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第1章
その3
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踵を返した馬車の中。
リリアはまたも独りごちた。
「私は前世の記憶持ちだったじゃない!
そうよ!そうよ!本当に今まで何で忘れていたのよ!!」
腰を何度も浮かせて両手を拳にして
上下に動かしながらはしゃいだ。
たった今頭の中に流れた映像は
生まれた時から知っていた前世の記憶。
この世界に生まれ落ちる前の世界。
それは日本という現代だ。
生まれた時からすでにその記憶があった。
それなのに6歳までの記憶をなくした
リリアはその前世の記憶もすっかり
忘れていたのだった。
少しずつこの世界での名前や自分の
出自に両親のことなど2年かけて
思い出したのに肝心の前世の記憶が
今になってやっと思い出したのだ。
記憶をなくして11年になり
ようやくだ。
「なんてことなの!11年もなんて。学園なんて言ってる場合じゃないわ!早く屋敷に戻って念願の夢を叶えなくちゃ!」
しきりにはしゃぎ終えると
右手を額に持っていきため息を一つ漏らす。
前世の記憶を思い出したものの
何故記憶をなくしたのかはまだ
思い出せてはいなかった。
とにかくその事は後回しで
今はただ11年も無駄にしていたことを
少しでも取り戻すためにも
学園で呑気に授業を受けている場合ではない。
リリアの中にある前世の記憶は
服飾専門学校に在籍していた
ごく普通の女の子。
名前や自分の顔は覚えていなかったが
それでも日本にいた時、
将来は自分のお店を持つ事を夢に見て
ひたすら専門学校に通っていたのだ。
学校の帰りに踏切で動けなくなった
おばあさんを助けようとして
もれなく自分が犠牲になってしまった。
次に目を覚ましたのが見知らぬ天井。
思うように喋れず思うように体も動かない。
知らない大人達が自分を呼ぶ声や表情をみて自分が赤ちゃんになったと悟った。
成長とともに前世の記憶が蘇り
ここが日本ではなく別の世界に転生したのだとわかった。
2歳になる頃には大人のように話せるようになっていた。
しかし普通の2歳児は大人みたいに
つらつらと喋れるはずがない。
リリアなりに子供らしく過ごすよう心がけた。
両親や周りの親族は愛らしいリリアを
一目見ようと事あるごとに
ハルベルト家に訪問していた。
その度にいろんな人のドレスを見てきた
リリアはなんてつまらないのだろうと
思うようになる。
日本では女性でもパンツを履くし
そのパンツもデニム生地だったり
ガウチョパンツだったりと色んな形があり
もちろんスカートにショートパンツ。
上の服はTシャツやチュニックに
ブラウスやオフショルダーなど
色んな服装があって毎日おしゃれを
するのが楽しかった。
しかしこちらの世界では
素材や少しのデザインが違うだけの
同じ形のドレスを身に纏っている。
色も違うしよく見ると細部にまで
こだわって作られているドレスも
たくさんある。
でもリリアからするとそれはすべて
ひっくるめてドレスなのだ。
はじめは日本では着る事がなかった
ドレスに憧れを抱いていた。
大人になれば自分もドレスが着れると
ワクワクした。
しかし毎度訪れる夫人たちのドレスを
見るたびに段々と飽きてきて
どれも同じにしか見えなくなっていった。
そうなればリリアは日本で着ていたような服が着たくなっていった。
日本で生活していた頃は
毎日のようにおしゃれを楽しみ
髪型にもこだわって学校に行っていた。
この世界に生まれ直したのなら
すでに日本のことは思い出として
このままここで一生を過ごそうと
まだ体が動かない赤子の時にすでに決意している。
ただ一つ心残りがあるとすれば
前世の時の夢だ。
だったらこの世界で
その夢を叶えよう。
毎日同じようなドレスじゃなく
もっと色んなファッションが
提供できるお店を持ちたい。
この世界に生まれ落ちて2年。
リリアはこの世界での自分の目標を
持ったのだ。
そうして早く大人になり
その夢を叶えるために
この国のことを物心ついた程を装って
4歳になる前に勉強を始めた。
見た目は4歳児だが中身は普通に20歳を過ぎている。
子供の教養など朝飯前だ。
すべてそつなくこなし
空いた時間には洋服を作るための
準備をこっそりはじめていった。
しかしあの6歳の時におきた
記憶をなくす出来事のおかげで
すっかりその夢のための準備を
忘れてしまったのだ。
今はもう17歳。
その忘れた時間を取り戻す。
カバンから紙と羽ペンを
取り出して腰掛けに正座をして体を屈めて紙にこれからやることリストを
まとめていく。
「とりあえず服を作るのにミシンは欠かせないわ。それに生地に型紙。あとデザイン画。針や糸は仕立て屋から調達できるとしてやっぱりミシンよね。
流石にこの世界にもミシンはあるよね?
お父様に頼んでミシンをゲットしなくちゃ!」
ここ最近の迷いや葛藤が嘘のように
リリアはこの上なくワクワクした。
「やっぱり最初はTシャツよね!こんなコルセットでギチギチに締められた窮屈なドレスなんかよりずっと楽でいいわ!
平民の女性ですら肘より上の二の腕を見せることはあまりいいものじゃないと言うけど寝るときだけなら構わないよね!」
ナイトドレスも寝るために
ゆったりとしたものではあるが
圧倒的にTシャツの方が
楽で寝心地がいい。
作るものが決まれば次は生地だ。
Tシャツに使われる生地の定番はコットン。
記憶をなくしたものだから
この国での生地の種類をまだ
把握できていなかった。
「コットンなんてこの国にあるかしら。
明日学園の図書館で調べてみよう。」
本当になんで忘れていたのだろうか。
こんなに心をワクワクさせてくれるのに。
今まで知識を増やすことが楽しくして
仕方がなかった。
だけど記憶を思い出し、
こうやって出来上がったTシャツを
想像するだけこんなにも胸が熱くなっていく。
リリアはこれこそが自分が求めていた
ものだと思った。
夢中になりすぎて
馬車が止まったことなど気付かず、
御者が扉をあけて声をかけてきたことで
ようやく屋敷に帰ってきたことに気づいた。
リリアはまたも独りごちた。
「私は前世の記憶持ちだったじゃない!
そうよ!そうよ!本当に今まで何で忘れていたのよ!!」
腰を何度も浮かせて両手を拳にして
上下に動かしながらはしゃいだ。
たった今頭の中に流れた映像は
生まれた時から知っていた前世の記憶。
この世界に生まれ落ちる前の世界。
それは日本という現代だ。
生まれた時からすでにその記憶があった。
それなのに6歳までの記憶をなくした
リリアはその前世の記憶もすっかり
忘れていたのだった。
少しずつこの世界での名前や自分の
出自に両親のことなど2年かけて
思い出したのに肝心の前世の記憶が
今になってやっと思い出したのだ。
記憶をなくして11年になり
ようやくだ。
「なんてことなの!11年もなんて。学園なんて言ってる場合じゃないわ!早く屋敷に戻って念願の夢を叶えなくちゃ!」
しきりにはしゃぎ終えると
右手を額に持っていきため息を一つ漏らす。
前世の記憶を思い出したものの
何故記憶をなくしたのかはまだ
思い出せてはいなかった。
とにかくその事は後回しで
今はただ11年も無駄にしていたことを
少しでも取り戻すためにも
学園で呑気に授業を受けている場合ではない。
リリアの中にある前世の記憶は
服飾専門学校に在籍していた
ごく普通の女の子。
名前や自分の顔は覚えていなかったが
それでも日本にいた時、
将来は自分のお店を持つ事を夢に見て
ひたすら専門学校に通っていたのだ。
学校の帰りに踏切で動けなくなった
おばあさんを助けようとして
もれなく自分が犠牲になってしまった。
次に目を覚ましたのが見知らぬ天井。
思うように喋れず思うように体も動かない。
知らない大人達が自分を呼ぶ声や表情をみて自分が赤ちゃんになったと悟った。
成長とともに前世の記憶が蘇り
ここが日本ではなく別の世界に転生したのだとわかった。
2歳になる頃には大人のように話せるようになっていた。
しかし普通の2歳児は大人みたいに
つらつらと喋れるはずがない。
リリアなりに子供らしく過ごすよう心がけた。
両親や周りの親族は愛らしいリリアを
一目見ようと事あるごとに
ハルベルト家に訪問していた。
その度にいろんな人のドレスを見てきた
リリアはなんてつまらないのだろうと
思うようになる。
日本では女性でもパンツを履くし
そのパンツもデニム生地だったり
ガウチョパンツだったりと色んな形があり
もちろんスカートにショートパンツ。
上の服はTシャツやチュニックに
ブラウスやオフショルダーなど
色んな服装があって毎日おしゃれを
するのが楽しかった。
しかしこちらの世界では
素材や少しのデザインが違うだけの
同じ形のドレスを身に纏っている。
色も違うしよく見ると細部にまで
こだわって作られているドレスも
たくさんある。
でもリリアからするとそれはすべて
ひっくるめてドレスなのだ。
はじめは日本では着る事がなかった
ドレスに憧れを抱いていた。
大人になれば自分もドレスが着れると
ワクワクした。
しかし毎度訪れる夫人たちのドレスを
見るたびに段々と飽きてきて
どれも同じにしか見えなくなっていった。
そうなればリリアは日本で着ていたような服が着たくなっていった。
日本で生活していた頃は
毎日のようにおしゃれを楽しみ
髪型にもこだわって学校に行っていた。
この世界に生まれ直したのなら
すでに日本のことは思い出として
このままここで一生を過ごそうと
まだ体が動かない赤子の時にすでに決意している。
ただ一つ心残りがあるとすれば
前世の時の夢だ。
だったらこの世界で
その夢を叶えよう。
毎日同じようなドレスじゃなく
もっと色んなファッションが
提供できるお店を持ちたい。
この世界に生まれ落ちて2年。
リリアはこの世界での自分の目標を
持ったのだ。
そうして早く大人になり
その夢を叶えるために
この国のことを物心ついた程を装って
4歳になる前に勉強を始めた。
見た目は4歳児だが中身は普通に20歳を過ぎている。
子供の教養など朝飯前だ。
すべてそつなくこなし
空いた時間には洋服を作るための
準備をこっそりはじめていった。
しかしあの6歳の時におきた
記憶をなくす出来事のおかげで
すっかりその夢のための準備を
忘れてしまったのだ。
今はもう17歳。
その忘れた時間を取り戻す。
カバンから紙と羽ペンを
取り出して腰掛けに正座をして体を屈めて紙にこれからやることリストを
まとめていく。
「とりあえず服を作るのにミシンは欠かせないわ。それに生地に型紙。あとデザイン画。針や糸は仕立て屋から調達できるとしてやっぱりミシンよね。
流石にこの世界にもミシンはあるよね?
お父様に頼んでミシンをゲットしなくちゃ!」
ここ最近の迷いや葛藤が嘘のように
リリアはこの上なくワクワクした。
「やっぱり最初はTシャツよね!こんなコルセットでギチギチに締められた窮屈なドレスなんかよりずっと楽でいいわ!
平民の女性ですら肘より上の二の腕を見せることはあまりいいものじゃないと言うけど寝るときだけなら構わないよね!」
ナイトドレスも寝るために
ゆったりとしたものではあるが
圧倒的にTシャツの方が
楽で寝心地がいい。
作るものが決まれば次は生地だ。
Tシャツに使われる生地の定番はコットン。
記憶をなくしたものだから
この国での生地の種類をまだ
把握できていなかった。
「コットンなんてこの国にあるかしら。
明日学園の図書館で調べてみよう。」
本当になんで忘れていたのだろうか。
こんなに心をワクワクさせてくれるのに。
今まで知識を増やすことが楽しくして
仕方がなかった。
だけど記憶を思い出し、
こうやって出来上がったTシャツを
想像するだけこんなにも胸が熱くなっていく。
リリアはこれこそが自分が求めていた
ものだと思った。
夢中になりすぎて
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御者が扉をあけて声をかけてきたことで
ようやく屋敷に帰ってきたことに気づいた。
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