列に並ぶ。
 全ての魔石を出すと目立つため、モンスターハウスで得た魔石は出さずに、それ以外で得た魔石を売り払う。
 兵士達も何もせず待っているのは時間の無駄と思ったのか、俺達と同じように買い取りの列に並び、結果的に買い取りを済ませた兵士達から順次話を聞く、という状況が出来上がった。

 買い取ってもらった魔石だが、シネスティア国での取引価格より安かった。
 だが他の兵士からは不満そうな表情は伺えなかったので、ヴォルトゥイア帝国ではこの価格が平均的な物なのだろう。

 これならマホンに持ち帰って売った方が儲かるな。
 ここではあまり渡さずに、怪しまれない程度の量を売り払うことにしよう。

 買い取りを終わった俺達も役人から話を聞かれたが、何分初めてのダンジョンだったから何が違うのかもわからないため、質問は物の数秒で終わってしまった。

 ダンジョンの入口のある部屋から出た俺達は、まず奴隷商に向かう。
 予定では今日から3日間はヨラナとエマを使用できることになっているが、明日はダンジョンに入れない。
 もしかしたら明後日もどうなるかわからない。
 こう言う場合の説明は受けていなかったので、どうするのか確認するためだ。

「お、無事に帰ってきたようだね、お帰り!すまないけど、ちょっと待っててくれ。直ぐに行くから!」

 奴隷商に着くと、兵士達からの返却手続きなどで奴隷商は混雑していた。
 順番が来るまで待っていると、奴隷がテーブルと椅子を持ってきて座るように勧めてきた。
 それに座って待っていると奴隷商がやって来た。

「長く待たせてしまったな。急にダンジョンが閉鎖という事で、てんやわんやだよ。すまなかった」
「いえいえ。それで、早くても明日いっぱいはダンジョンに入れないだろうという話なんですが、ヨラナとエマを3日間借りてますけど、この場合どうなりますか?」
「我々がご提案できる対応は2つ。ダンジョンが閉鎖されていた日数分を日割りで計算して返金する案と、ダンジョン閉鎖中の日数分を延長する案の定の2つ。その他の保証などはない。ただ、ヨラナとエマはポーター以外の用途があるから、そっちで使う場合は通常の利用日数としてカウントすることになる」
「なるほど。例えば、延長の案をお願いした場合、私達が使わない間彼女たちは他の人に貸し出されることがありますか?ポーター以外のために」
「それはない。もし他の人に貸し出して何かあればこちらの信用問題にもなるからね。幸いこの2人に予約は入ってないから延長されても問題ないよ」

 ダンジョン閉鎖中は休日となる訳か。
 彼女達もたまには休みも必要だろう。ダンジョンが再開したら4階以降も付き合ってもらうことになるんだからな。

「エルヴィスさん、明日は彼女達も休ませると言うことでいいです?」
「あぁ、かまわない」

 エルヴィスの同意も得られたので、ダンジョン閉鎖期間分を延長してもらうよう奴隷商にお願いした。

「了解した。今日は2人共もういいのかい?」
「あぁ、ダンジョンは閉鎖されたからな。今日はもう終わりだ」
「わかった。ダンジョン再開は2日後の朝と思うから……明後日の朝から利用再開の予定だな。ダンジョン再開後にもし来なくても、使用日数はカウントされるから注意するようにな。閉鎖中でも何かあればいつでも相談に来てくれ」
「そうさせてもらうよ。じゃあ、ヨラナ、エマ。今日はお疲れさん。帰ってゆっくり休んでね。明日もゆっくりと体を休めて、ダンジョン再開に備えていてくれ」
「うむ。休息は大切だからな。ダンジョン再開後にまた迎えに来る」

 ヨラナとエマは声をそろえて、ありがとうございましたと言って頭を下げた。
 俺達はそのまま奴隷商を後にして、ちょっと早めの晩御飯を食べてから兵舎に帰った。

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