侯爵令嬢は悪役だったようです

Alice

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「災難だったね」

 数日経過した何時ものレオンハルト様との昼食会。
 
 
 何を指しているか確認しなくても分かること。

「レオがお疲れになるのが理解出来ましたわ。随分強欲な方ですのね」

「リリをあれだけ侮辱して、しかも悪者に仕立てあげようとするとは質が悪い。報告書に目を通したけど、内容に気分が悪くなった」

 思い出して、気分が悪くなったのか口直しの果実水を含まれます。柑橘の仄かな酸味で、気分を入れ替えられてさっぱりされたご様子。



「レオが色々とご用意してくれていたから悪者にされずに助かりました。まさか全員、手の内と思いませんでしたわ」


 あの日、ローズさんとお会いした会談はレオンハルト様がご準備したものです。
 わたくしがローズさんと話をするならと、場所、待ち合わせ時間、座る席までレオンハルト様に指定されております。

 わたくしに危害が加えられた時に対応できるよう護衛をカフェテリアに配置すると説明を受けてましたが、カフェテリアにいた全員が手の内だとは紅茶の件がなければ気が付きませんでしたわ。


 ですが、ちょっとオーバーキル過ぎません?
 わたくしに万が一何かあった時に、一体分の挽肉が出来ていた気がするんですが・・・
  


「リリに何かあれば後悔だけじゃ済まない。リリは自己評価が低いけど周りはそう見ていないんだ。リリの知識は何者にも変えがたい。例え生前の知識であろうと」

 レオンハルト様には、わたくしが生前の記憶を覚えている事を打ち明けています。

 子供らしくない態度を不思議と思われていたようで、隠し事をしたくはないので彼にだけ打ち明けると納得されて逆に安心したと心の内を話されました。
 出会った頃、家族仲が上手くいっていなかったので、環境から冷めていたのかと思っていたようで、元々精神年齢が高かったのを知って安心されたご様子。

 今は家族仲は良好です。駄目元で壊して正解でしたわ。ただ、お母様とお兄様の懐きようと、お父様のわたくしの見る目が家族を逸脱している気がしてなりませんけれど。盲信的といいますでしょうか。


 
 ただ、レオンハルト様にしか告白していなかった秘密を、翌日ミランダ王妃様がご存知でしたのであの方はどこまで情報収集されておられるのかと戦慄致しましたのは懐かしい思い出です。
 レオンハルト様は秘密を言い触らす方ではないですもの。

 レオンがリリアを選んで本当に良かったわ。貴女の知識はルクレリアには必要よ。末永くよろしくね。と、仰られた時にああ、この方からは逃げられないのだと悟りました。
 





「でも、あの人数はやりすぎでは?」

「全然。あれ位じゃないと安心できない。諜報、飛び道具、捕縛、暗殺、魔法結界、防御、解毒に精通している者。盾になる者。あらゆる場面を想定して配置する必要がある」

「それ、わたくし完全に殺害される場面ですわよね」

「あらゆる場面だよ、リリ」
 

「・・・まあ、いいですわ。わたくしもレオに危険が及ぶかもしれないと思えば同じ事を致しますもの。でも、ローズさんは裏の人間ではないと思います」

「リリからの報告書にも目を通したし、他の者の報告も踏まえるとそう結論着けるしかないな。お粗末過ぎる。情報も買おうと思えば買える。アーシェスを落とす前に情報を手に入れていたのかもしれない。目的としては」

「愛妾狙いではなくて?今から婚約者を探すよりは、高位貴族の妾に収まる方が良いと判断したのではないかと思いますの」



 高位貴族を狙って、婚約者に敵対態度を取り陥れようとされていますもの。


「妥当だな。ただあの性格で妾は向かないだろう。好戦的で正妻を蹴落とそうとするのを隠す気もない。取り敢えず切り離すか」

「いえ、駄目です。レオにもローズさんの虜になっていただきますわ」

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