6 / 26
Lap 6 「勝利の味」
しおりを挟む
予選トップタイムを出した悟のAE86トレノは、堂々とポールポジションに並ぶ。だが当の本人は、ヘルメットの下で冷や汗をかいていた。
(なんか……急に現実味がすごい)
スタート直前、ピットウォールから手を振る早矢の姿が目に入る。そして後ろでは、古川がニヤニヤしながら腕を組んでいた。
「いよいよだな。まぁ、無事に帰ってくりゃ上出来だろ」
──レッドシグナルが順に点灯し、全消灯と同時にスタート!
やや遅れ気味にクラッチを繋いだ悟のトレノ。2台、3台が一気に横へ並びかけるが、悟はビビらない。
(筑波は1コーナー勝負だろ)
イン側に寄せつつ、ブレーキングポイントをギリギリまで引っ張る。ピタリとフロントタイヤを白線に乗せ、アウト側から仕掛けてきたマシンを封じ込めた。
「……うわ、マジで抑えたぞ」
ピットの古川が思わず口にする。
「すごいライン取り…」
早矢の目が輝いていた。
3周目あたりから、悟はトップを守りつつ、後続との距離を微調整していた。
(グランツーリスモと違って、タイヤが熱ダレしてきてるな。そろそろフロントの入りが甘くなる)
少しだけ進入スピードを落とし、トラクションを丁寧に扱う。後ろの2番手マシンがじわじわ詰めてきたが、悟は慌てなかった。
──そして迎えた最終ラップ。
最終コーナー……悟は縁石ギリギリをかすめるようにして立ち上がる。
少しリアが滑った。でも……それも想定内。
まるで、グランツーリスモでライン取りを練習した時の“そのまま”だった。
バックストレートを駆け抜けたAE86が、真っ先にチェッカーを受ける。
奇跡のような──いや、蓄積されたゲームの技術が実を結んだ勝利だった。
ピット内、拍手と驚きが入り混じったような空気。
早矢が小さく叫ぶ。
「すごい……ほんとに、勝っちゃった」
悟が車を降りると、古川が開口一番こう言った。
「お前、マジで“グランツーリスモで覚えたライン”で勝っちまうとはな……」
「いや~……正直、何度かスピンしかけたけどさ」
照れ笑いしながら、ヘルメットを脱ぐ悟。その髪は汗でぐっしょり濡れていた。
早矢が駆け寄り、タオルを差し出す。
「おめでとうございます、悟さん……! 最高でした!」
「いや、俺は何も……クルマが仕上がってたからだよ。古川と……早矢ちゃんのおかげだ」
でもその目は、間違いなく“ドライバーの目”をしていた。
筑波サーキットでの初勝利、そして悟の“走り屋人生”が、本格的に動き出すきっかけとなったレースだった──。
(なんか……急に現実味がすごい)
スタート直前、ピットウォールから手を振る早矢の姿が目に入る。そして後ろでは、古川がニヤニヤしながら腕を組んでいた。
「いよいよだな。まぁ、無事に帰ってくりゃ上出来だろ」
──レッドシグナルが順に点灯し、全消灯と同時にスタート!
やや遅れ気味にクラッチを繋いだ悟のトレノ。2台、3台が一気に横へ並びかけるが、悟はビビらない。
(筑波は1コーナー勝負だろ)
イン側に寄せつつ、ブレーキングポイントをギリギリまで引っ張る。ピタリとフロントタイヤを白線に乗せ、アウト側から仕掛けてきたマシンを封じ込めた。
「……うわ、マジで抑えたぞ」
ピットの古川が思わず口にする。
「すごいライン取り…」
早矢の目が輝いていた。
3周目あたりから、悟はトップを守りつつ、後続との距離を微調整していた。
(グランツーリスモと違って、タイヤが熱ダレしてきてるな。そろそろフロントの入りが甘くなる)
少しだけ進入スピードを落とし、トラクションを丁寧に扱う。後ろの2番手マシンがじわじわ詰めてきたが、悟は慌てなかった。
──そして迎えた最終ラップ。
最終コーナー……悟は縁石ギリギリをかすめるようにして立ち上がる。
少しリアが滑った。でも……それも想定内。
まるで、グランツーリスモでライン取りを練習した時の“そのまま”だった。
バックストレートを駆け抜けたAE86が、真っ先にチェッカーを受ける。
奇跡のような──いや、蓄積されたゲームの技術が実を結んだ勝利だった。
ピット内、拍手と驚きが入り混じったような空気。
早矢が小さく叫ぶ。
「すごい……ほんとに、勝っちゃった」
悟が車を降りると、古川が開口一番こう言った。
「お前、マジで“グランツーリスモで覚えたライン”で勝っちまうとはな……」
「いや~……正直、何度かスピンしかけたけどさ」
照れ笑いしながら、ヘルメットを脱ぐ悟。その髪は汗でぐっしょり濡れていた。
早矢が駆け寄り、タオルを差し出す。
「おめでとうございます、悟さん……! 最高でした!」
「いや、俺は何も……クルマが仕上がってたからだよ。古川と……早矢ちゃんのおかげだ」
でもその目は、間違いなく“ドライバーの目”をしていた。
筑波サーキットでの初勝利、そして悟の“走り屋人生”が、本格的に動き出すきっかけとなったレースだった──。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる