侯爵令嬢は悪役だったようです

Alice

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「良かったぁ。シルヴェストとガドウィンだからまだ許してるんだからね。父親と何を話していたの?」

 ぎゅっと抱き締められて、体が硬直する。怖い。先程まで掴まれていた腕が押されて痛い。優しい口調なのに、目が怖い。精神的にこいつが一番イかれてる。
 あたしの行動を探ってる。
 



「何でもないよ。欲しいものがあっただけ」

 何とか口角をあげて、ぎこちない笑みで返す。
 バレたらこいつは何するかわかんない。
 



「修道院か教会で匿えないかと頼んできたと旦那様から聞いた。それが欲しいものだ」

 
 その言葉を理解した途端、怒りで体温が昇るのが分かる。手が震えた。
 父親のくせにシルヴェストに告げ口したの?あの糞男。親のくせに娘を売りやがった。



「あぁ?この売女が!」

 部屋に持ちこんだ料理を好き勝手に食べていたガドウィンが激昂して立ち上がる。

 基本的に食べるか暴力に出るか、酒を飲んで寝ているかのこいつは強制労働で筋肉が増したから腕力が強い。
 殴られて歯が折れたり、別の日には骨が折れたこともある。痛いのもいや。治療魔法なんて使えなければ良かった。治せるからこそ遠慮がない。
 治そうとしないと、更に暴力を奮う。玩具が壊れたままなのが気に入らないらしい。

 気に入らないとすぐ手を上げてくる。手が上にあがっただけで体が震えて強ばる。

 アーシェスに抱きつかれたままのあたしは、動けないまま張り手を喰らってアーシェスを巻き込みながら倒れた。


 鼻血と口の中が切れた。鉄のような独特の香りが占める。頬がじんじんして熱くて痛い。

「ふぐぅ、ううっ」
 涙も出てぐちゃぐちゃなのに。
 それを見て笑っていた。



「ローズっ。ガドウィン、ローズの顔に怪我させないでよ」

 一緒に転がったアーシェスが床に寝転ぶあたしに近寄り、顔を舐める。涙と血を懸命に舌で拭う。
 荒い鼻息と動く舌が気持ち悪くて涙が止まらない。


「アーシェス、こいつ俺たちを置いて逃げようとかしてんだぜ。仕置は必要だろ」

「え?僕を置いて逃げる?ローズが?えっ?えっ?・・・はあ?何で、僕を捨てるの?こんなに、こんなに尽くしてるのに?」

「ちが」

 違くないわよ。あんたらと一秒だって居たくない。離れる事が出来るなら何だってやってやる。


「お前だけ幸せにさせてたまるか」
 幸せ?何処が?軟禁させらて好き放題にやられてるあたしが?

「ああ、同じ地獄に落としてやる」
 知るか。勝手に落ちたのはお前だろ。

「僕はローズがいればいい。外に出るのは反対。他の男に取られたら嫌だ。ローズしか僕に残っていないのに。それくらいなら閉じ込める」

「いい案だな」

「本当?シルヴェストと意見が合うのは珍しいよね」

 案を褒められたのが嬉しかったのか照れてはにかむ。
 こいつ本当に狂ってる。

「具体的にどーすんだ?足の健切ったとこで、それくらいならこの女は治せるぞ」

「鎖でも何でもいいだろ。繋げばいい」

「何でもいいなら俺の杭はどうだ?」

「下品だな」

「ローズの耳が腐るから止めてくれない?それに今日は僕の番だ」


「今日は犬の番か。舐めてご奉仕してろ」


「僕はローズに優しくして気持ち良くしてあげてるだけだ。殴って言うこと利かす奴と違う」


「手っ取り早いだろーが。強い男の方が女はいいんだろ、マリアンヌだって・・・」


「過去は戻せん。あの時に戻れたらこの女を殺してやるが」


「ちげーねぇ」



「ローズ様?お前があの時私達に寄生した時のように、今度はわたしたちが寄生してやる。クローブ家から一生出れないと思え。ただし空いてる時は仕事はしてやる。没落されたらお前に寄生出来なくなるからな。今日はアーシェスが可愛がってくれるんだろ。早く傷を治せ。こいつはずっとお前の顔を舐め続けるぞ」


「ローズをあんまり虐めないでよ。これからも僕達とずっと一緒ってローズが学園で言ってたから我慢しているのに。部屋から出れないようにするのにローズの足を切っていい?足首から下だからドレスも着れるよ。ガドウィンが下手に切ってローズが痛い思いするの嫌だから、僕が魔法で一瞬でやってあげる。ローズは血も止まるようにお手伝いしてね」



「嫌ぁ。お願い許して」


 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
 なりふり構わず土下座して謝る。
 這いつくばって許されるなら幾らでもするから。



 

 何でこうなったの?
 あたしはヒロインよ。
 ただ笑っているだけで幸せになれる存在なのに。
 悩みを聞いて、手を繋いで、デートして、抱き締めて、キスをして。
 普通の恋人同士がする事をこいつらにしただけなのに、何でこんなにあうの?

 
 どうしたら良かったの?
 誰も教えてくれなかった。
 女は駄目としか言わない、男は体目的で近寄ってくる奴か、遠巻きで見てるだけ。


 あたしの為ってあの女は言ってたけど、信用出来ない。
 だって王子を落とす女だもん。腹黒いに決まってる。


 今出来るとすれば、アーシェスを味方に付ける事くらい。あいつを何とか説得して、シルヴェストとガドウィンを魔法でころして



「ぎゃあああああああああああぁぁぁ」




 いたい
 

 なに?

 みると


 
あたしの、あたしのあし

 あしがなかった




 いたいあついいたいあついいたいあついたすけてたすけていたいあついいたいいたいいたいたすけて




 だまってみてないで

       
 
           だれかたすけて




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