花葬館-ラナンキュラスの檻-(カーネーション)

ねころび天青

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『深層支配エンド』

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 ──「……わかった、もう抗わない。好きにして」

「そう……よく言えましたね。ふふふふふっ、大っ変よぉくできました」

 白いカーネーションの声は、まるで讃美歌のように甘く、静かに、耳奥に沁み込む。
 あなたの言葉は降伏のように響いたが、彼女にとっては、きっと唯一の「選択」だった。

 けれど、その選択をした時点で、もうすべての自由は、彼女の指先からすり抜けていた。

「なんにも考えなくていいんです。ただわたくしに委ねて、体も心も、全部……預けて」

 ベッドの柔らかさが、まるで沼のように深く、あなたの身体を呑み込んでいく。

 白いカーネーションの白く細い手が、頬を撫で、胸元へと滑っていくと──
 その手はやがて、根のようなものに変化して、皮膚と皮膚の境界を曖昧にしながら、身体の上に絡みついていく。

「わたくしの愛はね……形を持たないもの。ですから、お嬢様の中に溶け込んでしまえば、それがいちばん自然なの」

 彼女の言葉は、理屈より感覚を優先する。
 微かな香気、吐息、囁き、指先の熱──どれもが、あなたの心を焦がし、静かに「抗う意思」を溶かしていく。

「もしかしたら……お嬢様はまだ、どこかで“自由”を夢見ていたのかもしれませんね。でも、もう大丈夫。わたくしが、その面倒な感情も全部、消してあげます」

 あなたの目元に涙が滲んだ。
 怖い、というよりも──何もかも委ねてしまった安堵と、もう戻れないという確信が混ざった涙。

「泣いてもいいですよ。苦しいなら、吐き出してください。全部全部全部、わたくしが受け止めますから……お嬢様の呼吸さえ、鼓動さえ、思考さえ、わたくしが代わりに抱いてあげます」

 口づけが、額に、まぶたに、そして唇に──やさしく、けれど絶対的に重ねられていく。
 熱に溺れるように、あなたの視界は霞み、意識が遠くなっていく。

「……大好きです。お嬢様のすべてを。だから、もう離しません……いいえ、“離せない”んです。わたくしの根が、お嬢様をずっっっと、つなぎとめますので──」

 それは、花の香りに溺れるような甘い悪夢。

 けれどあなたは、その深淵に身を任せながら、微かに微笑んだようだった。

 ──こうしてあなたは、カーネーションの深い深い愛に囚われた。
 抗うことすら許されない、優しい檻の中で。
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