侯爵令嬢は悪役だったようです

Alice

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僕の婚約者【レオンハルト視点】

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 リリア・ヴェルザード侯爵令嬢と初めて顔を合わせたのは、レオンハルト・ルクレリアが九歳の誕生日会の席である。
 
 誕生を祝う席には、歳が近い少女が八人。公爵家と侯爵家の歳の近い令嬢達の緊張や興奮を隠しきれない様子に、席について早々辟易へきえきする。

 彼女達は婚約者候補。つまり未来の妻になるかもしれない者達。



 両親から強く自分の役目を言いつけられているであろう少女達の半数以上は、完璧とは言い難いが年齢にしては充分と思われる礼儀作法でお淑やかさを演じているが、瞳だけは獲物を狙うかの如く周囲に目を走らせ牽制けんせいしながら、自分に対しては溢れんばかりの好意のこもった笑みを浮かべる姿に、只々怖いと思った。

 残りは人見知りなのか、とにかく話を振られないようにと下を向き、出させた茶菓子をゆっくりと食べている者、興味深そうにやりとりを眺めているだけの者である。


 
 可愛らしい顔に野心を抱き、ただし本当の好意も含まれているかもしれないが、少女達の猛追に七歳の少年は場に飲まれて、今は自分の誕生日を呪い始めていた。


 質問責めに、自慢と捉えても間違っていないであろう自分のアピール、有利に進める為に他の少女を貶めるような発言。
 母上や、使用人を含む歳上の女性と話した事はあっても、初めて同年代の女の子と会話をしたのだが本当に口が回る。



 徐々に感情が抜け落ち、そうなんですねと素敵ですしか発しなくなる息子に、誕生日会を主催した母である王妃は十分間お一人ずつ会話をして解散しましょうと提案と言う名の決定事項を突きつけた。

 一人十分、多少の誤差があっても二時間で解放される。

 そう思っていたのだが、最初の令嬢から時間が延長され、二十分経過する頃ようやくそろそろお時間がとやんわりと終了の合図が出される事が続く。


 この中にシルヴェストの婚約者となる公爵家のアメリア嬢達もいたらしいがあまり記憶にない。
 
 
 質問責めの少女、頬を染めながら顔を見つめてうっとり微笑む少女、緊張して泣きそうなのでこちらが気を使う少女、自分のアピールと他者を貶す少女、多種多様な少女の中に、リリア・ヴェルザード嬢がいた。

 


 リリア・ヴェルザードは不思議な少女。それが第一印象である。

 多分、五、六番目位に呼ばれたであろう彼女は、僕の許しを得て自己紹介と酷いカーテシーを披露すると席に着いた。


 場所を変えた中庭の四阿からの景色は母上の自慢であり、ここで僕が休憩をするのが好きなのを知っている母上が疲れきった息子に用意した親心である。

 リリア嬢は座ると僕に、殿下は少し休憩したら如何でしょうと声を掛けると庭を眺め始めた。





「リリア嬢は僕に興味がないのですか?」

 押されるのは嫌だが、引かれるのも悔しいので聞いてみた所、聞きたい事は周りが聞いてくれましたし、殿下はまだ他の令嬢達に付き合わないとならないのですから、口を潤す為のお茶に疲れを取る為の甘い物を摂られたほうが良いかと思いました、と返された。


 確かに、自分の誕生日なのに好物のフルーツタルトを殆ど口に入れる事が出来ず、少女達が入れ替わる時にしか紅茶を含む余裕もない事に気が付く。



 
 


 

 
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