侯爵令嬢は悪役だったようです

Alice

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「正直にお話しますね。お父様からは金髪碧眼の美少年の王子に気に入られて来い、と言われて来ました。わたしは変わっているから正妃になれとは言わない、側妃狙いで行けと」


「・・・随分あけすけにものを言うお父上だね」

「正直な方なのです。それなのにわたしがお父様譲りと言われると変なお顔をするのです」

「えっと」

「髪色や爪など容姿が似ているだけの事ですが、娘が変り者と噂されているので自分もそう見られていると思い心外に感じられるようです。お父様も充分、変わっているのに自覚がないんです」

「ソウナンダ」
 
「でも、殿下とこうしてお話してみて楽しかったですわ。他の方も虜になるのが何となくわかります」


「え?」

「それでは失礼します」


 執事が呼びに来たタイミングでリリア嬢が席を立つ。


 肝心の聞きたい事が何一つ聞けず、彼女は去って行った。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




「レオンハルト、疲れたでしょう。今日はゆっくり休みなさい。明日、忘れないうちに報告しに来てくれるかしら?」  


「はい、母上。失礼します」

  部屋に戻り、ベットに身体を預けると僕付きの執事とメイドが誕生日会用にあつらえた堅苦しい服と靴を脱がす。

しばし休む。夕食の前に起こせ」

 誕生日という事でこの後の予定は入っていない。
 



「疲れた」
 
 照明を落した寝室のベッドに横たわり、ポツリと呟き瞼を閉じる。



  あの中で選ぶなら彼女がいいな。
 母上は認めてくれるだろうか。

 
 瞼が重く、微睡む頭は思考を放棄しすぐに意識が沈んだ。
 
 
 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




「ヴェルザード侯爵家の娘ね」
 翌日、母上の元に出向き案の定投げかけられた質問に答えると、僅かに落胆の声が響く。

 やはり、僕が選んだリリア嬢は、母上のお気に召さなかったようだ。




「レオンは彼女の何を気に入ったの?貴方、可愛らしい子が好きだと思ったのだけど」


「僕の事を自分に置き換えて考えてくれたことです。それに彼女は僕の嫌な部分を見ても嫌いにならない気がしたんです」


「・・・そう。嫌な部分を見ても嫌いにならない、ね。そう言われたら何も言えないわね。執事から貴女がヴェルザード家の娘を気に入ったとの報告も受けているわ。母としては他の令嬢を推薦しますけれども、これからの教育次第で何とかなるでしょう」



 こうして、何とか無事にリリア・ヴェルザード嬢が僕の婚約者に決定した。



 
 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



   

「条件があります」

 後日、改めてリリアに婚約者として会いにいくと婚約者として受け入れる為の条件を提示された。
 普通であれば受け入れも何も決定事項であるので拒否は出来ないのだが。



「殿下がこれから学ばれる教育をわたしにも受けさせて頂きたいのです。勿論座学ですが、出来る事ならダンスやマナーもですね」
 
「何故?」

「お父様がわたしの教育にお金をかけさせるか不明です。お母様の浪費癖を見ているし、お兄様がわたしに自分より多くの教師が付くと知ればお怒りになられるでしょう。わたし、殿下のお飾りとして生きたくないの」

 驚いた。
 彼女が自分の家の問題を淡々と告げた事に。それに何故こんなに冷静なのかも。




「僕の一存では決めれない。母上に相談してからの回答で良いかい?」

  そう告げると、お願いしますと少しだけ顔が緩む。

 それからリリア嬢に庭園を案内されながら会話を楽しんだ。



 薔薇園は大輪の赤い薔薇ばかりが占め中々の見応えがあったけどリリア嬢いわく、お母様の見栄の詰まった面白味のない庭と酷評していた。



「花は好きではない?」

「いいえ、花を愛でるのは好きです。内緒でここの傷んだ薔薇でサシェを作ってもらっているんです。普段、此処は子供達は来ては行けない場所なのです。今日は殿下がいらっしゃるので許しを得てますけれど。お母様が案内すると言うのを押しとどめるのが大変でした」


 淡々と話すリリアは寂しげにも見え、その横顔が印象に残る。

 
 リリアに会うと不思議な気持ちにさせられる。
 なんとも言い難い気持ちが僕の胸を占める。







 王城に戻り、母上にお目通りを求めるとすんなりと通った。
 多分、今日リリアと会う事はご存知なので、婚約撤回してくれと嘆願するかと思ったのだろうか。

 
  
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