侯爵令嬢は悪役だったようです

Alice

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  語学の授業は発音は聞いて覚えるしかないが、リリが単語帳なる物を提案しそれに読み上げながら写す事をしているうちに読み書きが出来るようになってきた。
 隣国は共通語なのだが、大陸の一部の大きな国は独自の言語の為必須教科となっている。






 座学とダンスはリリと共に学んだが、それ以外のマナーや剣術などは別れて学ぶ。


 まさか、リリのマナーの授業に教師と共に母上も参加しているとは思わなかった。
 教師と母上の二人から指導されるリリはこの授業の後は流石に疲れていて、お菓子を勧めてもどこで監視されてるか分からないと、中々口に付けなかった。
 後に母上から、リリが綺麗なカーテシーを身につける為に授業中に自ら縄で縛らせ体で覚えさせたと聞いた時はいくら大好きでも引いた。





 母上からは、リリアは根性も担も据わっている。貴方の人を見る目は間違ってませんでした。
 あの時、反対しようとした事を反省していると仰って頂き、自分が褒められているようでとても嬉しかった。





 マナーの授業後、ふらふらになりながらリリが戻ってきた時に、リリに仕えさせている侍女が貴族年鑑を抱えて運んできた。

 母上から頂いた貴族年鑑を預かって欲しいとリリにお願いされたので、僕の部屋へと運ばせる。


「リリ、どうしてこれを?」

「ええと、ミランダ王妃様に以前、貴族年鑑を見せていただいたのですが、あまりの酷さに逆修正しようと思って、本を頂いてきましたの」

「あまりの酷さ?逆修正?」

「レオは貴族年鑑をご覧になられた事はあって?」

「一応、目は通した事はある」
 
「その時拝見したら、爵位や血縁関係の他に肖像画も載せられた優れた一冊でした。でもレオの知るお方で、肖像画とお顔が一致する方はいらっしゃいます?」

「うん?」

「試しにヴェルザード家を見てみたら、正確なのは髪と瞳の色だけですわ。鼻が細く高く、目の位置や顎の形まで変えられていましたの。お兄様なんて顔の肉まで削がれていますもの。わたくしは幼すぎて描かれなかったようで安心致しました。レオはまだ他の貴族の方と顔を合わせる事がありますが、わたくしデビューもしてませんもの。それでも他の貴族の顔を覚えていませんという理由は通じないでしょう。それでレオにお願いがありますの。こんな風に」



 リリがヴェルザード家の肖像画にサラサラとペンで何かを付け足す。
 ヴェルザード夫人の眉が釣り上がり黒子が書き加えられ、リリの兄上には頬と顎に肉が足されている。

「レオにも真実を書きたして欲しいのです」
 



「くっ」
 吹きそうになるのを堪えるのに苦労する。片腹を抑えて耐えた

 リリは本気だから始末に悪い。

 

「念の為の確認だけど母上は」

「勿論、ご承知です。好きに使いなさいと最新版をご用意して下さいました」


「分かった。リリのお願いを叶えないわけにいかない。では、こちらのお願いも聞いてくれる?」

 
「わたくしに出来る事であれば」


「リリからのハグとキスでいい」



「それは、他のお願いでは駄目?」


 リリは、こういう触れ合いに未だに慣れなくて、直ぐに顔を赤らめる。
 キスをされると思うと瞳をぎゅっと閉じるのが可愛い。
 不慣れでいつまで経っても初々しいリリが愛おしい。



「駄目。ほら、リリおいで」

「うう、」

 恐る恐る近づき、両手を広げるとゆっくり手を回す。
 視線をリリと合わせ、ぐっと顔を寄せるとじわじわと赤く染まっていく。
 
「リリ、早くしないともっと恥ずかしくなるよ」

 ぎゅっと目を瞑り頬に口を寄せてきたので、顔をずらして唇に触れるようにする。

 

 思っていた感触と違い驚いたリリが離れようと動く気配を察し強く抱きしめ唇を押し付けキスを続けた。




  後で真っ赤になったリリから叱られるだろうけど、彼女の照れ隠しと知っている。
 何時も君に振り回されるのだから、偶にはこちらが振り回しても良いと思わないか?

 




 

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