16 / 35
2
しおりを挟む
普段であれば実行に移す事はないのだが、本当に疲れていた僕は、素直に「そうする」と答えて休憩を取る。
旬の色々なフルーツが楽しめる華やかな見た目の甘い菓子、香りの良い紅茶、美しい茶器に手入れのされた季節の花が咲き乱れる中庭を眺め、少しだけ余裕が戻った僕は、同じように庭を眺める少女に少し興味を抱いた。
「僕は疲れているように見えた?」
会話の振り方として最低であるが、他の令嬢にも主役が疲労している、そう思われていたら困る。
「いえ、お顔にも出ていなかったと思います。殿下に初めてお会いするので余程でないと皆様も気が付かないと思います」
「では、何故休憩を勧めた?」
「あの状況で疲れない人っていないと思ったからですね。わたしが殿下の立場だったら泣いているかも。誕生日に異性の子ばかりに囲まれて質問の嵐ですもの。しかも逃げ出せないのだから。選ばれないんだから、わたしの時間はお休みに使って欲しかったんです」
「選ばれないって、そんな事はないだろ」
なんだかムッとした。勝手に選ばれないとか決めるな。
「八人の中の一人にわたしが選ばれるとか思いませんよ。容姿は暗く礼儀も知らず家柄だって順番からしてもわたしの家って下の方だもの。もう少し上ならもっと早く休ませてあげれたんですけどね」
「そんなに自分を貶めるな。そういう女は嫌いだ」
「別に貶めていないんですけどね。自分の容姿、気に入っているんです。ただ他の人からは暗いと思われているみたいなのです。礼儀も教わってないので、とりあえず今日は周りを見て合わせていたのです」
ふふふって、笑いながら話すリリア嬢に何故か目が離せなくなる。どちらかと言えば黒髪に紫の瞳は僕の好みではないのに。
そして、何で笑っているのかと首を傾げると
「殿下のお嫌いな所、初めて聞きました。貴重な情報ですね」
そう言ってまた笑うから更に目が離せなくなった。
「そろそろお時間です」
十分経過したのか執事が呼びに来ると、リリア・ヴェルザード嬢が席を立とうとする。
「もう少し。・・・もう少し僕に休憩をくれ」
もう少し話がしたいと素直になれずに引き留めると、彼女は僕と執事に視線を這わす。
「後、十分経ちましたら呼びに参ります」
執事がそう述べ頭を下げ、空になったカップと皿を下げるとリリア嬢は席に座り直した。
「殿下、わたしに気を遣わないでしっかりお休みしてください」
僕が気にして話しかけたと思ったのか。そんなわけないのにと言ってやりたい。彼女との会話は何故か苦にならない。
「気を遣っていたらこんな口調で話し掛けてない。黙って休憩するのも退屈だから話相手が欲しいだけ」
何で、こんなに素直になれないんだ?別に、もう少し話してみたくなったと素直に言っても僕の身分としても許されるのに。
「わかりました。お付き合いします」
凛と背筋を伸ばした彼女と目が合う。
カラーの花を一瞬思い浮かべ、髪色も瞳も違いすぎるなと苦笑した。
「リリア嬢は僕の事をどう思う?」
思わず口に衝いた言葉に直ぐ後悔をした。
彼女から何とも思ってもいないと言われたら僕の心が傷つくのが目に見える。
「どう思うとは?」
「僕の婚約者候補として呼ばれたのは知っている?」
こくん、と首を縦に振る肯定の意を見せる。
このまま誤魔化そう。
「ヴェルザード公からリリア嬢も色々言われて来ているのだろう。それと、実際の僕を見てどう感じたのか今後の為に聞いておきたい」
「ええと」
リリア嬢の目が初めて泳ぐ。
言いづらそうにしていたが、僕の表情が落ちたのを見て慌てだした。
闇堕ちしそうとかって何?
旬の色々なフルーツが楽しめる華やかな見た目の甘い菓子、香りの良い紅茶、美しい茶器に手入れのされた季節の花が咲き乱れる中庭を眺め、少しだけ余裕が戻った僕は、同じように庭を眺める少女に少し興味を抱いた。
「僕は疲れているように見えた?」
会話の振り方として最低であるが、他の令嬢にも主役が疲労している、そう思われていたら困る。
「いえ、お顔にも出ていなかったと思います。殿下に初めてお会いするので余程でないと皆様も気が付かないと思います」
「では、何故休憩を勧めた?」
「あの状況で疲れない人っていないと思ったからですね。わたしが殿下の立場だったら泣いているかも。誕生日に異性の子ばかりに囲まれて質問の嵐ですもの。しかも逃げ出せないのだから。選ばれないんだから、わたしの時間はお休みに使って欲しかったんです」
「選ばれないって、そんな事はないだろ」
なんだかムッとした。勝手に選ばれないとか決めるな。
「八人の中の一人にわたしが選ばれるとか思いませんよ。容姿は暗く礼儀も知らず家柄だって順番からしてもわたしの家って下の方だもの。もう少し上ならもっと早く休ませてあげれたんですけどね」
「そんなに自分を貶めるな。そういう女は嫌いだ」
「別に貶めていないんですけどね。自分の容姿、気に入っているんです。ただ他の人からは暗いと思われているみたいなのです。礼儀も教わってないので、とりあえず今日は周りを見て合わせていたのです」
ふふふって、笑いながら話すリリア嬢に何故か目が離せなくなる。どちらかと言えば黒髪に紫の瞳は僕の好みではないのに。
そして、何で笑っているのかと首を傾げると
「殿下のお嫌いな所、初めて聞きました。貴重な情報ですね」
そう言ってまた笑うから更に目が離せなくなった。
「そろそろお時間です」
十分経過したのか執事が呼びに来ると、リリア・ヴェルザード嬢が席を立とうとする。
「もう少し。・・・もう少し僕に休憩をくれ」
もう少し話がしたいと素直になれずに引き留めると、彼女は僕と執事に視線を這わす。
「後、十分経ちましたら呼びに参ります」
執事がそう述べ頭を下げ、空になったカップと皿を下げるとリリア嬢は席に座り直した。
「殿下、わたしに気を遣わないでしっかりお休みしてください」
僕が気にして話しかけたと思ったのか。そんなわけないのにと言ってやりたい。彼女との会話は何故か苦にならない。
「気を遣っていたらこんな口調で話し掛けてない。黙って休憩するのも退屈だから話相手が欲しいだけ」
何で、こんなに素直になれないんだ?別に、もう少し話してみたくなったと素直に言っても僕の身分としても許されるのに。
「わかりました。お付き合いします」
凛と背筋を伸ばした彼女と目が合う。
カラーの花を一瞬思い浮かべ、髪色も瞳も違いすぎるなと苦笑した。
「リリア嬢は僕の事をどう思う?」
思わず口に衝いた言葉に直ぐ後悔をした。
彼女から何とも思ってもいないと言われたら僕の心が傷つくのが目に見える。
「どう思うとは?」
「僕の婚約者候補として呼ばれたのは知っている?」
こくん、と首を縦に振る肯定の意を見せる。
このまま誤魔化そう。
「ヴェルザード公からリリア嬢も色々言われて来ているのだろう。それと、実際の僕を見てどう感じたのか今後の為に聞いておきたい」
「ええと」
リリア嬢の目が初めて泳ぐ。
言いづらそうにしていたが、僕の表情が落ちたのを見て慌てだした。
闇堕ちしそうとかって何?
0
あなたにおすすめの小説
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない
As-me.com
恋愛
完結しました。
自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。
そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。
ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。
そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。
周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。
※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。
こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。
ゆっくり亀更新です。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる