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18.私に似ている。①
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結局、この作業を藤澤さんと一緒にしたのはこれっきり。
本来なら松浦とする作業なので、あの時は彼の上司としての責任、あるいは単なる気まぐれな親切からなるものだと理解している。
だから、私はいつも通り、遠くで彼の事を見つめるだけで幸せな群衆に戻ろうとしていた。
その矢先。なんと、研究所の方の書類の不備とやらを私が見つけてしまい、雲の上の人間に指摘するという大それた行動をとってしまう。
そのおかげで雲の上の人間にどうやら三浦優里の私は関心を持たれたみたいだった。
「こんにちは。今日は研究所におつかいですか?」
いつの間にか隣に並んだ長身の男性が私にヒョコッと顔を向けて声をかけてきた。
私の身体はその耳障りのいい低音に、ビクッと勝手に反応してしまう。
恐る恐るその素敵な声の持ち主を確認すると予想通り雲の上の人間。
私の心臓は、いきなり声をかけられた驚きとその相手が彼であるダブルの驚きで、確実におかしなリズムを打っていた。
「あ...こんにちは。はい、今から...そちらに...行こうと...」
「なら、重い荷物の方を持ちますよ」
自然の動きで、以前みたいに持っている紙袋を両方とも彼が持とうとしてくれる。それには、流石に。
「でも...」
「いいんですよ。俺が三浦さんと話したかったからそのついでです」
...彼が私と?
そう言ってくれた言葉が気になり、ここは素直に渡した。
2人で荷物を分けて持ち、この通路を初めて彼と並んで歩くと気持ちがフワフワして覚束なく。
私の歩みが遅いのか、街中と違い人の波はないのに自然と彼との距離が生まれた。
それには藤澤さんもすぐに気がついてくれて歩調を合わせてくれたものだから、次から次へと後ろからきた人に抜かされて行く。そんな中で。
「先日はどうもありがとうございました」
聞いた時、何のことかピンとこなかった。けれどもすぐに先日の書類の件だと思い当たる。
「...い、いえ。ただ、私なんかでお役に立てたのでしょうか?」
そんな大した事をしたつもりはなく、まして、わざわざこんな風に声をかけてもらえるほどのものでもない話。
でも、彼は柔らかな微笑みをつくり、言ってくれた。
「それはもちろん。三浦さんのおかげで仕事が捗って本当に助かりました」
私も彼に褒められた事がとても嬉しく、つい、笑顔で自分の気持ちを。
「...藤澤さんに、そう言ってもらえるとすごく嬉しいです」
するとどういう訳か、彼が戸惑ったように瞳を何度か瞬かせた。
その後、白衣のポケットをゴソゴソと探り始め、手のひらに渡されたのは一口チョコ。
まさか、こんなものを彼から貰えるなんてと感激していたら、研究所へ着いた時にも。
「本当、三浦さんって....初めて会った気がしないんですよね」
もらったチョコも、ついでのように言われた言葉にも、親しみが込められていて。
この日から雲の上の人との距離が少しだけ近くなった気がする。
本来なら松浦とする作業なので、あの時は彼の上司としての責任、あるいは単なる気まぐれな親切からなるものだと理解している。
だから、私はいつも通り、遠くで彼の事を見つめるだけで幸せな群衆に戻ろうとしていた。
その矢先。なんと、研究所の方の書類の不備とやらを私が見つけてしまい、雲の上の人間に指摘するという大それた行動をとってしまう。
そのおかげで雲の上の人間にどうやら三浦優里の私は関心を持たれたみたいだった。
「こんにちは。今日は研究所におつかいですか?」
いつの間にか隣に並んだ長身の男性が私にヒョコッと顔を向けて声をかけてきた。
私の身体はその耳障りのいい低音に、ビクッと勝手に反応してしまう。
恐る恐るその素敵な声の持ち主を確認すると予想通り雲の上の人間。
私の心臓は、いきなり声をかけられた驚きとその相手が彼であるダブルの驚きで、確実におかしなリズムを打っていた。
「あ...こんにちは。はい、今から...そちらに...行こうと...」
「なら、重い荷物の方を持ちますよ」
自然の動きで、以前みたいに持っている紙袋を両方とも彼が持とうとしてくれる。それには、流石に。
「でも...」
「いいんですよ。俺が三浦さんと話したかったからそのついでです」
...彼が私と?
そう言ってくれた言葉が気になり、ここは素直に渡した。
2人で荷物を分けて持ち、この通路を初めて彼と並んで歩くと気持ちがフワフワして覚束なく。
私の歩みが遅いのか、街中と違い人の波はないのに自然と彼との距離が生まれた。
それには藤澤さんもすぐに気がついてくれて歩調を合わせてくれたものだから、次から次へと後ろからきた人に抜かされて行く。そんな中で。
「先日はどうもありがとうございました」
聞いた時、何のことかピンとこなかった。けれどもすぐに先日の書類の件だと思い当たる。
「...い、いえ。ただ、私なんかでお役に立てたのでしょうか?」
そんな大した事をしたつもりはなく、まして、わざわざこんな風に声をかけてもらえるほどのものでもない話。
でも、彼は柔らかな微笑みをつくり、言ってくれた。
「それはもちろん。三浦さんのおかげで仕事が捗って本当に助かりました」
私も彼に褒められた事がとても嬉しく、つい、笑顔で自分の気持ちを。
「...藤澤さんに、そう言ってもらえるとすごく嬉しいです」
するとどういう訳か、彼が戸惑ったように瞳を何度か瞬かせた。
その後、白衣のポケットをゴソゴソと探り始め、手のひらに渡されたのは一口チョコ。
まさか、こんなものを彼から貰えるなんてと感激していたら、研究所へ着いた時にも。
「本当、三浦さんって....初めて会った気がしないんですよね」
もらったチョコも、ついでのように言われた言葉にも、親しみが込められていて。
この日から雲の上の人との距離が少しだけ近くなった気がする。
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