32 / 35
7
しおりを挟む「災難だったね」
数日経過した何時ものレオンハルト様との昼食会。
何を指しているか確認しなくても分かること。
「レオがお疲れになるのが理解出来ましたわ。随分強欲な方ですのね」
「リリをあれだけ侮辱して、しかも悪者に仕立てあげようとするとは質が悪い。報告書に目を通したけど、内容に気分が悪くなった」
思い出して、気分が悪くなったのか口直しの果実水を含まれます。柑橘の仄かな酸味で、気分を入れ替えられてさっぱりされたご様子。
「レオが色々とご用意してくれていたから悪者にされずに助かりました。まさか全員、手の内と思いませんでしたわ」
あの日、ローズさんとお会いした会談はレオンハルト様がご準備したものです。
わたくしがローズさんと話をするならと、場所、待ち合わせ時間、座る席までレオンハルト様に指定されております。
わたくしに危害が加えられた時に対応できるよう護衛をカフェテリアに配置すると説明を受けてましたが、カフェテリアにいた全員が手の内だとは紅茶の件がなければ気が付きませんでしたわ。
ですが、ちょっとオーバーキル過ぎません?
わたくしに万が一何かあった時に、一体分の挽肉が出来ていた気がするんですが・・・
「リリに何かあれば後悔だけじゃ済まない。リリは自己評価が低いけど周りはそう見ていないんだ。リリの知識は何者にも変えがたい。例え生前の知識であろうと」
レオンハルト様には、わたくしが生前の記憶を覚えている事を打ち明けています。
子供らしくない態度を不思議と思われていたようで、隠し事をしたくはないので彼にだけ打ち明けると納得されて逆に安心したと心の内を話されました。
出会った頃、家族仲が上手くいっていなかったので、環境から冷めていたのかと思っていたようで、元々精神年齢が高かったのを知って安心されたご様子。
今は家族仲は良好です。駄目元で壊して正解でしたわ。ただ、お母様とお兄様の懐きようと、お父様のわたくしの見る目が家族を逸脱している気がしてなりませんけれど。盲信的といいますでしょうか。
ただ、レオンハルト様にしか告白していなかった秘密を、翌日ミランダ王妃様がご存知でしたのであの方はどこまで情報収集されておられるのかと戦慄致しましたのは懐かしい思い出です。
レオンハルト様は秘密を言い触らす方ではないですもの。
レオンがリリアを選んで本当に良かったわ。貴女の知識はルクレリアには必要よ。末永くよろしくね。と、仰られた時にああ、この方からは逃げられないのだと悟りました。
「でも、あの人数はやりすぎでは?」
「全然。あれ位じゃないと安心できない。諜報、飛び道具、捕縛、暗殺、魔法結界、防御、解毒に精通している者。盾になる者。あらゆる場面を想定して配置する必要がある」
「それ、わたくし完全に殺害される場面ですわよね」
「あらゆる場面だよ、リリ」
「・・・まあ、いいですわ。わたくしもレオに危険が及ぶかもしれないと思えば同じ事を致しますもの。でも、ローズさんは裏の人間ではないと思います」
「リリからの報告書にも目を通したし、他の者の報告も踏まえるとそう結論着けるしかないな。お粗末過ぎる。情報も買おうと思えば買える。アーシェスを落とす前に情報を手に入れていたのかもしれない。目的としては」
「愛妾狙いではなくて?今から婚約者を探すよりは、高位貴族の妾に収まる方が良いと判断したのではないかと思いますの」
高位貴族を狙って、婚約者に敵対態度を取り陥れようとされていますもの。
「妥当だな。ただあの性格で妾は向かないだろう。好戦的で正妻を蹴落とそうとするのを隠す気もない。取り敢えず切り離すか」
「いえ、駄目です。レオにもローズさんの虜になっていただきますわ」
0
あなたにおすすめの小説
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない
As-me.com
恋愛
完結しました。
自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。
そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。
ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。
そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。
周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。
※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。
こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。
ゆっくり亀更新です。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる