祟り神は守り神

仙道 神明

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第二話 鬼を退けし神

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 はるか昔、この里は鬱蒼たる森と荒れ野に囲まれた小さな村であった。

 人々は田を耕し、川の流れを頼りに暮らしていたが、鬼や異形のものどもが夜ごと出没し、しばしば人をさらい、田畑を荒らしたという。

 その折である。

 天を裂き、黒き影が降り立った。

 それは神とも鬼ともつかぬ存在で、ただ“禍(まが)つもの”と呼ばれた。

 その眼は紅に燃え、その声は雷のごとく轟いた。

 人々は皆、地にひれ伏し、死を覚悟した。

 禍(まが)つものは言った。

「この地を混乱に陥れてくれよう。血を流し、嘆きを響かせ、闇に沈めてくれようぞ」

 だがその時、山奥から現れた一匹の鬼が、村を狙い襲いかかった。

 禍(まが)つものはこれに気を取られ、鬼に声をかけた。

「我こそは災いの神、汝と手を組み村を蹂躙せん」

 ところが鬼は、彼をあざ笑った。

「笑止! 我こそがこの地の主、貴様など知らぬ!」

 怒りに駆られた禍(まが)つものは、思わず腕を振るった。

 雷鳴のような力がほとばしり、鬼の身体を裂いた。

 鬼は叫び声をあげ、黒煙となって消え失せた。

 その場を見ていた村人たちは、口を揃えて叫んだ。

「神が鬼を討った! 我らを救う神ぞ!」

 禍(まが)つものは唖然とした。

「いや……違うのだ……仲間にしようと……」

 だが人々は耳を貸さず、祭壇を設け、酒を供え、感謝を捧げた。

 かくして、彼は“鬼を退けし神”として祀られはじめたのである。
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