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9.名前②
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憧れの藤澤さんを交えての飲み会を前に、ソワソワと気持ちが落ち着かない日々が続く。
...まさか、こんな風にお近づきになる機会ができるなんて。
いや、これは仕事を円滑にしようとする田山さんの上司としての配慮だから!
仕事だから、勘違いしちゃダメ!
まだ、彼と会ったわけでもないのに余計な気をまわして葛藤してしまう。
前日なんかは遠足前の子供みたいに興奮してなかなか寝付けなかった。
そして、あっという間に金曜日の待ち合わせの時間がやってくる。
当日、山崎さんが案内と称して、お店の最寄り駅まで私たちを迎えに来てくれた。
彼は美波ちゃんを見るなり。
「長谷川さん、いつも可愛いけど今日は特に可愛い!」
「うふふ、ありがとうございますぅ。山崎さんだって素敵ですよ♡」
べた褒めされた彼女も臆することなくそれには応じて、山崎さんが彼女に夢中な様子が見て取れた。
スゴ...。な、なんかのプロ?見本?
私からみれば、付き合っているのでは?と思えるほどの親密さだったけれど、こう見えても彼女は田山さん狙い。
今日のチャンスを何としてもモノにすると張り切っていた。
そう豪語するだけあり、普段から可愛いけれど今日は特に可愛いさ全開で、いつもの三割増し?いや5割増しくらいに輝いて見える。なんか、キラキラしてる。
私はというと自分なりにおしゃれをしてきたつもりだったけれど、彼女から見ると、どんなによくみても地味な引き立て役にしか思えない。
...今日は近くで見れるだけで、いいんだから。
もう、その他大勢の群衆でいいやと誓ってお店の中に入った。
お店は私の知っているような居酒屋さんを数段オシャレにしたような感じで、おのぼりさんのごとく、1番後ろから入店し、キョロキョロ辺りを見回す。
そうして奥へと進むと、私たちの先頭を行く山崎さんが個室の扉を開ける。
中からは、彼を冷やかす声が聞こえた。
「遅くなって、すみませーん」
「本当におせーよ。先輩を待たせるなんて100年早い!」
「山崎、女の子がいるからってへらへらしすぎー」
田山さんの声に混じって聞き覚えのある声に、私の心臓はトクンと脈打つ。
...よかった。来てる。
田山さんから、あいつは多忙だからドタキャンがあるかもしれないと事前に聞いていたので、ホッとそこで胸をなでおろす。
それから全員が部屋の掘りごたつに座り飲み物だけを注文した後、突然、田山さんがパンパンと二回ほど手を叩いた。
「はい。では、乾杯の前に」
彼の拍手の音の響きに皆がつられて注目すると、田山さんはある事を提案をする。
「まずは社会人としてのマナーの名刺交換しようか?女性陣は藤澤と初めて会うワケだし。会社帰りだから、もちろん持っているよね?特に営業職は」
その言葉に皆がうんうんと頷いて私も同じように頷いていたものの、実のところ、心の中では違う事を訴えていた。
それは、群衆には難易度が高すぎやしませんか!?
今日の私は美波ちゃんの付き人なんです!いや、背景なんです!
もちろん、そんな私の心の叫びは田山さんには聞こえません。
...まさか、こんな風にお近づきになる機会ができるなんて。
いや、これは仕事を円滑にしようとする田山さんの上司としての配慮だから!
仕事だから、勘違いしちゃダメ!
まだ、彼と会ったわけでもないのに余計な気をまわして葛藤してしまう。
前日なんかは遠足前の子供みたいに興奮してなかなか寝付けなかった。
そして、あっという間に金曜日の待ち合わせの時間がやってくる。
当日、山崎さんが案内と称して、お店の最寄り駅まで私たちを迎えに来てくれた。
彼は美波ちゃんを見るなり。
「長谷川さん、いつも可愛いけど今日は特に可愛い!」
「うふふ、ありがとうございますぅ。山崎さんだって素敵ですよ♡」
べた褒めされた彼女も臆することなくそれには応じて、山崎さんが彼女に夢中な様子が見て取れた。
スゴ...。な、なんかのプロ?見本?
私からみれば、付き合っているのでは?と思えるほどの親密さだったけれど、こう見えても彼女は田山さん狙い。
今日のチャンスを何としてもモノにすると張り切っていた。
そう豪語するだけあり、普段から可愛いけれど今日は特に可愛いさ全開で、いつもの三割増し?いや5割増しくらいに輝いて見える。なんか、キラキラしてる。
私はというと自分なりにおしゃれをしてきたつもりだったけれど、彼女から見ると、どんなによくみても地味な引き立て役にしか思えない。
...今日は近くで見れるだけで、いいんだから。
もう、その他大勢の群衆でいいやと誓ってお店の中に入った。
お店は私の知っているような居酒屋さんを数段オシャレにしたような感じで、おのぼりさんのごとく、1番後ろから入店し、キョロキョロ辺りを見回す。
そうして奥へと進むと、私たちの先頭を行く山崎さんが個室の扉を開ける。
中からは、彼を冷やかす声が聞こえた。
「遅くなって、すみませーん」
「本当におせーよ。先輩を待たせるなんて100年早い!」
「山崎、女の子がいるからってへらへらしすぎー」
田山さんの声に混じって聞き覚えのある声に、私の心臓はトクンと脈打つ。
...よかった。来てる。
田山さんから、あいつは多忙だからドタキャンがあるかもしれないと事前に聞いていたので、ホッとそこで胸をなでおろす。
それから全員が部屋の掘りごたつに座り飲み物だけを注文した後、突然、田山さんがパンパンと二回ほど手を叩いた。
「はい。では、乾杯の前に」
彼の拍手の音の響きに皆がつられて注目すると、田山さんはある事を提案をする。
「まずは社会人としてのマナーの名刺交換しようか?女性陣は藤澤と初めて会うワケだし。会社帰りだから、もちろん持っているよね?特に営業職は」
その言葉に皆がうんうんと頷いて私も同じように頷いていたものの、実のところ、心の中では違う事を訴えていた。
それは、群衆には難易度が高すぎやしませんか!?
今日の私は美波ちゃんの付き人なんです!いや、背景なんです!
もちろん、そんな私の心の叫びは田山さんには聞こえません。
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