侯爵令嬢は悪役だったようです

Alice

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 普段であれば実行に移す事はないのだが、本当に疲れていた僕は、素直に「そうする」と答えて休憩を取る。
 


 旬の色々なフルーツが楽しめる華やかな見た目の甘い菓子、香りの良い紅茶、美しい茶器に手入れのされた季節の花が咲き乱れる中庭を眺め、少しだけ余裕が戻った僕は、同じように庭を眺める少女に少し興味を抱いた。




「僕は疲れているように見えた?」
 会話の振り方として最低であるが、他の令嬢にも主役が疲労している、そう思われていたら困る。


「いえ、お顔にも出ていなかったと思います。殿下に初めてお会いするので余程でないと皆様も気が付かないと思います」


「では、何故休憩を勧めた?」


「あの状況で疲れない人っていないと思ったからですね。わたしが殿下の立場だったら泣いているかも。誕生日に異性の子ばかりに囲まれて質問の嵐ですもの。しかも逃げ出せないのだから。選ばれないんだから、わたしの時間はお休みに使って欲しかったんです」



「選ばれないって、そんな事はないだろ」

 なんだかムッとした。勝手に選ばれないとか決めるな。



「八人の中の一人にわたしが選ばれるとか思いませんよ。容姿は暗く礼儀も知らず家柄だって順番からしてもわたしの家って下の方だもの。もう少し上ならもっと早く休ませてあげれたんですけどね」


「そんなに自分を貶めるな。そういう女は嫌いだ」


「別に貶めていないんですけどね。自分の容姿、気に入っているんです。ただ他の人からは暗いと思われているみたいなのです。礼儀も教わってないので、とりあえず今日は周りを見て合わせていたのです」



 ふふふって、笑いながら話すリリア嬢に何故か目が離せなくなる。どちらかと言えば黒髪に紫の瞳は僕の好みではないのに。
 そして、何で笑っているのかと首を傾げると


「殿下のお嫌いな所、初めて聞きました。貴重な情報ですね」


 そう言ってまた笑うから更に目が離せなくなった。





「そろそろお時間です」

 十分経過したのか執事が呼びに来ると、リリア・ヴェルザード嬢が席を立とうとする。


「もう少し。・・・もう少し僕に休憩をくれ」

 もう少し話がしたいと素直になれずに引き留めると、彼女は僕と執事に視線を這わす。


「後、十分経ちましたら呼びに参ります」
 執事がそう述べ頭を下げ、空になったカップと皿を下げるとリリア嬢は席に座り直した。


「殿下、わたしに気を遣わないでしっかりお休みしてください」

 僕が気にして話しかけたと思ったのか。そんなわけないのにと言ってやりたい。彼女との会話は何故か苦にならない。


「気を遣っていたらこんな口調で話し掛けてない。黙って休憩するのも退屈だから話相手が欲しいだけ」

 何で、こんなに素直になれないんだ?別に、もう少し話してみたくなったと素直に言っても僕の身分としても許されるのに。


「わかりました。お付き合いします」

 凛と背筋を伸ばした彼女と目が合う。
 カラーの花を一瞬思い浮かべ、髪色も瞳も違いすぎるなと苦笑した。
 




「リリア嬢は僕の事をどう思う?」

 思わず口にいた言葉に直ぐ後悔をした。

 彼女から何とも思ってもいないと言われたら僕の心が傷つくのが目に見える。




「どう思うとは?」

「僕の婚約者候補として呼ばれたのは知っている?」


 こくん、と首を縦に振る肯定の意を見せる。
 このまま誤魔化そう。

「ヴェルザード公からリリア嬢も色々言われて来ているのだろう。それと、実際の僕を見てどう感じたのか今後の為に聞いておきたい」

「ええと」

 リリア嬢の目が初めて泳ぐ。
 言いづらそうにしていたが、僕の表情が落ちたのを見て慌てだした。
 闇堕ちしそうとかって何?

 

 
 

 
 

 
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