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第二章
グルームダンジョンのドロップ品
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地上に戻ってすぐに、魔法バッグで休んでいた犬達に,
「ダンジョンから出たよ」
と、声をかける。
犬達が喜んで外に出たい、と、言うので出してあげると、大はしゃぎでまわりじゅうを駆け回る。
下がっていた尻尾も、ヒュンっ、と上にあがって、ぶんぶん振られている。
精神的な落ち込みはないようでよかった、帰ったら、このコ達にも美味しいご飯をだしてあげよう。
とりあえず、自分と犬達に洗浄魔法だけはかけておく。
気分的に、あのダンジョンの空気感を纏っているだけでも、気持ち悪い気がするので。
そうして、ヒルダさんの小屋に戻ると、フレッドがドアをノックする。
少しして、扉が開くが、
「何じゃ、お主達。 途中でやめて帰ってきおったか?」
と、ヒルダさんは、あからさまに不機嫌そうになる。
「いやいや、そんな訳ないでしょう?」
と、フレッド。
「吸血ヒルの唾液腺、きっちり100個持ち帰りましたよ」
と、セイさんが、テーブルの上に唾液腺の入った袋をのせる。
「何じゃと? それにしては早すぎないか? 本当に100個あるんじゃろうな?」
「疑うなら、数えてみればいいじゃないか。 あぁ、ヒルダ、僕達ちょっと休ませてもらうから、マナの魔法バッグを部屋の中に置かせてくれ」
「魔法バッグ? いや、それは構わんが」
ヒルダさんが、唾液腺をとりだして数え始めるより早く、フレッドが、
「マナ、シャワー浴びるから中入れて」
と、言うので、バッグに入ってもらう。
セイさんは、
「マナさんも、お風呂を使われますよね。 俺は後でいいですが、やはり中に入れて頂いてもいいですか?」
と、言うので、やはり入ってもらう。
おふたりのあとに、犬達も入れて、
「ヒルダさん、では、あとのドロップ品に関しては、休ませていただいたあとで検証しますので、まずは失礼します」
と、言って、わたしもバッグの中に入る。
後ろの方で、
「え? ちょ、ちょっとお主等どこへ……」
と、言うヒルダさんの慌てた声が聞こえたが、一刻も早くお風呂に入りたいので、申し訳ないがそのままにする。
家に入って、お風呂に温泉のお湯をためて、ゆっくり体を洗ったら、少し眠らせてもらおう。
お風呂のあとで、犬達にご飯をあげてから、仮眠をとり、きっちり3時間は眠っただろうか。
寝室から出ると、リビングには、セイさんもフレッドも、もう起きてきていた。
「やあ、おはようマナ。 お腹が空いたんだけど、何か食べるものを出してもらっていいかな?」
「おはようございます。 お弁当でいいですか?」
「ああ、助かるよ。 お願いする」
地下の食糧庫に置いてあるお弁当を、適当に3つ取ってきて、リビングのテーブルに置く。
今回は、フレッドの分はハンバーグ、セイさんの分は鶏の照り焼き、わたしの分は白身魚のムニエルのお弁当だった。
それぞれに腹ごしらえをして、食後には紅茶を淹れる。
アニタさんに持たせてもらったお弁当は、本当にどれも美味しくて大助かりだ。
そういえば、コータ達に無事だよ、と手紙くらいは出したいな。
ロレンツォでは、バタバタしていて、そんな余裕はなかったし。
次の街では、お手紙を出せるといいんだけれど。
そんな事を考えながら、お茶を飲んでいると、ひと息ついたフレッドが口を開く。
「さて、落ち着いた所で、ドロップ品の確認をしようか。 ヒルダに渡す前に、こっちで欲しいものは選り分けないとね」
そうして、グルームダンジョンから持ち帰ったドロップ品を、床にずらりと並べる。
数えてみた結果、
蝙蝠の鉤爪78個
蝙蝠の飛膜36個
ゴートサッカーの牙87個
あとは宝箱だが、罠があるものは解除して、それぞれ開けてみると、
ヘマタイト9個
ファイブロライトのキャッツアイが1個
ブラッドストーンが1個
そして、ボスのドロップ宝箱からは、水姪が2個
「この辺の、鉤爪とか牙とかは全部ヒルダにあげよう。 僕達には、換金するくらいにしか用はないし。 それより、水姪が2個もでたのは大きいな。 ヒルダが、あれだけ欲しがってたんだ、何か大きなものと引き換えにしてもらわないと」
フレッドが、ちょっと悪い顔になっている気がする。
「でしたら、世話をするデク人形付きだという、馬小屋をもらいませんか? マナさんの魔法バッグの中に置いてもらえれば、ですけれど」
「おお、それはいいな。 いつも馬達を、玄関に括り付けるだけなのはどうかと思ってはいたんだ。 マナ、もらってもいい?」
「ヒルダさんがくれればですけれど、いいと思います。 バッグの中でも、馬さん達が快適なのはありがたいですもんね」
「OK、じゃあそれで交渉しよう。 あとは、この魔宝石だけど、ヒルダは鑑定もできるから視てもらうとして。 たぶん、ヘマタイトは付与効果なしでも、【身代わり石】として使えるはずだから、追加で、みんなのネックレスを作ってもらおう」
そこまで話して、ちょっと疑問だったので聞いてみる、
「ところで、水姪って何なんでしょう?」
しかし、フレッドもセイさんも首を横に振る。
「さあ? 僕も知らないから、あとでヒルダに聞いてみようか」
そうして、ドロップ品の検証と仕分けを終えて、魔法バッグから、ヒルダさんの小屋へと戻ると、作業中で忙しそうにしていたヒルダさんは、手を止めてこちらを見詰めている。
「やっと出てきおったか。 色々と聞きたい事はあるが、まずは、ヒルの唾液腺100個、間違いなくいただいた。 ご苦労じゃったな」
「いやいや、どういたしまして。 今は作業中だろ、いいよ、気にせず続けて」
と、フレッド。
「大丈夫じゃ。 そろそろ、休憩を取ろうと思っとったところじゃ」
ヒルダさんは、そばにあったタオルで手を拭きながら、こちらに向き直る。
「じゃあ、他のドロップ品についての話をしてもいいかな?」
「むろんじゃ、はようせい」
そこで、みんなテーブルを取り囲んで椅子に腰かける。
「まず、この辺は、全部ヒルダにあげようと思うんだけど」
言いながら、さっきの牙や爪を、ひとまとめにした袋を渡す。
「ふむ、蝙蝠の鉤爪に被膜、ゴートサッカーの牙じゃな。 ありがたくいただこう」
「それと約束の水姪ね」
フレッドは、事もなげに宝箱をテーブルにのせる。
「おぉ! 取れたか! さすがじゃのう」
ヒルダさんは、嬉しそうに宝箱を開いて、中を確かめている。
「ところで、魔宝石がいくつか出たんだけど、視てくれる?」
と、魔宝石をテーブルにゴロゴロと取りだすフレッド。
「ふん、なるほど。 このブラッドストーンは物凄いな、物理・魔法とも防御特大の守護石じゃ。 こっちのファイブロライト・キャッツアイは茶色の色合いに、キャッツアイ効果が美しいの。 じゃが、見た目の美しさだけでなく、警告石じゃな。 危機が迫ると、このキャッツアイが光る効果があるようじゃ。 ヘマタイトは、いくつか魔法防御や物理防御が付いておるようじゃが、これは砕いて、ビーズに加工してネックレスにした方が、使い勝手はいいじゃろうな」
ヒルダさんは、すらすらと鑑定をしてくれる。
水姪のお礼のつもりなのかもしれないが、パッと見ただけで、そこまでわかるのは凄いとしか言いようがない。
フレッドは、満足そうに頷いて聞いていたが、
「じゃあ、その身代わり石のネックレスも追加で作ってくれる? 人用が3個に、わんちゃん用が3個。 あぁ、わんちゃんの1匹は大きく変身するから、全部、魔法素材で頼むね。 ブラッドストーンとファイブロライト・キャッツアイは、それぞれペンダントヘッドにして、身代わり石のネックレスにくっつけといて」
「む。 まぁいいじゃろう」
ヒルダさんは、ちょっと渋々ではあるが引き受けてくれる。
そこまで終わると、フレッドは、さらに宝箱をテーブルの上にのせる。
「その宝箱は、もしや」
と、ヒルダさんが目を見張る。
「今回のボス、つがいだったんだよね」
「そんな、まさか! 2匹とも倒して、両方が宝箱をドロップしたのか? そんな幸運があり得るのか?」
「その、まさかが起こっちゃってさ。 どうする? ヒルダ、こっちの水姪の代わりに何くれる?」
「う、う、う、ううう───ん。 何を渡せば、それに見合うかのぉ」
頭を抱え込んで、悩むヒルダさんに、
「ま、考えといて。 僕達は、頼んだものができ上がるまでは、適当にのんびりさせてもらうからさ」
と、フレッドはそこで交渉を打ち切って、もうひとつの水姪の入った宝箱は仕舞ってしまう。
うんうん唸りながらも、作業に戻っていくヒルダさん。
大量の依頼に、さらになにか、水姪に見合ったものを差し出さなければならないとは、ちょっと気の毒な気もするけれど、水姪って、そんなに価値があるアイテムなんだね。
確かに、あんな酷いダンジョンの最下層まで潜って、さらにあんなグロいボスを2体も倒して、それでも出るかどうかは運次第なシロモノ、わたしなら何を積まれても、もう取りになんて行かないけど。
とりあえず、依頼したアイテムができ上がるまでの数日間は、ここに滞在する事になりそうだし、少しは自炊もした方がいいかも。
そんな風に考えていると、セイさんに、
「マナさん、中途半端に休んだので、すぐには眠れないと思いませんか? ちょっと寝酒でも飲みますか?」
と、誘っていただく。
「いいですね。 でも、お酒なんてあるんですか?」
「俺の荷物の中に、ウィスキーがあるんです。 水割りか、ソーダ割りでどうでしょう」
「わぁ、でしたらなにか、軽いおつまみも用意しましょう」
そう話していると、フレッドがすかさず、
「ウィスキー? 僕も当然、飲んでいいんだよね?」
と、入ってくる。
「仕方ないですね。 貴重な1本ですから、飲み放題ってわけにはいきませんよ」
と、セイさん。
「わかってるよ、寝酒だろ。 おとなしく2、3杯飲んだら寝るさ」
「では、部屋に戻りましょうか」
そうして、また魔法バッグに入っていく、と、またもや後ろの方から
「あ、お主等そうやって、また我にわからん事をする。 いったい、魔法バッグにどうやって入っておるのじゃ!」
と、ヒルダさんの声がしているが、わたしも答える暇なくバッグの中に納まってしまった。
悪かったかな?
でもまぁ、明日にでも説明すればいいだろう。
今は、おつまみの用意をしなくっちゃ。
「ダンジョンから出たよ」
と、声をかける。
犬達が喜んで外に出たい、と、言うので出してあげると、大はしゃぎでまわりじゅうを駆け回る。
下がっていた尻尾も、ヒュンっ、と上にあがって、ぶんぶん振られている。
精神的な落ち込みはないようでよかった、帰ったら、このコ達にも美味しいご飯をだしてあげよう。
とりあえず、自分と犬達に洗浄魔法だけはかけておく。
気分的に、あのダンジョンの空気感を纏っているだけでも、気持ち悪い気がするので。
そうして、ヒルダさんの小屋に戻ると、フレッドがドアをノックする。
少しして、扉が開くが、
「何じゃ、お主達。 途中でやめて帰ってきおったか?」
と、ヒルダさんは、あからさまに不機嫌そうになる。
「いやいや、そんな訳ないでしょう?」
と、フレッド。
「吸血ヒルの唾液腺、きっちり100個持ち帰りましたよ」
と、セイさんが、テーブルの上に唾液腺の入った袋をのせる。
「何じゃと? それにしては早すぎないか? 本当に100個あるんじゃろうな?」
「疑うなら、数えてみればいいじゃないか。 あぁ、ヒルダ、僕達ちょっと休ませてもらうから、マナの魔法バッグを部屋の中に置かせてくれ」
「魔法バッグ? いや、それは構わんが」
ヒルダさんが、唾液腺をとりだして数え始めるより早く、フレッドが、
「マナ、シャワー浴びるから中入れて」
と、言うので、バッグに入ってもらう。
セイさんは、
「マナさんも、お風呂を使われますよね。 俺は後でいいですが、やはり中に入れて頂いてもいいですか?」
と、言うので、やはり入ってもらう。
おふたりのあとに、犬達も入れて、
「ヒルダさん、では、あとのドロップ品に関しては、休ませていただいたあとで検証しますので、まずは失礼します」
と、言って、わたしもバッグの中に入る。
後ろの方で、
「え? ちょ、ちょっとお主等どこへ……」
と、言うヒルダさんの慌てた声が聞こえたが、一刻も早くお風呂に入りたいので、申し訳ないがそのままにする。
家に入って、お風呂に温泉のお湯をためて、ゆっくり体を洗ったら、少し眠らせてもらおう。
お風呂のあとで、犬達にご飯をあげてから、仮眠をとり、きっちり3時間は眠っただろうか。
寝室から出ると、リビングには、セイさんもフレッドも、もう起きてきていた。
「やあ、おはようマナ。 お腹が空いたんだけど、何か食べるものを出してもらっていいかな?」
「おはようございます。 お弁当でいいですか?」
「ああ、助かるよ。 お願いする」
地下の食糧庫に置いてあるお弁当を、適当に3つ取ってきて、リビングのテーブルに置く。
今回は、フレッドの分はハンバーグ、セイさんの分は鶏の照り焼き、わたしの分は白身魚のムニエルのお弁当だった。
それぞれに腹ごしらえをして、食後には紅茶を淹れる。
アニタさんに持たせてもらったお弁当は、本当にどれも美味しくて大助かりだ。
そういえば、コータ達に無事だよ、と手紙くらいは出したいな。
ロレンツォでは、バタバタしていて、そんな余裕はなかったし。
次の街では、お手紙を出せるといいんだけれど。
そんな事を考えながら、お茶を飲んでいると、ひと息ついたフレッドが口を開く。
「さて、落ち着いた所で、ドロップ品の確認をしようか。 ヒルダに渡す前に、こっちで欲しいものは選り分けないとね」
そうして、グルームダンジョンから持ち帰ったドロップ品を、床にずらりと並べる。
数えてみた結果、
蝙蝠の鉤爪78個
蝙蝠の飛膜36個
ゴートサッカーの牙87個
あとは宝箱だが、罠があるものは解除して、それぞれ開けてみると、
ヘマタイト9個
ファイブロライトのキャッツアイが1個
ブラッドストーンが1個
そして、ボスのドロップ宝箱からは、水姪が2個
「この辺の、鉤爪とか牙とかは全部ヒルダにあげよう。 僕達には、換金するくらいにしか用はないし。 それより、水姪が2個もでたのは大きいな。 ヒルダが、あれだけ欲しがってたんだ、何か大きなものと引き換えにしてもらわないと」
フレッドが、ちょっと悪い顔になっている気がする。
「でしたら、世話をするデク人形付きだという、馬小屋をもらいませんか? マナさんの魔法バッグの中に置いてもらえれば、ですけれど」
「おお、それはいいな。 いつも馬達を、玄関に括り付けるだけなのはどうかと思ってはいたんだ。 マナ、もらってもいい?」
「ヒルダさんがくれればですけれど、いいと思います。 バッグの中でも、馬さん達が快適なのはありがたいですもんね」
「OK、じゃあそれで交渉しよう。 あとは、この魔宝石だけど、ヒルダは鑑定もできるから視てもらうとして。 たぶん、ヘマタイトは付与効果なしでも、【身代わり石】として使えるはずだから、追加で、みんなのネックレスを作ってもらおう」
そこまで話して、ちょっと疑問だったので聞いてみる、
「ところで、水姪って何なんでしょう?」
しかし、フレッドもセイさんも首を横に振る。
「さあ? 僕も知らないから、あとでヒルダに聞いてみようか」
そうして、ドロップ品の検証と仕分けを終えて、魔法バッグから、ヒルダさんの小屋へと戻ると、作業中で忙しそうにしていたヒルダさんは、手を止めてこちらを見詰めている。
「やっと出てきおったか。 色々と聞きたい事はあるが、まずは、ヒルの唾液腺100個、間違いなくいただいた。 ご苦労じゃったな」
「いやいや、どういたしまして。 今は作業中だろ、いいよ、気にせず続けて」
と、フレッド。
「大丈夫じゃ。 そろそろ、休憩を取ろうと思っとったところじゃ」
ヒルダさんは、そばにあったタオルで手を拭きながら、こちらに向き直る。
「じゃあ、他のドロップ品についての話をしてもいいかな?」
「むろんじゃ、はようせい」
そこで、みんなテーブルを取り囲んで椅子に腰かける。
「まず、この辺は、全部ヒルダにあげようと思うんだけど」
言いながら、さっきの牙や爪を、ひとまとめにした袋を渡す。
「ふむ、蝙蝠の鉤爪に被膜、ゴートサッカーの牙じゃな。 ありがたくいただこう」
「それと約束の水姪ね」
フレッドは、事もなげに宝箱をテーブルにのせる。
「おぉ! 取れたか! さすがじゃのう」
ヒルダさんは、嬉しそうに宝箱を開いて、中を確かめている。
「ところで、魔宝石がいくつか出たんだけど、視てくれる?」
と、魔宝石をテーブルにゴロゴロと取りだすフレッド。
「ふん、なるほど。 このブラッドストーンは物凄いな、物理・魔法とも防御特大の守護石じゃ。 こっちのファイブロライト・キャッツアイは茶色の色合いに、キャッツアイ効果が美しいの。 じゃが、見た目の美しさだけでなく、警告石じゃな。 危機が迫ると、このキャッツアイが光る効果があるようじゃ。 ヘマタイトは、いくつか魔法防御や物理防御が付いておるようじゃが、これは砕いて、ビーズに加工してネックレスにした方が、使い勝手はいいじゃろうな」
ヒルダさんは、すらすらと鑑定をしてくれる。
水姪のお礼のつもりなのかもしれないが、パッと見ただけで、そこまでわかるのは凄いとしか言いようがない。
フレッドは、満足そうに頷いて聞いていたが、
「じゃあ、その身代わり石のネックレスも追加で作ってくれる? 人用が3個に、わんちゃん用が3個。 あぁ、わんちゃんの1匹は大きく変身するから、全部、魔法素材で頼むね。 ブラッドストーンとファイブロライト・キャッツアイは、それぞれペンダントヘッドにして、身代わり石のネックレスにくっつけといて」
「む。 まぁいいじゃろう」
ヒルダさんは、ちょっと渋々ではあるが引き受けてくれる。
そこまで終わると、フレッドは、さらに宝箱をテーブルの上にのせる。
「その宝箱は、もしや」
と、ヒルダさんが目を見張る。
「今回のボス、つがいだったんだよね」
「そんな、まさか! 2匹とも倒して、両方が宝箱をドロップしたのか? そんな幸運があり得るのか?」
「その、まさかが起こっちゃってさ。 どうする? ヒルダ、こっちの水姪の代わりに何くれる?」
「う、う、う、ううう───ん。 何を渡せば、それに見合うかのぉ」
頭を抱え込んで、悩むヒルダさんに、
「ま、考えといて。 僕達は、頼んだものができ上がるまでは、適当にのんびりさせてもらうからさ」
と、フレッドはそこで交渉を打ち切って、もうひとつの水姪の入った宝箱は仕舞ってしまう。
うんうん唸りながらも、作業に戻っていくヒルダさん。
大量の依頼に、さらになにか、水姪に見合ったものを差し出さなければならないとは、ちょっと気の毒な気もするけれど、水姪って、そんなに価値があるアイテムなんだね。
確かに、あんな酷いダンジョンの最下層まで潜って、さらにあんなグロいボスを2体も倒して、それでも出るかどうかは運次第なシロモノ、わたしなら何を積まれても、もう取りになんて行かないけど。
とりあえず、依頼したアイテムができ上がるまでの数日間は、ここに滞在する事になりそうだし、少しは自炊もした方がいいかも。
そんな風に考えていると、セイさんに、
「マナさん、中途半端に休んだので、すぐには眠れないと思いませんか? ちょっと寝酒でも飲みますか?」
と、誘っていただく。
「いいですね。 でも、お酒なんてあるんですか?」
「俺の荷物の中に、ウィスキーがあるんです。 水割りか、ソーダ割りでどうでしょう」
「わぁ、でしたらなにか、軽いおつまみも用意しましょう」
そう話していると、フレッドがすかさず、
「ウィスキー? 僕も当然、飲んでいいんだよね?」
と、入ってくる。
「仕方ないですね。 貴重な1本ですから、飲み放題ってわけにはいきませんよ」
と、セイさん。
「わかってるよ、寝酒だろ。 おとなしく2、3杯飲んだら寝るさ」
「では、部屋に戻りましょうか」
そうして、また魔法バッグに入っていく、と、またもや後ろの方から
「あ、お主等そうやって、また我にわからん事をする。 いったい、魔法バッグにどうやって入っておるのじゃ!」
と、ヒルダさんの声がしているが、わたしも答える暇なくバッグの中に納まってしまった。
悪かったかな?
でもまぁ、明日にでも説明すればいいだろう。
今は、おつまみの用意をしなくっちゃ。
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