侯爵令嬢は悪役だったようです

Alice

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「ほう」

 母上に、リリア嬢からの条件を述べると、当然その理由まで問われる為、言葉を濁しながらも述答えた。
 近衛兵や従者も近くに控えていたので確認すれば直ぐに分かる。ならば嘘を告げても仕方ない。



「面白いわ。ヴェルザード家の娘は変り者と聞くが確かに」

 変り者、他人から見ればそう思われるのかもしれないが、僕にとってリリアは不思議で目が離せない子である。



「悪い意味ではないのよ。貴方のお気に入りの娘を悪しく言うつもりは無いわ。寧ろ、母も気に入りました。本人が望むのなら、こちらで預かっても良いわ。明日から迎えを寄越させましょう」



 不満が顔に出てしまっていたのか、僕の顔を見て母上はコロコロと笑っている。



 
「宜しいのですか?」

「教師も一人教えるのも、二人教えるのも変わらないでしょう。ダンスもマナーもこちらで指導しましょう。陛下にはわたくしからお話致します。ヴェルザード家にはこちらで通達します」

「ありがとうございます」

「ふふふ、聡い娘は嫌いではないわ。レオン、リリアを繋ぎ留めなさい。あれは敵に回したら恐ろしい娘と思いなさい」


「はい」

 母上の仰る意味はよく理解出来ていないけど、リリアと仲良くしたいと思っているので了承する。





 後日、初めて母上と対面したリリが「王妃様って凄くて恐ろしい」と感想を漏らしていた。
 敵に回したら恐ろしいタイプと言うので、結構似たもの同士なのかと思ったのだが、それを互いに教えると何だか良くないような気がしたので黙っておくことにする。
 二人きりの時は、お互いをレオ、リリと呼ぶ事に決めている。公式では正称で呼ばないとならないが二人の時くらいは許してほしい。






 リリは毎日、王家の馬車で登城し、今の時間は僕と共に座学の授業を受けている。



 母上から教えてもらったが、王家で預かる話はリリが辞退したそうだ。
 何でも、ヴェルザード家で監視の目を光らせないと何を為出しでかすか分からないのが理由である。
 リリの家族に対する評価が驚く程に低い。



 王妃の主催するお茶会で、僕の婚約者として紹介し、母上の後ろ盾があると知らしめヴェルザード家でのリリの地位のヒエラルキー階層を上げてから行動に移させるそうなので、何かあればその時に王家で預かるかもしれないと母上から告げられたが、いったい何を起こすつもりなのか肝心な事を教えてもらえなかった。





  それでリリは今、社会学の教師にルクレリアの地図を見せながら講義する事を要求している。


「北の方だの、西の方だの言われても理解しにくいです。ただ教養を垂れ流すのではなく、子供でも理解出来るよう教えて下さいませ」
 


「お言葉ですが、リリア様」 
 確かに理解しにくい。だけど、地図は写しが難しい為に簡単に手に入る物ではなく、一介の教師が容易に用意出来る物ではない。

 教師と二人がかりで説明すると。




「ならば、自分達で作りましょう」

「「え?」」

「紙でも黒板でも何でもいいので、わたし達で書いて地図を作るのです。精密な形にならなくても大まかな形が視覚に入るだけでも理解度が増します」


「面白い、是非やろう」

「先生?」


 リリの提案に教師が乗って、急遽大きな紙が用意されて地図作りが始まる事となった。



 日数をかけ自作の大きな地図を作り、更に山や川、王都に主な都や町、領主の名前などを足す。
 ついでに特産品など、詰めれる知識を書き加える。
  意外にも楽しくて完成した時は、教師を含む三人で拍手をして喜んだ。


 噂を聞いた宰相が僕達の地図を見に来ると欲しがったが、リリが勉学の時間以外なら貸すので写して下さいと追い返す場面もあった。

 


 リリは勉強熱心で分からない事があれば直ぐ教師に質問する。
  
 教師によるが、一度聞いたら理解できますでしょうと言って退ける教師にも喰い付く。
 そういう教師と口論になるので、リリに何で喧嘩になるのに質問するか尋ねると、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥と返された。

 分からないままにしておけば、将来恥をかくのは自分だと。

 
 それからは僕も分からない事があれば質問出来るようになった。
 ただその教師は暫くすると新しい教師に挿げ替えられていた。




 リリと一緒に学ぶお陰で、復習予習もし易かった。
 お互いに問題を出し合ったり、違っている所を訂正したり、誰かと一緒に学ぶ事が楽しいと知った。
 
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