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第二章
ネクロバレー・ダンジョン
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9階層への階段を降りる前に、これまでにドロップしたアイテムの確認をする。
すると、魔宝石に毒の無効効果が3つ、耐性効果が5つでていた。
無効効果の石はフレッド、ハク、ココへ、耐性効果はわたしとセイに2個ずつとミルクがそれぞれもらう。
さらに、目当ての解毒効果のあるエメラルドもいくつか入っていた。
「では、下りるぞ」
と、ヒルダの号令で階段を下りる。
「まずはこっちじゃ」
と、ヒルダがどんどん進んで行く。
すると、ココが、
(イタチさんたち、変になってる)
と言ってくる。
「え? 何だろう。 ヒルダ! ココが、イタチが変になってるって言ってます」
と伝えると、
「うむ、こっちにおるのじゃ」
と、そのまま進む。
ちょっと大きめの空間に出ると、コカトリス2体と沢山の石化したイタチ達がいた。
「イタチは壊さぬように気を付けてくれ! マナ、ケラウノス!」
「はい!」
すぐにケラウノスを両手で持ち、構える。
コカトリスはこちらを見ているが、わたし達が一向に石化しないのを、訝しんでいるようだった。
大きさや姿かたちは、さっきまでのバジリスクとそう大差はないが、コカトリスは全身に羽毛の生えた、巨大な鶏の様だった。
頭の冠部分はトサカのようで、背中の小さな羽も羽毛で覆われている。
ただ、尻尾だけはバジリスク同様にトカゲのような爬虫類のものだ。
すぐに、それぞれにケラウノスを振り下ろす、
「ゼウスの神鳴!」
激しい雷が轟き、雷光が稲光る。
コカトリス達の頭に稲妻が直撃し、ビリビリと感電して火花が散る。
コカトリスは、しばらく痙攣したまま突っ立っていたが、そのまま間もなく絶命してしまった。
「ご苦労。 では、イタチを回収してくれ」
と、ヒルダは淡々と石化したイタチを拾っては、わたしに預けて回る。
「ヒルダ、このイタチはどうするんでしょう?」
「ん? もちろん、持ち帰って石化を解いてから森に帰すのじゃ。 いい働きをしてくれたからの、丁重に扱おう」
よかった、石化は解いてあげられるんだね。
ここで拾えたのは6体だったが、先に進むごとに回収して歩く。
結局9階層だけで、全ての石化したイタチは集められた。
そして倒したコカトリスは7体。
全て、ケラウノスの雷だけで対処できてしまった。
ここでのドロップ品には、コカトリスの羽、クチバシの他に、石化耐性のレッドベリルが出てきた。
今は、コカトリスのタマゴ効果で石化は無効になっているので、全部バッグに仕舞っておく。
「さっきのタマゴは、ここのつがいから取ったのじゃ」
とヒルダ。
「あの角に苔の塊のようなものがあるじゃろ? あれが巣になっておって、タマゴが入っておった」
見ると、確かに緑色の苔の塊のような物体が隅の方にある。
「2体もいたのに、よく取ってこれましたね」
と言うと。
「うむ、やはりお主等にもらった透明マントは便利じゃわ」
とご満悦だ。
10階層に下りると、出てくるコカトリスが2mを超えるほど大きくなる。
ケラウノスの雷でダメージは与えられるが、麻痺してビリビリと感電した状態にしかならない。
痙攣するコカトリスを前に、途方に暮れていると、
「後は任せて!」
と、フレッドが矢でとどめを刺してくれる。
そして、11階層。
ここは、外側から中心部へと、螺旋状に長い廊下が続いていた。
延々ぐるぐると歩いて辿り着いた先には、苔のような緑が盛り上がった巨大な巣があり、その中で羽毛に覆われた何かが寝息を立てている。
それは巨大なコカトリスと、無数のヒナ達だった。
「ココちゃん! みんなに魔法防壁のかけ直しをお願いしますのじゃ。 マナ、鉄壁にブーストしたら、そのままケラウノスで全体に雷攻撃じゃ」
(わかった!)
「はい!」
ココが、みんなをすっぽり覆う大きな魔法防壁をかけ、わたしがブーストして鉄壁にする。
さらにケラウノスを握り締め、横一文字に薙ぎ払う、
「ゼウスの怒り、天雷!」
広範囲に雷鳴が轟き、稲光が炸裂する。
それでもヒナ達の数が減ったくらいで、巨大コカトリスは、一瞬だけバリバリと感電していたが、すぐにブルリと体を身震いさせて立ち上がる。
「グギャギャッ! グギャッ!」
その姿は、全長5mはあろうかという、巨大なものだった。
「ハクちゃん、ヒナ達を蹴散らして下さいなのじゃ! マナは親に雷を連打!」
言いながらヒルダが箒をひと掃きすると、ゴウっと激しい風が巻き起こり、その軌道線上のヒナ達がキラキラとエフェクトを残しながら消えていく。
すぐにハクもとび出していき、駆けるハクに、すかさずココが魔法防壁をかける。
わたしも続いてブーストをかけ、ハクの魔法防壁を鉄壁にすると、そのまま、親コカトリスに雷を連打する。
ケラウノスを振り下ろしながら
「ゼウスの神鳴!」
と叫ぶと、稲光を伴った雷がコカトリスの頭上を襲う。
そうしている間にも、フレッドはコンパウンドボウに矢をつがえ、親コカトリスの片目を射抜く。
「グギャーーー! ギャッ! ギャッ! グギャッ!」
雷で感電しながらも、痛みに叫ぶ親コカトリス。
わたしがケラウノスを振るっている間、沢山の雛達からの攻撃を、セイが全て返り討ちにして防いでくれる。
何度か雷をあびせていると、やっとで麻痺効果が出たようで、全身を硬直させて、小さく痙攣を繰り返しはじめる。
見上げると、雷が何度も直撃した頭がブスブスと焼け焦げて、真っ黒い煙が立ち昇っていく。
さらにフレッドが狙いを定めて、もう片方の目を射抜くと、麻痺しているのにも関わらず、ひと際大きく、
ぶるぶるぶるぶるっ
と、身震いをし、
「ぐっぎゃっ! ギャッギャッギャッギャッ!!!」
と叫びながら、こちらへ倒れ込んでくる。
そこいらのヒナを全て押し潰しながら、
ドドオォォォォッッンっ!!!
と倒れ込み、そのクチバシの先すれすれにいたヒルダの首根っこを、ぐいっとセイが掴んで後ろへ引く。
そのままセイは、剣技発動の青いオーラをゆらゆらと身に纏い、
「 碧巌斬っ!!!」
剣技発動と同時に、
びくんっ、びくんっ
と、のたうっていたコカトリスの首を一刀両断にする。
結局残っていたヒナ達は、ヒルダの箒の風と、ハクが駆け回って蹴散らしてくれたおかげで、全て消え去っていた。
親コカトリスの消えた後には、装飾の美しい宝箱が現れる。
これも調べると、ご丁寧にも石化の罠がついていたが、今は石化無効状態なので気にせず開けてみる。
中身は、ひと際大きなエメラルドカットのレッドベリルが、キラキラと輝きを放っていた。
「おお、これは石化無効効果大じゃ。 しかし、本当にお主等と潜ると、ラッキーがものすごいんじゃな」
と、ヒルダが感心している。
「ミルクちゃん、ありがとうなのじゃ」
そう言って、今回は、みんなの後をついてくるだけだったミルクを撫でてくれる。
ミルクも、尻尾をふりふりと振って嬉しそう。
「さて、じゃあここが最下層という事でいいのかな?」
と、フレッドがコンパウンドボウを仕舞いながら言う。
「いやいや、まだ下があるはずじゃ」
「でも、ここがこのフロア最後の部屋だ。 下への階段は見当たらないようだが」
「うむ。 わんちゃん達、あのコカトリスの巣のアヤしい場所を掘り掘りして下さいなのじゃ」
ヒルダに言われて、犬達が一斉に目をキラーンと光らせて、コカトリスの巣に向かって走る。
一心不乱に巣を掘って、掘って、掘りまくり、どんどん興奮状態になっているみたい。
もう何かを探しているというのも忘れて、遊びに夢中な感じだ。
そうしてあっちこっちと掘りまくって、飛び散った巣の残骸を、ヒルダが箒で掃いて片付けていく。
その間、わたしと男性陣はドロップ品の回収に回る。
ヒナ達からも、結構な数のアイテムがでていた。
その中でも、コカトリスの柔毛は、ヒナからしかドロップしない希少アイテムらしい。
しばらくそうして、犬達の掘り掘りに任せていると、
「やった、階段が出てきたのじゃ」
と、ヒルダの嬉しそうな声。
見ると、ほぼ巣の崩壊した跡に、下の階層への階段が現れていた。
満足気に、ハッ、ハッ、と息を切らしている犬達が、見事に前足を緑色に染めているので、慌てて洗浄で綺麗にする。
ハクは、ちょっと口でもガフガフと苔を噛みとっていたようで、口まで緑だった。
顔を持ち上げて、念入りに全部洗浄で洗っておく。
やっぱり男の子は、こういう時にやることがワイルドだ。
犬達の汚れを落としてから、現れた階段をみんなで降りていくと、雰囲気がこれまでとガラリと変わり、まるで神殿のような佇まいになる。
壁面には燭台が灯り、シンと静まり返った中で石の壁がボウッと浮き上がる。
(声は出さないで、静かにしないとダメなところみたい)
と、ココが注意を促してくれる。
みんなを見回すと、それぞれ頷いているので、テレパシーで全員に伝えてくれたみたい。
しばらく進んで行くと、部屋の真ん中に祭壇のある場所に出る。
石造りの台に精巧な植物のレリーフが施され、サイドには4本の燭台に火が灯っている。
するとその祭壇の向こう側で、ゆらりと影が動いた。
目を凝らすと、姿かたちは人のようなのだが、何かがおかしい。
身にまとっているのは、黒いドレープのある長い胴衣で、ウエストが紐で縛ってあるのが見てとれる。
そして、煌びやかな首飾りが、たまにキラッと光を映す。
しかし、その人物の頭部は、どう見ても人のものではない。
舌をチロチロと覗かせて、鎌首をもたげているコブラのものだ。
その、人だかコブラだかわからない人物は、こちらをしばらくのあいだ黙って見つめていたかと思うと、すうっとおもむろに右手を上げて、ある方向を指し示す。
そちらへ視線を移して見ると、薄暗くてとても分かり難いが、扉があるようだ。
(おじぎして)
ココが、頭に伝えてくる。
慌てて、お辞儀をすると、謎のコブラ頭の人は祭壇の後ろへと下がっていった。
(行こう。 マナ、鍵開けて)
と指示される。
扉へ近づくと、確かに鍵がかかっているので、補助魔法で開錠する。
石造りの重い扉を開けると、さらに階下へと続く階段があった。
今までのものよりも、かなり長いその階段を下りながら、ココに聞いてみる、
「ココ、さっきのは?」
(めるせげるって言ってた。 うるさいのが嫌いなんだって)
「お話ししたの?」
(少しだけ。 えめらるどの板をさがしてるって言ったら、ここの階段を教えてくれた)
「へぇ、親切な人だったんだね」
そんな事を話していると、ようやくフロアに着いたようだ。
そこは、小さな部屋だった。
松明が2本火を灯され、その真ん中にうやうやしく飾られた、黄金の玉座。
さらにその玉座には、古びた遺骸が鎮座している。
そして、その右手に握られているのは、緑色に輝くエメラルドのタブレット。
「おぉ、これがエメラルド・タブレットじゃな」
そう言って、ヒルダが遺骸の手からタブレットを外そうと手を伸ばすと、
『汝、緑玉板を望むのであれば、我の問いに答えよ』
と、地の底から響くような、しわがれた声が低く轟く。
よく見ると遺骸の顔に、デジタル映像が重なっているかのように、生々しい年老いた男性の顔がちらちらと見えるようだ。
一瞬、
「ヒッ!」
とたじろいで、後ろに下がったヒルダだったが、気を取り直したように頭をふるふると振って、もう一度ずいっと前に出る。
「よいじゃろう、何なりと聞くがよい」
ヒルダ、その物言いはこの場ではどうなのかしら。
ハラハラするわたしを余所に、遺骸は言葉を続ける、
『太陽はその父、月はその母、風はそれを胎内に運び入れる。 では、地はその何であるか?』
ヒルダは躊躇いなく答える、
「地はその乳母である」
『……ふむ。 では問う。 全世界におけるあらゆる完成の父はここにある。 それが地に転じるならば、その力は何となるか?』
またも、ヒルダは迷いなく答える、
「その力は、円満となるであろう」
『ふふん……。 では最後に問おう、錬金術の基本原理とは如何に?』
「下なるものは上なるものの如く、上なるものは下なるものの如し、じゃ」
ヒルダは、自信満々に答えを言いきる。
すると、遺骸は満足したように、
『よかろう。 これを持って、さらなる錬金術を極め、我の哲学を完成させるが良い』
そう言ったかと思うと、その骸はボロボロと風化が進んだように崩れ落ちて、あっという間に玉座から消え去ってしまった。
そこに残されたのは、黄金の玉座に鎮座する、美しいエメラルド・タブレットのみだった。
すると、魔宝石に毒の無効効果が3つ、耐性効果が5つでていた。
無効効果の石はフレッド、ハク、ココへ、耐性効果はわたしとセイに2個ずつとミルクがそれぞれもらう。
さらに、目当ての解毒効果のあるエメラルドもいくつか入っていた。
「では、下りるぞ」
と、ヒルダの号令で階段を下りる。
「まずはこっちじゃ」
と、ヒルダがどんどん進んで行く。
すると、ココが、
(イタチさんたち、変になってる)
と言ってくる。
「え? 何だろう。 ヒルダ! ココが、イタチが変になってるって言ってます」
と伝えると、
「うむ、こっちにおるのじゃ」
と、そのまま進む。
ちょっと大きめの空間に出ると、コカトリス2体と沢山の石化したイタチ達がいた。
「イタチは壊さぬように気を付けてくれ! マナ、ケラウノス!」
「はい!」
すぐにケラウノスを両手で持ち、構える。
コカトリスはこちらを見ているが、わたし達が一向に石化しないのを、訝しんでいるようだった。
大きさや姿かたちは、さっきまでのバジリスクとそう大差はないが、コカトリスは全身に羽毛の生えた、巨大な鶏の様だった。
頭の冠部分はトサカのようで、背中の小さな羽も羽毛で覆われている。
ただ、尻尾だけはバジリスク同様にトカゲのような爬虫類のものだ。
すぐに、それぞれにケラウノスを振り下ろす、
「ゼウスの神鳴!」
激しい雷が轟き、雷光が稲光る。
コカトリス達の頭に稲妻が直撃し、ビリビリと感電して火花が散る。
コカトリスは、しばらく痙攣したまま突っ立っていたが、そのまま間もなく絶命してしまった。
「ご苦労。 では、イタチを回収してくれ」
と、ヒルダは淡々と石化したイタチを拾っては、わたしに預けて回る。
「ヒルダ、このイタチはどうするんでしょう?」
「ん? もちろん、持ち帰って石化を解いてから森に帰すのじゃ。 いい働きをしてくれたからの、丁重に扱おう」
よかった、石化は解いてあげられるんだね。
ここで拾えたのは6体だったが、先に進むごとに回収して歩く。
結局9階層だけで、全ての石化したイタチは集められた。
そして倒したコカトリスは7体。
全て、ケラウノスの雷だけで対処できてしまった。
ここでのドロップ品には、コカトリスの羽、クチバシの他に、石化耐性のレッドベリルが出てきた。
今は、コカトリスのタマゴ効果で石化は無効になっているので、全部バッグに仕舞っておく。
「さっきのタマゴは、ここのつがいから取ったのじゃ」
とヒルダ。
「あの角に苔の塊のようなものがあるじゃろ? あれが巣になっておって、タマゴが入っておった」
見ると、確かに緑色の苔の塊のような物体が隅の方にある。
「2体もいたのに、よく取ってこれましたね」
と言うと。
「うむ、やはりお主等にもらった透明マントは便利じゃわ」
とご満悦だ。
10階層に下りると、出てくるコカトリスが2mを超えるほど大きくなる。
ケラウノスの雷でダメージは与えられるが、麻痺してビリビリと感電した状態にしかならない。
痙攣するコカトリスを前に、途方に暮れていると、
「後は任せて!」
と、フレッドが矢でとどめを刺してくれる。
そして、11階層。
ここは、外側から中心部へと、螺旋状に長い廊下が続いていた。
延々ぐるぐると歩いて辿り着いた先には、苔のような緑が盛り上がった巨大な巣があり、その中で羽毛に覆われた何かが寝息を立てている。
それは巨大なコカトリスと、無数のヒナ達だった。
「ココちゃん! みんなに魔法防壁のかけ直しをお願いしますのじゃ。 マナ、鉄壁にブーストしたら、そのままケラウノスで全体に雷攻撃じゃ」
(わかった!)
「はい!」
ココが、みんなをすっぽり覆う大きな魔法防壁をかけ、わたしがブーストして鉄壁にする。
さらにケラウノスを握り締め、横一文字に薙ぎ払う、
「ゼウスの怒り、天雷!」
広範囲に雷鳴が轟き、稲光が炸裂する。
それでもヒナ達の数が減ったくらいで、巨大コカトリスは、一瞬だけバリバリと感電していたが、すぐにブルリと体を身震いさせて立ち上がる。
「グギャギャッ! グギャッ!」
その姿は、全長5mはあろうかという、巨大なものだった。
「ハクちゃん、ヒナ達を蹴散らして下さいなのじゃ! マナは親に雷を連打!」
言いながらヒルダが箒をひと掃きすると、ゴウっと激しい風が巻き起こり、その軌道線上のヒナ達がキラキラとエフェクトを残しながら消えていく。
すぐにハクもとび出していき、駆けるハクに、すかさずココが魔法防壁をかける。
わたしも続いてブーストをかけ、ハクの魔法防壁を鉄壁にすると、そのまま、親コカトリスに雷を連打する。
ケラウノスを振り下ろしながら
「ゼウスの神鳴!」
と叫ぶと、稲光を伴った雷がコカトリスの頭上を襲う。
そうしている間にも、フレッドはコンパウンドボウに矢をつがえ、親コカトリスの片目を射抜く。
「グギャーーー! ギャッ! ギャッ! グギャッ!」
雷で感電しながらも、痛みに叫ぶ親コカトリス。
わたしがケラウノスを振るっている間、沢山の雛達からの攻撃を、セイが全て返り討ちにして防いでくれる。
何度か雷をあびせていると、やっとで麻痺効果が出たようで、全身を硬直させて、小さく痙攣を繰り返しはじめる。
見上げると、雷が何度も直撃した頭がブスブスと焼け焦げて、真っ黒い煙が立ち昇っていく。
さらにフレッドが狙いを定めて、もう片方の目を射抜くと、麻痺しているのにも関わらず、ひと際大きく、
ぶるぶるぶるぶるっ
と、身震いをし、
「ぐっぎゃっ! ギャッギャッギャッギャッ!!!」
と叫びながら、こちらへ倒れ込んでくる。
そこいらのヒナを全て押し潰しながら、
ドドオォォォォッッンっ!!!
と倒れ込み、そのクチバシの先すれすれにいたヒルダの首根っこを、ぐいっとセイが掴んで後ろへ引く。
そのままセイは、剣技発動の青いオーラをゆらゆらと身に纏い、
「 碧巌斬っ!!!」
剣技発動と同時に、
びくんっ、びくんっ
と、のたうっていたコカトリスの首を一刀両断にする。
結局残っていたヒナ達は、ヒルダの箒の風と、ハクが駆け回って蹴散らしてくれたおかげで、全て消え去っていた。
親コカトリスの消えた後には、装飾の美しい宝箱が現れる。
これも調べると、ご丁寧にも石化の罠がついていたが、今は石化無効状態なので気にせず開けてみる。
中身は、ひと際大きなエメラルドカットのレッドベリルが、キラキラと輝きを放っていた。
「おお、これは石化無効効果大じゃ。 しかし、本当にお主等と潜ると、ラッキーがものすごいんじゃな」
と、ヒルダが感心している。
「ミルクちゃん、ありがとうなのじゃ」
そう言って、今回は、みんなの後をついてくるだけだったミルクを撫でてくれる。
ミルクも、尻尾をふりふりと振って嬉しそう。
「さて、じゃあここが最下層という事でいいのかな?」
と、フレッドがコンパウンドボウを仕舞いながら言う。
「いやいや、まだ下があるはずじゃ」
「でも、ここがこのフロア最後の部屋だ。 下への階段は見当たらないようだが」
「うむ。 わんちゃん達、あのコカトリスの巣のアヤしい場所を掘り掘りして下さいなのじゃ」
ヒルダに言われて、犬達が一斉に目をキラーンと光らせて、コカトリスの巣に向かって走る。
一心不乱に巣を掘って、掘って、掘りまくり、どんどん興奮状態になっているみたい。
もう何かを探しているというのも忘れて、遊びに夢中な感じだ。
そうしてあっちこっちと掘りまくって、飛び散った巣の残骸を、ヒルダが箒で掃いて片付けていく。
その間、わたしと男性陣はドロップ品の回収に回る。
ヒナ達からも、結構な数のアイテムがでていた。
その中でも、コカトリスの柔毛は、ヒナからしかドロップしない希少アイテムらしい。
しばらくそうして、犬達の掘り掘りに任せていると、
「やった、階段が出てきたのじゃ」
と、ヒルダの嬉しそうな声。
見ると、ほぼ巣の崩壊した跡に、下の階層への階段が現れていた。
満足気に、ハッ、ハッ、と息を切らしている犬達が、見事に前足を緑色に染めているので、慌てて洗浄で綺麗にする。
ハクは、ちょっと口でもガフガフと苔を噛みとっていたようで、口まで緑だった。
顔を持ち上げて、念入りに全部洗浄で洗っておく。
やっぱり男の子は、こういう時にやることがワイルドだ。
犬達の汚れを落としてから、現れた階段をみんなで降りていくと、雰囲気がこれまでとガラリと変わり、まるで神殿のような佇まいになる。
壁面には燭台が灯り、シンと静まり返った中で石の壁がボウッと浮き上がる。
(声は出さないで、静かにしないとダメなところみたい)
と、ココが注意を促してくれる。
みんなを見回すと、それぞれ頷いているので、テレパシーで全員に伝えてくれたみたい。
しばらく進んで行くと、部屋の真ん中に祭壇のある場所に出る。
石造りの台に精巧な植物のレリーフが施され、サイドには4本の燭台に火が灯っている。
するとその祭壇の向こう側で、ゆらりと影が動いた。
目を凝らすと、姿かたちは人のようなのだが、何かがおかしい。
身にまとっているのは、黒いドレープのある長い胴衣で、ウエストが紐で縛ってあるのが見てとれる。
そして、煌びやかな首飾りが、たまにキラッと光を映す。
しかし、その人物の頭部は、どう見ても人のものではない。
舌をチロチロと覗かせて、鎌首をもたげているコブラのものだ。
その、人だかコブラだかわからない人物は、こちらをしばらくのあいだ黙って見つめていたかと思うと、すうっとおもむろに右手を上げて、ある方向を指し示す。
そちらへ視線を移して見ると、薄暗くてとても分かり難いが、扉があるようだ。
(おじぎして)
ココが、頭に伝えてくる。
慌てて、お辞儀をすると、謎のコブラ頭の人は祭壇の後ろへと下がっていった。
(行こう。 マナ、鍵開けて)
と指示される。
扉へ近づくと、確かに鍵がかかっているので、補助魔法で開錠する。
石造りの重い扉を開けると、さらに階下へと続く階段があった。
今までのものよりも、かなり長いその階段を下りながら、ココに聞いてみる、
「ココ、さっきのは?」
(めるせげるって言ってた。 うるさいのが嫌いなんだって)
「お話ししたの?」
(少しだけ。 えめらるどの板をさがしてるって言ったら、ここの階段を教えてくれた)
「へぇ、親切な人だったんだね」
そんな事を話していると、ようやくフロアに着いたようだ。
そこは、小さな部屋だった。
松明が2本火を灯され、その真ん中にうやうやしく飾られた、黄金の玉座。
さらにその玉座には、古びた遺骸が鎮座している。
そして、その右手に握られているのは、緑色に輝くエメラルドのタブレット。
「おぉ、これがエメラルド・タブレットじゃな」
そう言って、ヒルダが遺骸の手からタブレットを外そうと手を伸ばすと、
『汝、緑玉板を望むのであれば、我の問いに答えよ』
と、地の底から響くような、しわがれた声が低く轟く。
よく見ると遺骸の顔に、デジタル映像が重なっているかのように、生々しい年老いた男性の顔がちらちらと見えるようだ。
一瞬、
「ヒッ!」
とたじろいで、後ろに下がったヒルダだったが、気を取り直したように頭をふるふると振って、もう一度ずいっと前に出る。
「よいじゃろう、何なりと聞くがよい」
ヒルダ、その物言いはこの場ではどうなのかしら。
ハラハラするわたしを余所に、遺骸は言葉を続ける、
『太陽はその父、月はその母、風はそれを胎内に運び入れる。 では、地はその何であるか?』
ヒルダは躊躇いなく答える、
「地はその乳母である」
『……ふむ。 では問う。 全世界におけるあらゆる完成の父はここにある。 それが地に転じるならば、その力は何となるか?』
またも、ヒルダは迷いなく答える、
「その力は、円満となるであろう」
『ふふん……。 では最後に問おう、錬金術の基本原理とは如何に?』
「下なるものは上なるものの如く、上なるものは下なるものの如し、じゃ」
ヒルダは、自信満々に答えを言いきる。
すると、遺骸は満足したように、
『よかろう。 これを持って、さらなる錬金術を極め、我の哲学を完成させるが良い』
そう言ったかと思うと、その骸はボロボロと風化が進んだように崩れ落ちて、あっという間に玉座から消え去ってしまった。
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その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
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