False love

平山美久

文字の大きさ
4 / 17

アルとの時間

しおりを挟む

アルヴィンとの婚約期間は
以前と何一つ変わらなかった。

いつも通りに父に付き合って
登城して
アルヴィンの執務の休憩時間に
一緒にお茶をする。

他愛もないやりとりをして
美味しいお茶と美味しいお菓子を
堪能する。

ただそこにケルヴィンがいないだけ。

アルヴィンとのお茶の時間は
ケルヴィンと3人での楽しい時間だった。

「リア。もう一週間たったんだ。そろそろ元気出せよ。兄上に依存しすぎだ。」

「煩いわね。アルだってはじめは泣きそうにしてたじゃない。」

ケルヴィンが旅立って
早1週間。
たった1週間。
それでもユーフォリアにとって
すごく長い時間だ。
こんな気持ちがずっとずっと
続くと思うと美味しいお茶もお菓子も
味気なくなる。

「泣きそうなのはお前だ。」

そう言って慣れ親しんだ
デコピンが見事にユーフォリアの
額に直撃する。


アルヴィンはユーフォリアが
落ち込んだり泣きそうになると
昔からデコピンを仕掛けてくる。
アルヴィンなりの慰め方だ。

「歳下のくせに本当に生意気ね。」

「たかが1つ違いに姉面されたくないね。」

ふっと意地悪い笑みで紅茶を
すするアルヴィンは全くもって
可愛げがない。

元々出会ってからすぐ
アルヴィンはユーフォリアに
やたらと意地悪いことばかりしていた。
たかが1つ違いのくせに。と。

それでも昔は天使のような笑顔が
とっても可愛かった。
イタズラが成功して
ユーフォリアを半泣き状態にするけど
その時の笑顔は屈託のないものだから
ついやられたユーフォリアは
許してしまっていた。


「アルごめんね。一時的とはいえ婚約することになって。醜聞もいいとこね。」

婚約が一時的なものだとしても
事情を知っているのは
アルマニー家と王族と宰相様とタスリア国の王族たちだけ。

他の貴族は本当の婚約だと思っている。
その方が反対の隣国の思惑に
乗るふりを見せられるから。

はじめはタスリア国には
黙っているつもりだったらしい。
しかしタスリア国と懇意にしている
アルマニー家当主の父が
信用に関わることは。と言って
父自らタスリア国の王様に話に行った。

そんな事情を他国にやすやすと
話せるのは本当に
両国での信頼関係が確固たるものだからだ。

父曰く次代のタスリア国の王子は
すごく才ある人たちらしく
本来はタスリア国にユーフォリアを
嫁がせたかったらしい。

話を直々にしに行った際に
王子をみて父は一目惚れをした。
なんて言っていた。

帰ってきた父は早速お母様に
妹を作ってタスリアに嫁がせるぞと
張り切っていたのをみて
呆気にとられていた。

父はタスリアもシンフォニアも
愛しているのだ。

「私は別に構わない。リアの方こそ私たち王族に振り回して悪いな。」

珍しくアルヴィンがへこんでいるのを
みてユーフォリアは少し驚く。

「アル。お菓子かお茶に毒入ってた?」


そう聞いたユーフォリアにアルヴィンは
ベーっと行儀悪く舌を出して
睨んでくる。

「アル!」

慌ててあるの肩を叩いたら
アルヴィンは戯けて笑う。

その顔はどこかケルヴィンに
似ていて一瞬で
心が寂しくなった。


「まぁ俺も兄上もリアには飛び切り甘いからな。心配しなくても醜聞に晒されないようにしてやるさ。」


そう言って昔のように
俺と言うアルヴィン。

「アルが甘いのは嘘でしょ。それにアルが"私"っていうの違和感しかないからやめてほしい。」

「アホか。私は王族だ。王族らしく威厳に満ちていないとな。」

「ふふ。アルに威厳ねぇ。」

ふふふと堪え切れなくて笑ってしまう。

「あるだろ。私でも。」

そう言うアルヴィンも一緒になって
笑い合う。

ケルヴィンはいなくて
寂しいけど
アルヴィンとこうやって
笑いあっていれば
すぐに時間がたってくれるといいな。


「リア。今だけは俺の婚約者になって。」

アルヴィンがそう言って
ユーフォリアの頭をひと撫でしてから
いつものようにデコピンをする。


その時一瞬アルヴィンの顔に
僅かな憂いが帯びたことに
ユーフォリアは気づかない。

赤くなってるだろう
ヒリヒリする見えない額に
目を向けているユーフォリアに
アルヴィンは少しでもこの時間を
惜しむようにいつまでも
ユーフォリアから目を離さなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

婚約七年目、愛する人と親友に裏切られました。

テンテン
恋愛
男爵令嬢エミリアは、パーティー会場でレイブンから婚約破棄を宣言された。どうやら彼の妹のミラを、エミリアがいじめたことになっているらしい。エミリアはそのまま断罪されるかと思われたが、彼女の親友であるアリアが声を上げ……

処理中です...