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【spin-off】bittersweet first love
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それから2人で二度寝してしまい、本格的に目覚めたのはお昼過ぎ。長時間寝ない事が当たり前な日常の中でかなりレアな出来事だ。
...あー、寝たな。
そのわりには気持ちが充実して身体が軽い。すっきりした頭で上半身を起こすと隣で寝ていた高澤も少し覚醒しつつあったが、まだ寝ぼけているようにも見えた。
...まだ寝てる。(笑)
いつもしっかりしているように見えて、家族にしか見せないであろう素の高澤の意外な一面を垣間見た。こんな彼女はもしかしたら家族以外は俺だけしか知らないかもしれないと思うと、自然と口元が緩む。そして、上機嫌のまま、もう少しだけ寝かせてやるかと忍び足でベッドからおり、昨夜脱ぎ散らかした自分の衣類を洗濯カゴへ放り込み、シャツとジーンズに着替える。ついでに顔を洗って戻ってくると、高澤はすでに起きており、俺に背を向けた形でワンピースのファスナーを上げているところだった。だが、なかなか後ろ手がファスナーに届かないらしく苦戦している。悪戯心が芽生えた俺は背後から近づき彼女の指先より的確にファスナーをつまみあげる。
「きゃっ?やだ、なに??」
背後の気配に全く気がつかなかった高澤は、なんとも可愛らしい悲鳴を小さく上げ、こちらを振り返ろうとした。俺はそれを制止するかのように後ろから抱きしめる。
衣服の上からでも感じる彼女の柔らかさ。その白い首筋には昨夜の事が決して夢ではないという印が赤く存在しているのを知っていた俺は、その場所にもう一度軽く口づける。
「ん...、なに...?」
こんなありふれた言葉も、今はくすぐったいような甘い空気を纏う。これは2人の関係性が明らかに変化した証拠で彼女も俺と同じ感情で接してくれている事が嬉しかった。
「...身体、辛くないか?」
女性の初めては多少なりとも苦痛が伴うらしい。その原因が自分だと思うと先ほどまでの浮かれ気分が瞬く間に、彼女の心配へとスライドする。それを肌で感じ取った彼女は回された腕をゆっくりとほどき、振り返りながら。
「....大丈夫だから。それより...」
藤澤と一緒にいられたのが嬉しいと、はにかむような笑顔で返された。その愛らしい唇に吸い寄せられるように、自分の唇を重ねてしまう。本当だったらもう少し一緒にいたいと言いたかったのだが、明日は月曜日。彼女の学校はカリキュラムがびっしりと詰まっているらしいと、世間話程度に聞いて覚えていた俺は引き止める事ができなかった。ただ、腰に手を回し、軽い口づけを数回繰り返してゆく。だが、昨日まで友人であった俺が、こんなに下手な恋人のような真似をする事に高澤は少し戸惑いを見せた。
「ちょっ...藤澤、やめっ...」
小さく口元に笑みを浮かべていたので本気で嫌がっているわけではないと思われたが、嫌われたら困ると唇は離したものの、腰に回した腕は外せない。自分でもまさかこんな説明のつかない感情があるなんてと、彼女と離れがたい気持ちを持て余してしまう。
普段と違う自分に己ですら不思議なのだから、当然、高澤も?と、彼女の言動の1つ1つが気になっている。また、彼女と会えなくなるのではないかという不安が頭をもたげたていたからだ。それだけ今の俺たちの関係は危ういもの。男女として培ってきたものが1つもない。
「...こんな俺は嫌か?」
顔が緊張で強ばり、自信がないから自然と口に出る。その言葉で、高澤は大きな黒い瞳を細めた。
「ううん、全然。ただ、いつもと違う藤澤に驚いただけ」
「...そうか?」
心なしホッとした俺に高澤も安心しただろう。口が滑らかになり...。
「そうだよ。いつも喜怒哀楽をあまり出さない藤澤が豹変するんだもん。実は藤澤って付き合うとこんなに感情豊かになるんだ?もしかして、奈々ちゃんにも...」
倉科の名前が唐突に出て、今までの緩やかな雰囲気がピシッと崩れる。昨日再会した時から彼女の名前は2人の間で暗黙の了解のうちに禁句になっていたからだ。その禁を破った高澤はとてもすまなそうにしていた。
「...ごめん、こんな時に」
「いや、いいよ。元はと言えば俺が悪い。倉科の事は俺の責任だから、ちゃんとする。だから、高澤には待っていてほしい」
「うん...」
自分でも都合の良い事だという事は分かっていたが、今は彼女を繋ぎ止めることしか考えられなかった。
俺は少し気まずい雰囲気ながらも、帰ろうとする彼女から強引に連絡先を交換し、玄関ドアを開け、空を見上げる。先程まで晴天だったはずの空は、曇天となっており、今にも雨が降りそうだ。
「また、雨が降られると困るからこの傘貸して」
高澤は昨夜コンビニで買ったビニール傘に目をつけ、それを手に取る。俺はついでだからと最寄り駅まで彼女を送る事に。
「...藤澤が帰る時に雨降らないといいね」
「大丈夫だろ、うち近いし...」
さりげなく高澤の手に触れようとして、躊躇う。昨夜は道すがらずっと手を繋いでいたが、こんな関係になってしまった今、指一本、触れる事が許されない気がしていた。
...あー、寝たな。
そのわりには気持ちが充実して身体が軽い。すっきりした頭で上半身を起こすと隣で寝ていた高澤も少し覚醒しつつあったが、まだ寝ぼけているようにも見えた。
...まだ寝てる。(笑)
いつもしっかりしているように見えて、家族にしか見せないであろう素の高澤の意外な一面を垣間見た。こんな彼女はもしかしたら家族以外は俺だけしか知らないかもしれないと思うと、自然と口元が緩む。そして、上機嫌のまま、もう少しだけ寝かせてやるかと忍び足でベッドからおり、昨夜脱ぎ散らかした自分の衣類を洗濯カゴへ放り込み、シャツとジーンズに着替える。ついでに顔を洗って戻ってくると、高澤はすでに起きており、俺に背を向けた形でワンピースのファスナーを上げているところだった。だが、なかなか後ろ手がファスナーに届かないらしく苦戦している。悪戯心が芽生えた俺は背後から近づき彼女の指先より的確にファスナーをつまみあげる。
「きゃっ?やだ、なに??」
背後の気配に全く気がつかなかった高澤は、なんとも可愛らしい悲鳴を小さく上げ、こちらを振り返ろうとした。俺はそれを制止するかのように後ろから抱きしめる。
衣服の上からでも感じる彼女の柔らかさ。その白い首筋には昨夜の事が決して夢ではないという印が赤く存在しているのを知っていた俺は、その場所にもう一度軽く口づける。
「ん...、なに...?」
こんなありふれた言葉も、今はくすぐったいような甘い空気を纏う。これは2人の関係性が明らかに変化した証拠で彼女も俺と同じ感情で接してくれている事が嬉しかった。
「...身体、辛くないか?」
女性の初めては多少なりとも苦痛が伴うらしい。その原因が自分だと思うと先ほどまでの浮かれ気分が瞬く間に、彼女の心配へとスライドする。それを肌で感じ取った彼女は回された腕をゆっくりとほどき、振り返りながら。
「....大丈夫だから。それより...」
藤澤と一緒にいられたのが嬉しいと、はにかむような笑顔で返された。その愛らしい唇に吸い寄せられるように、自分の唇を重ねてしまう。本当だったらもう少し一緒にいたいと言いたかったのだが、明日は月曜日。彼女の学校はカリキュラムがびっしりと詰まっているらしいと、世間話程度に聞いて覚えていた俺は引き止める事ができなかった。ただ、腰に手を回し、軽い口づけを数回繰り返してゆく。だが、昨日まで友人であった俺が、こんなに下手な恋人のような真似をする事に高澤は少し戸惑いを見せた。
「ちょっ...藤澤、やめっ...」
小さく口元に笑みを浮かべていたので本気で嫌がっているわけではないと思われたが、嫌われたら困ると唇は離したものの、腰に回した腕は外せない。自分でもまさかこんな説明のつかない感情があるなんてと、彼女と離れがたい気持ちを持て余してしまう。
普段と違う自分に己ですら不思議なのだから、当然、高澤も?と、彼女の言動の1つ1つが気になっている。また、彼女と会えなくなるのではないかという不安が頭をもたげたていたからだ。それだけ今の俺たちの関係は危ういもの。男女として培ってきたものが1つもない。
「...こんな俺は嫌か?」
顔が緊張で強ばり、自信がないから自然と口に出る。その言葉で、高澤は大きな黒い瞳を細めた。
「ううん、全然。ただ、いつもと違う藤澤に驚いただけ」
「...そうか?」
心なしホッとした俺に高澤も安心しただろう。口が滑らかになり...。
「そうだよ。いつも喜怒哀楽をあまり出さない藤澤が豹変するんだもん。実は藤澤って付き合うとこんなに感情豊かになるんだ?もしかして、奈々ちゃんにも...」
倉科の名前が唐突に出て、今までの緩やかな雰囲気がピシッと崩れる。昨日再会した時から彼女の名前は2人の間で暗黙の了解のうちに禁句になっていたからだ。その禁を破った高澤はとてもすまなそうにしていた。
「...ごめん、こんな時に」
「いや、いいよ。元はと言えば俺が悪い。倉科の事は俺の責任だから、ちゃんとする。だから、高澤には待っていてほしい」
「うん...」
自分でも都合の良い事だという事は分かっていたが、今は彼女を繋ぎ止めることしか考えられなかった。
俺は少し気まずい雰囲気ながらも、帰ろうとする彼女から強引に連絡先を交換し、玄関ドアを開け、空を見上げる。先程まで晴天だったはずの空は、曇天となっており、今にも雨が降りそうだ。
「また、雨が降られると困るからこの傘貸して」
高澤は昨夜コンビニで買ったビニール傘に目をつけ、それを手に取る。俺はついでだからと最寄り駅まで彼女を送る事に。
「...藤澤が帰る時に雨降らないといいね」
「大丈夫だろ、うち近いし...」
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