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「三人は今は各地に散らばって働いてもらっているのだけど、恩赦を与えたら彼等にはある屋敷で働いてもらうことに元々なっているの」
「職の斡旋ですか?」
「職もだけど、住む場所もね。公爵や侯爵家で生活していていきなり平民に落とされて、はいさようならと追い出すのも気が引けるじゃない。野垂れ死にされるのは嫌よ。憎いとは思っていないの。だから、」
あら、エミリーとユーグがなんとも言い難い表情浮かべているわね。
彼等もローズさんもやり直そうと思えば出来ると思うの。
「クローブ男爵家に彼等を引き取らせたの。今回の騒動はローズさんが引き起こしたんですもの。お父様のクローブ公にも責任取ってもらわないとね」
「えっ」
「勿論、平民としてだから使用人としてよ。ちゃあんと屋敷に住まわせて仕事を与えてね。だから四人に恩赦を与えたら一つの家に四人が顔を合わせる事になるのよね」
「うわぁ」
エミリー、間抜けな声を出さない。ローズさんみたいですわよ。
男爵令嬢のままのローズさんと、全てを失い平民に落とされた使用人の彼等が騒動後初めて屋敷で顔を合わせる事になりますが、ローズさん三人の現状を詳しく聞いてきませんでしたもの。
気にされていないのに、わざわざ教えてあげるほどの好意もありませんし。
「ローズさん、男爵令嬢のままでしょう。彼等三人は平民に落とされて同じ屋敷に住むことになるけれどあんなに仲睦まじかったんですもの、怨恨がなければきっと仲良くできますわ。これからずっと好きな女性と一緒にいられるなんて素敵ですわね」
「リリア様、それ絶対に上手くいかないと思って仰られてますよね」
「あら、絶対なんて思っていないわ。学園にいた時のように、慰めてさしあげれば上手くいくかもしれないでしょう」
学園にいた際、三人に手を繋いだり、腕を組んだり、口付けを交わしたりしてあげていたんですもの。得意でしょう。
監視以外に、何人もの生徒に目撃されるほど親密にされていましたものね。
「あの女が慰めるとは思えません。財産と容姿しか求めていない女が、自分の不利益になる事をすると思えないです」
「あら、不利益になるんじゃなくて。彼等の怒りを鎮めないとローズさんがクローブ家で暮らしていられない気がしてならないの。他家に嫁がれるにしても、かなり大きな醜聞でしたからローズさんを迎いれてくださる方って限られますでしょ」
普通なら恨むと思いますもの。
恵まれていた分、落差は激しかったはず。身分も家族も幸せも失い蔑まれるのは苦痛だったしょう。
自分達だけ奈落に落ちて、相手はさほどダメージがないのだとしたら、色々な意味でローズさんは脅かされるでしょう。
彼等の訪れるはずの未来を壊した償いをしていただかなくては。
愛憎入り乱れたドロドロの爛れた関係になるのか、殺傷事件が起きるのかローズさんの腕の見せ所ですわね。
主人公なのだからハッピーエンドを目指されるそうですし、攻略もお得意そうですもの。
学園にいた時に皆様が諫めたのはローズさんの為でしたのに。
全て踏みにじったのはご自分ですから仕方ないでしょう。
「まあ、同年代の方はまず選ばないでしょうか。うんと歳上の少女趣味の変態か、治癒魔法があるから教会預かりなら有り得そうです。今のクローブ家に関わりたいと思う者がいたら、かなりの癖者でしょう主に精神が」
「治癒魔法があると卒業パーティーでも言ってましたものね。教会で預かっていただくのもいいわね」
「よろしいのですか?」
「いいのよ。人の役に立てる方がいいじゃない。ただ、ローズさんは清貧な生活に我慢出来るかしら。教会は治療に対し寄付を要求しますけれど、潤っているのは上層部ですし、またローズさんが引っ掻き回してくれるようならあの老害達に責任を押し付けてご退場いただけるかもしれないわね。あの方達どうやら可愛い娘を神ではなく自分達に奉仕させてるらしいのよ。治外法権を盾にするから踏み込めなくて困っていたから助かるわ」
「わぁ、リリア様のそういう所が好きです。レオンハルト殿下にお願いして侍女にしてもらって良かった」
どうやら、学生時代にわたくしに付いていた監視の一人がエミリーだったようで、自分から侍女にと志願してきたのよね。
いったいどこが気に入られたのやら。
「だって、侍女になればリリア様の悪役を演じられてるお姿をいつでも見れるじゃないですか」
エミリーの言葉に肯定の代わりに微笑んでおく。
此処は寒い。
早く王都に戻り、レオンハルト様に会いたい。
慰めていただきたい。
何も変わっていなかった彼女を見て本当は傷ついてるわたくしを。
わたくし達の言葉は何一つ届かず、都合良い事しか受け入れない。
与えられていた。守られていた。それを全て踏みにじったあげく、その事に気が付かない。
それは酷く悲しいこと。
平民落ち、国外追放、毒杯。何も理解させずに逃げさせるだけじゃない。
貴族の枷に嵌めて貴女の被害者と共に閉じこめてあげる。
主人公と言うのなら這い上がってみなさい。
わたくしを悪役と言うのなら演じてみせますわ。
「職の斡旋ですか?」
「職もだけど、住む場所もね。公爵や侯爵家で生活していていきなり平民に落とされて、はいさようならと追い出すのも気が引けるじゃない。野垂れ死にされるのは嫌よ。憎いとは思っていないの。だから、」
あら、エミリーとユーグがなんとも言い難い表情浮かべているわね。
彼等もローズさんもやり直そうと思えば出来ると思うの。
「クローブ男爵家に彼等を引き取らせたの。今回の騒動はローズさんが引き起こしたんですもの。お父様のクローブ公にも責任取ってもらわないとね」
「えっ」
「勿論、平民としてだから使用人としてよ。ちゃあんと屋敷に住まわせて仕事を与えてね。だから四人に恩赦を与えたら一つの家に四人が顔を合わせる事になるのよね」
「うわぁ」
エミリー、間抜けな声を出さない。ローズさんみたいですわよ。
男爵令嬢のままのローズさんと、全てを失い平民に落とされた使用人の彼等が騒動後初めて屋敷で顔を合わせる事になりますが、ローズさん三人の現状を詳しく聞いてきませんでしたもの。
気にされていないのに、わざわざ教えてあげるほどの好意もありませんし。
「ローズさん、男爵令嬢のままでしょう。彼等三人は平民に落とされて同じ屋敷に住むことになるけれどあんなに仲睦まじかったんですもの、怨恨がなければきっと仲良くできますわ。これからずっと好きな女性と一緒にいられるなんて素敵ですわね」
「リリア様、それ絶対に上手くいかないと思って仰られてますよね」
「あら、絶対なんて思っていないわ。学園にいた時のように、慰めてさしあげれば上手くいくかもしれないでしょう」
学園にいた際、三人に手を繋いだり、腕を組んだり、口付けを交わしたりしてあげていたんですもの。得意でしょう。
監視以外に、何人もの生徒に目撃されるほど親密にされていましたものね。
「あの女が慰めるとは思えません。財産と容姿しか求めていない女が、自分の不利益になる事をすると思えないです」
「あら、不利益になるんじゃなくて。彼等の怒りを鎮めないとローズさんがクローブ家で暮らしていられない気がしてならないの。他家に嫁がれるにしても、かなり大きな醜聞でしたからローズさんを迎いれてくださる方って限られますでしょ」
普通なら恨むと思いますもの。
恵まれていた分、落差は激しかったはず。身分も家族も幸せも失い蔑まれるのは苦痛だったしょう。
自分達だけ奈落に落ちて、相手はさほどダメージがないのだとしたら、色々な意味でローズさんは脅かされるでしょう。
彼等の訪れるはずの未来を壊した償いをしていただかなくては。
愛憎入り乱れたドロドロの爛れた関係になるのか、殺傷事件が起きるのかローズさんの腕の見せ所ですわね。
主人公なのだからハッピーエンドを目指されるそうですし、攻略もお得意そうですもの。
学園にいた時に皆様が諫めたのはローズさんの為でしたのに。
全て踏みにじったのはご自分ですから仕方ないでしょう。
「まあ、同年代の方はまず選ばないでしょうか。うんと歳上の少女趣味の変態か、治癒魔法があるから教会預かりなら有り得そうです。今のクローブ家に関わりたいと思う者がいたら、かなりの癖者でしょう主に精神が」
「治癒魔法があると卒業パーティーでも言ってましたものね。教会で預かっていただくのもいいわね」
「よろしいのですか?」
「いいのよ。人の役に立てる方がいいじゃない。ただ、ローズさんは清貧な生活に我慢出来るかしら。教会は治療に対し寄付を要求しますけれど、潤っているのは上層部ですし、またローズさんが引っ掻き回してくれるようならあの老害達に責任を押し付けてご退場いただけるかもしれないわね。あの方達どうやら可愛い娘を神ではなく自分達に奉仕させてるらしいのよ。治外法権を盾にするから踏み込めなくて困っていたから助かるわ」
「わぁ、リリア様のそういう所が好きです。レオンハルト殿下にお願いして侍女にしてもらって良かった」
どうやら、学生時代にわたくしに付いていた監視の一人がエミリーだったようで、自分から侍女にと志願してきたのよね。
いったいどこが気に入られたのやら。
「だって、侍女になればリリア様の悪役を演じられてるお姿をいつでも見れるじゃないですか」
エミリーの言葉に肯定の代わりに微笑んでおく。
此処は寒い。
早く王都に戻り、レオンハルト様に会いたい。
慰めていただきたい。
何も変わっていなかった彼女を見て本当は傷ついてるわたくしを。
わたくし達の言葉は何一つ届かず、都合良い事しか受け入れない。
与えられていた。守られていた。それを全て踏みにじったあげく、その事に気が付かない。
それは酷く悲しいこと。
平民落ち、国外追放、毒杯。何も理解させずに逃げさせるだけじゃない。
貴族の枷に嵌めて貴女の被害者と共に閉じこめてあげる。
主人公と言うのなら這い上がってみなさい。
わたくしを悪役と言うのなら演じてみせますわ。
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