13 / 25
第2章
その6
しおりを挟むそれからしばらくリリアはお昼休みの間は
エリックとの時間を楽しんだ。
コットンの資料を捜しつつも
エリックと何気ない会話を楽しんだり
図書館では飲食厳禁だけど
司書もいないリリアとエリックの
二人だけなのでこっそりと
お菓子を持参すれば、
エリックはダメですよ!と慌てつつも
口にお菓子を放り込んでやると
殊の外美味しかったのか
仕方ないですね。と言いながら
もぐもぐとお菓子を頬張っていた。
「エリック実は甘いもの好きでしょう?」
「…どうしてわかるんですか?」
一度食べてしまってから
吹っ切れたように彼もお菓子を持参
するようになって
プチお菓子パーティを開いていた。
「だってあなたが持ってくるもの全部甘いもの。それに口に入れた時あなたニヤついてるわ。」
「ニヤッ…ついてませんよ。しかし、甘いものは好物です。」
反論しかけたけど
甘党であることを認めた。
「今度王都にある有名なケーキ屋さんがあるんだけど買ってきてあげる。」
机には散乱した本たち。
高いヒールの靴は窮屈なだけなので
リリアは最近ではエリックの前だというのに
ヒールを脱ぎ捨てて座っている。
なんとも淑女らしくないのだが
エリックはなにも言わないので
リリアも気にせず素のままでいられる。
「そんな!リリア様に買ってきてもらうなんて恐れ多いです!」
手を前にしてブンブンと振る。
(なんだかエリックっておっきい犬みたい。)
「気にしないで!というかそれよりもいい加減様呼びしないでって言ってるでしょ?」
リリアは少し前からエリックに
様呼びをしないでほしいと頼んでいた。
色々話すようになって
かなり仲良くなったはずだ。
だからいい加減様呼びと丁寧口調は
やめて砕けた感じで話そうって言ってるのに
根っからの貴族気質なのか
エリックは相変わらずリリア様。
と様呼びだ。口調なんか最初から
直す気はないらしい。
(ある意味無礼よね。こっちのが身分上なんだからいうこと聞きなさいよ!…ってこれこそ典型的なわがまま令嬢の思考じゃない。危ない危ない。)
「無理ですよ!位も上のお方に様をとるなんて。リリア様はリリア様です!」
少しだけ挙動不審になりながらも
エリックは頑なにリリアとは
呼んでくれないことに
リリアは痺れを切らし始める。
「もう!」
怒ったリリアはエリックの
両手を掴んで顔をぐいっと
近づける。
「り、リリア様!?」
心なしか頬が赤くなった気がするけど
厚いメガネの向こうにある瞳は
見えないのでエリックがどんな表情を
しているのかは読めない。
「呼んでくれなきゃそのメガネ取るからね?」
ずいずいと顔を近づけると
エリックは反り返らしながら
顔を背ける。
それが気に食わなくて掴んでいた手を
話してからエリックの両頬に触れると
強引にこちらに向けさせる。
「呼んでったら!」
ゴクリと固唾を飲む音が聞こえてくる。
エリックはしばらく
黙った後にぼそりと言った。
「……リリア…」
小さな声だったけど聞こえてきた
自分の名前に嬉しさがこみ上げてきて
リリアは満面の笑みになった。
「やっと呼んでくれた!」
にこにこと笑うリリアを前に
再びエリックはなにも言えなくなって
固まってしまう。
リリアはそんなエリックに訝しめば
慌ててまた顔を逸らしてしまう。
その行動に理解ができなかったものの
気にせずに机に置いてあった
本を適当に選んで調べ物を始めた。
そんなリリアをエリックが
見つめていたことにリリアは
知らなかった。
そんな毎日の中、
糸屋さんを巡ったり王立図書館にも通ったりとして色々調べたりする
けれどもコットン生地は見つからない。
学園の図書館の本は大方調べ終えたので最近はエリックとの時間を楽しんでいた。
エリックとの時間は素の自分で入れるので自然と居心地がよかった。
教室では11年間もの培ってきた
淑女の仮面を被って
凛とした姿でいるものの
エリックと図書館でいる時は
だいたい怠けている。
今日もリリアは履いていたヒールの靴を脱いで足をバタバタさせながら
エリックと話していた。
「教室は退屈で授業も面白くない!
エリックとここで話しているほうがずっといいわー。」
天を仰ぎみながら言う。
「そういえば熱心に本を読まれたりしていますが、以前僕に聞いてきた生地のことについてですか??」
「ん?そうね。その生地をずっと捜してるんだけど…」
「ドレスでも作らせるんですか??」
「ドレス…」
ドレスと言われて困ってしまう。
本当はドレスではなくTシャツをつくりたいんだけど
エリックにTシャツを作るなんて
いえない。
「そうね!ドレスを作ってみたくて!」
「リリアさ…こほん。リリアが??」
様呼びしそうになって
咳払いをしてから
再び質問してくる。
貴族令嬢が自ら洋裁するのは
珍しいらしく
エリックも不思議に思ったのだろう。
「ええ!前にブティックを開きたいって言ったでしょ?やっぱり自分でも作り方とか知っときたいなーって。」
あながち間違ってはいないけれど
少しだけ嘘を混ぜる。
「そうなんですか。いいですね。」
嫌悪や信じられない。って思うのかな
なんて身構えていたら
微笑まれて肯定されて
ちょっとだけ嬉しくなる。
エリックはこの貴族社会において
数少ない貴族女性の職につくことに
肯定派だ。
彼のような貴族がたくさんいれば
女性でも職につくことができるのに。
これ以上話をすればボロが出てしまいかねないので
会話はここで終了します。
と言う意味も込めて
はは。とだけ笑って再び本に
視線を戻した。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
ローザとフラン ~奪われた側と奪った側~
水無月あん
恋愛
私は伯爵家の娘ローザ。同じ年の侯爵家のダリル様と婚約している。が、ある日、私とはまるで性格が違う従姉妹のフランを預かることになった。距離が近づく二人に心が痛む……。
婚約者を奪われた側と奪った側の二人の少女のお話です。
5話で完結の短いお話です。
いつもながら、ゆるい設定のご都合主義です。
お暇な時にでも、お気軽に読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。
平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました
Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。
伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。
理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。
これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる