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第二章
メイヤード侯爵家からの手紙
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その後、しばらくはオズワルドさんの小屋で、何度か気配消滅の術のかけ直しをしつつ、王都の情報を、ヒルダの実家である、メイヤード侯爵家からの手紙で受け取る、という日々が続いた。
フレッドとセイが捕えられてすぐに、王都では王より譲位の意向あり、とおふれが出たそうだ。
巷では、譲位されるのはこれまで多くの人が予想していたフレデリック殿下ではなく、第1王子であるアーティボルト殿下である、と噂されているとの事。
また政治的にも変化が起きているそうで、すでに財務関係のトップと軍のトップの入れ替えが成され、これまで、いくつかの大貴族が持ち回りでその任に就くのがならわしだったため、大きく不満や不安感が取り巻いているが、アーティボルト殿下とその親衛隊により押さえつけられ、表立って意見する者はいないそうだ。
そして、これまでの財務と軍のトップの役職にいた貴族は、どちらも急に健康上の理由で退くという名目で、自宅療養に入っているらしい。
あの時の彼等の非情さを考えると、ふたりの貴族が生きて自宅に戻れただけでも良かったのだろうな、と思ってしまう。
それにしても、財務と軍。
まさに金と力を掌握したという事か。
まだ、王都での市井の民の生活などには変化はないが、中央では空気が緊張感に包まれているらしい。
次の宮廷議会では予算が話し合われる予定だが、これまで通りにはいかないであろうと、どこの部署でも戦々恐々としているのだという。
フレデリック殿下とセイについては、どこにいるのか、どういった状態なのか、探りを入れて調べて下さるそうだ。
次に、メイヤード侯爵家からの手紙が届いたのは、2週間後だった。
ヒルダを気遣う文章が続いたあと、どうも王都は不穏な状態がますます色濃くなっているので、無理に戻らず、しばらくはオズワルド師匠のところに留まるように、と言ってきたそうだ。
これには、
「今まで、帰ってこいとしか言われた事がなかったのに、師匠の元に留まれなどと、天地がひっくり返ったわ」
と、ヒルダは驚いていたが、それほどの状況になりつつあるのだろう。
先日の、予算が話し合われるはずの宮廷議会では、混迷を極めるかと思われたのに、すんなりと予算案は通ってしまったそうだ。
どうも根回しが事前に行われていたようで、どこも異を唱える部署がなかったそう。
しかし、どう考えても予算の組み方がおかしかったと。
一番の変化は、軍の予算がこれまでからすると飛びぬけて増えていた。
あれではまるで戦争準備のための予算である、と。
アーティボルト殿下は、どこかの国との軍事的衝突を見越しているのかもしれない、との予測で、中央はざわついているらしい。
戦争、本当に起こすつもりなのだろうか。
またセイについては、どうやら王城の中に囚われているらしい。
フレッドは、未だ対外的にはセフィーロ王国に留学中という名目で、どこにいるのかはわかっていないそうだ。
だったら、セイだけでもすぐに助けに行きたい。
オズワルドさんにそう相談したが、首を縦には振ってもらえなかった。
セイの奪還が成功したとしても、相手の警戒を強める結果にしかならない。
それではフレッドへの警備が厳しくなり、取り戻せなくなる恐れがある。
国としてのロランの行く末を考えると、どうしてもフレッドに死なれては困るのだ、と。
また、あの襲撃された日の馬車の乗客は、今頃になって、行方不明であると騒ぎになっているそうだ。
手紙によると、事故か事件かは不明だが、乗客たちはもう生きてはいないだろう、と囁かれている、と。
あのみかんをくれた老婦人も、その後に必死で治療した男性も、もうこの世にはいないという事か。
何て酷い……。
オズワルドさんは、
「その乗客達を口封じに始末したのなら、マナ殿とヒルダも、奴等は死んだと思っている可能性が高い。 セイ殿だけを王城に捕らえているのは、第2王子派のあぶり出しのためかもしれません。 今、下手に手出しをするよりも、フレデリック殿下の情報を掴んでからの方がいいでしょう」
事が動いたのは、それからさらに2週間が経とうとしている頃だった。
メイヤード侯爵家からの手紙は、これまでヒルダの父親であるメイヤード侯爵自らがしたためていたのが、今回はヒルダの兄からのものになっていた。
フレデリック殿下は、王家の別荘であるハーキュリー邸に幽閉されている事が発覚し、それに反発したメイヤード侯爵をはじめとした第2王子派の貴族達が、連合を組んで王に直訴に向かったのだという。
しかし、王に目通りする事は叶わず、反対に、第2王子とその後ろ盾のセフィーロ王国と組んで王に仇を成す革命派であると断罪され、全員が拘束されたというのだ。
このままでは、今回拘束された貴族家は爵位の剥奪、お家取り潰しの可能性もあるのではないかという。
「第2王子派の、あぶり出しに成功した?」
わたしがそう言うと、オズワルドさんも頷いた。
黙って聞いていたヒルダは
「師匠、我が実家であるメイヤード家も、これで渦中の当事者となりました。 今こそ動く時では?」
と、真剣な顔で問いただす。
「まぁ、待ちなさい」
手紙の続きには、貴族たちが拘束されて3日の後、フレデリック殿下と第2王子派の貴族による革命の鎮圧が成された事、そして、アーティボルト殿下の正式な即位の決定が通達された。
アーティボルト殿下の即位、戴冠式は、ロラン国の夏祭りである 『千人祭り』 の只中に盛大に行われる予定である事。
革命派の面々の処罰はそのあとに執り行われるであろう、という事等が、淡々と書き連ねてあった。
「その千人祭りとは?」
と聞くと、
「ロランの伝統的な祭りです。 ロランの魔物に感謝を捧げつつ、夏から秋にかけての収穫を祝う祭りで、8月半ばの5日間、大々的に行われる行事です。 名前の通り、男女合わせて千人の人々が王都の広場に集い、踊りを披露します」
「その時に戴冠式を行うと」
「祭りのあとで、フレデリック殿下と、今回、拘束された貴族は処刑されるのでしょうな」
「その前に、助け出さないと……」
「ふむ。 マナ殿、今回やっとフレデリック殿下の幽閉先が判明致しました。 しかし、殿下はハーキュリー邸に、セイは王城のおそらく牢に囚われている。 片方ずつ順番に奪還するのでは、あとの片方の警備が厳しくなる、もしくは早々に殺されてしまう可能性も高まりますな」
「では、どうしたら」
「二手に分かれて、同時に奪還するしかないでしょう」
「同時に奪還、ですか」
そんな事が、できるのだろうか。
「マナ殿は犬達と共に、王城のセイと、今回捕らわれた貴族達の解放をお願いしたい。 わしとヒルダは、ハーキュリー邸のフレデリック殿下の救出に向かいましょう」
「オズワルドさんも、出向かれるのですか?」
びっくりして、大きな声が出てしまう。
「わしも歩くのは困難とは言え、まだまだ腕は鈍ってはおりませんのでな。 流石に、今回ばかりは見守っているだけという訳にも行きません。 おそらく、アーティボルト殿下は即位して、フレデリック殿下を亡き者にしたあと、その革命を背後で仕組んだとして、セフィーロ王国に宣戦布告するでしょう。 国力の差があり過ぎるので正気の沙汰ではないのですが、今の殿下は、すでに正気ではないのかもしれませんな」
「戦争になるんでしょうか」
「そうなったら、ロランは滅びるでしょう。 そんな事を容認してはいけません。 何としてでもフレデリック殿下をお助けして、アーティボルト殿下の思惑を阻止しなければ」
「そうですね」
国が滅びる。
そんな事態を招くなんて、一国の王子としてやはりおかしい。
でもあの時、躊躇なく馬車の人々を傷付け、ヒルダに致命傷を負わせ、最終的には口封じに国民である馬車の乗客の命を奪った第1王子。
彼は、もうとっくに当たり前の状態ではないのだ。
アーティボルト王子は、このロランの国を滅ぼそうとしている。
そう考えると、つじつまが合ってしまう。
昔話の魔物の『人を千人よこせ』という要求と、『王様と第1王子が魔物に洗脳されている』と言うフレッドの言い分を突き詰めると、魔物は、増え過ぎた人を今度こそ減らそうとしているって事なのだろうか。
その手段が戦争であるなら。
そこまで考えて、背筋がゾクリとする。
つじつまが合い過ぎる。
そんな風に考えていると、
「師匠、我も王城に行きたいです。 父上が捕らわれているのですから、助けて差し上げなければ」
とヒルダが言う。
自分の父親なのだから、そう思うのも当然だろう。
しかし、オズワルドさんは、頑としてそれを認めなかった。
「如何にアーティボルト殿下が軍を把握しようとも、フレデリック殿下の警備に軍の多くを割く事はないでしょう。 やはり王城の方が軍の詰め所もありますし、警備も固いので多勢に無勢となる可能性が高い。 しかしマナ殿とファリニシュを始めとした犬達ならば、何とかできると踏んでおります。 逆にフレデリック殿下の幽閉先は、少数精鋭が守りを固めている事でしょう。 それこそ、我等、錬金術師の腕の見せ所となるであろうよ」
そう言っていたが、たぶん、前回のヒルダの負った外傷性ショックを思うと、ご自身で弟子を守りたいのだろうな、と思う。
「それに、ヒルダには、弟子としてわしの足になってもらわねばならん」
そう言って微笑むオズワルドさんに、
「えぇー、我は足の役割のために行くのですかー?」
と、むくれるヒルダ。
「あとは、オズモワールがどちらにいるのか分からぬが、プラヴァシの守護を得たマナ殿も、奴の師匠であったこのわしも、互角に戦えると思っておりますのでな」
オズモワール、あの指をパチンとはじくだけで、人をあっという間に傷付ける事ができる、悪魔との契約者。
あの時は、空中に張り付けられたヒルダを降ろしてあげる事さえできなかったのに、本当にわたしが互角にやり合えるのだろうか?
そう考えると同時に、ふわりと胸の真ん中から少しだけ右にずれた辺りに、じんわりとした暖かさが蘇る。
あの光達の囁きが、そこにあるのがわかる。
ありがとうと、助けたい。
その思いが交じり合った、あの時の安心感。
そうだ、わたしは一人きりで戦うんじゃない。
たくさんの小さな太陽の光、その思いと一緒に、正しいと信じる事を成すために立ち向かうんだった。
改めて思いを決すると、わたしは
「では、計画をたてましょう」
と、オズワルドさんとヒルダに向かって言った。
フレッドとセイが捕えられてすぐに、王都では王より譲位の意向あり、とおふれが出たそうだ。
巷では、譲位されるのはこれまで多くの人が予想していたフレデリック殿下ではなく、第1王子であるアーティボルト殿下である、と噂されているとの事。
また政治的にも変化が起きているそうで、すでに財務関係のトップと軍のトップの入れ替えが成され、これまで、いくつかの大貴族が持ち回りでその任に就くのがならわしだったため、大きく不満や不安感が取り巻いているが、アーティボルト殿下とその親衛隊により押さえつけられ、表立って意見する者はいないそうだ。
そして、これまでの財務と軍のトップの役職にいた貴族は、どちらも急に健康上の理由で退くという名目で、自宅療養に入っているらしい。
あの時の彼等の非情さを考えると、ふたりの貴族が生きて自宅に戻れただけでも良かったのだろうな、と思ってしまう。
それにしても、財務と軍。
まさに金と力を掌握したという事か。
まだ、王都での市井の民の生活などには変化はないが、中央では空気が緊張感に包まれているらしい。
次の宮廷議会では予算が話し合われる予定だが、これまで通りにはいかないであろうと、どこの部署でも戦々恐々としているのだという。
フレデリック殿下とセイについては、どこにいるのか、どういった状態なのか、探りを入れて調べて下さるそうだ。
次に、メイヤード侯爵家からの手紙が届いたのは、2週間後だった。
ヒルダを気遣う文章が続いたあと、どうも王都は不穏な状態がますます色濃くなっているので、無理に戻らず、しばらくはオズワルド師匠のところに留まるように、と言ってきたそうだ。
これには、
「今まで、帰ってこいとしか言われた事がなかったのに、師匠の元に留まれなどと、天地がひっくり返ったわ」
と、ヒルダは驚いていたが、それほどの状況になりつつあるのだろう。
先日の、予算が話し合われるはずの宮廷議会では、混迷を極めるかと思われたのに、すんなりと予算案は通ってしまったそうだ。
どうも根回しが事前に行われていたようで、どこも異を唱える部署がなかったそう。
しかし、どう考えても予算の組み方がおかしかったと。
一番の変化は、軍の予算がこれまでからすると飛びぬけて増えていた。
あれではまるで戦争準備のための予算である、と。
アーティボルト殿下は、どこかの国との軍事的衝突を見越しているのかもしれない、との予測で、中央はざわついているらしい。
戦争、本当に起こすつもりなのだろうか。
またセイについては、どうやら王城の中に囚われているらしい。
フレッドは、未だ対外的にはセフィーロ王国に留学中という名目で、どこにいるのかはわかっていないそうだ。
だったら、セイだけでもすぐに助けに行きたい。
オズワルドさんにそう相談したが、首を縦には振ってもらえなかった。
セイの奪還が成功したとしても、相手の警戒を強める結果にしかならない。
それではフレッドへの警備が厳しくなり、取り戻せなくなる恐れがある。
国としてのロランの行く末を考えると、どうしてもフレッドに死なれては困るのだ、と。
また、あの襲撃された日の馬車の乗客は、今頃になって、行方不明であると騒ぎになっているそうだ。
手紙によると、事故か事件かは不明だが、乗客たちはもう生きてはいないだろう、と囁かれている、と。
あのみかんをくれた老婦人も、その後に必死で治療した男性も、もうこの世にはいないという事か。
何て酷い……。
オズワルドさんは、
「その乗客達を口封じに始末したのなら、マナ殿とヒルダも、奴等は死んだと思っている可能性が高い。 セイ殿だけを王城に捕らえているのは、第2王子派のあぶり出しのためかもしれません。 今、下手に手出しをするよりも、フレデリック殿下の情報を掴んでからの方がいいでしょう」
事が動いたのは、それからさらに2週間が経とうとしている頃だった。
メイヤード侯爵家からの手紙は、これまでヒルダの父親であるメイヤード侯爵自らがしたためていたのが、今回はヒルダの兄からのものになっていた。
フレデリック殿下は、王家の別荘であるハーキュリー邸に幽閉されている事が発覚し、それに反発したメイヤード侯爵をはじめとした第2王子派の貴族達が、連合を組んで王に直訴に向かったのだという。
しかし、王に目通りする事は叶わず、反対に、第2王子とその後ろ盾のセフィーロ王国と組んで王に仇を成す革命派であると断罪され、全員が拘束されたというのだ。
このままでは、今回拘束された貴族家は爵位の剥奪、お家取り潰しの可能性もあるのではないかという。
「第2王子派の、あぶり出しに成功した?」
わたしがそう言うと、オズワルドさんも頷いた。
黙って聞いていたヒルダは
「師匠、我が実家であるメイヤード家も、これで渦中の当事者となりました。 今こそ動く時では?」
と、真剣な顔で問いただす。
「まぁ、待ちなさい」
手紙の続きには、貴族たちが拘束されて3日の後、フレデリック殿下と第2王子派の貴族による革命の鎮圧が成された事、そして、アーティボルト殿下の正式な即位の決定が通達された。
アーティボルト殿下の即位、戴冠式は、ロラン国の夏祭りである 『千人祭り』 の只中に盛大に行われる予定である事。
革命派の面々の処罰はそのあとに執り行われるであろう、という事等が、淡々と書き連ねてあった。
「その千人祭りとは?」
と聞くと、
「ロランの伝統的な祭りです。 ロランの魔物に感謝を捧げつつ、夏から秋にかけての収穫を祝う祭りで、8月半ばの5日間、大々的に行われる行事です。 名前の通り、男女合わせて千人の人々が王都の広場に集い、踊りを披露します」
「その時に戴冠式を行うと」
「祭りのあとで、フレデリック殿下と、今回、拘束された貴族は処刑されるのでしょうな」
「その前に、助け出さないと……」
「ふむ。 マナ殿、今回やっとフレデリック殿下の幽閉先が判明致しました。 しかし、殿下はハーキュリー邸に、セイは王城のおそらく牢に囚われている。 片方ずつ順番に奪還するのでは、あとの片方の警備が厳しくなる、もしくは早々に殺されてしまう可能性も高まりますな」
「では、どうしたら」
「二手に分かれて、同時に奪還するしかないでしょう」
「同時に奪還、ですか」
そんな事が、できるのだろうか。
「マナ殿は犬達と共に、王城のセイと、今回捕らわれた貴族達の解放をお願いしたい。 わしとヒルダは、ハーキュリー邸のフレデリック殿下の救出に向かいましょう」
「オズワルドさんも、出向かれるのですか?」
びっくりして、大きな声が出てしまう。
「わしも歩くのは困難とは言え、まだまだ腕は鈍ってはおりませんのでな。 流石に、今回ばかりは見守っているだけという訳にも行きません。 おそらく、アーティボルト殿下は即位して、フレデリック殿下を亡き者にしたあと、その革命を背後で仕組んだとして、セフィーロ王国に宣戦布告するでしょう。 国力の差があり過ぎるので正気の沙汰ではないのですが、今の殿下は、すでに正気ではないのかもしれませんな」
「戦争になるんでしょうか」
「そうなったら、ロランは滅びるでしょう。 そんな事を容認してはいけません。 何としてでもフレデリック殿下をお助けして、アーティボルト殿下の思惑を阻止しなければ」
「そうですね」
国が滅びる。
そんな事態を招くなんて、一国の王子としてやはりおかしい。
でもあの時、躊躇なく馬車の人々を傷付け、ヒルダに致命傷を負わせ、最終的には口封じに国民である馬車の乗客の命を奪った第1王子。
彼は、もうとっくに当たり前の状態ではないのだ。
アーティボルト王子は、このロランの国を滅ぼそうとしている。
そう考えると、つじつまが合ってしまう。
昔話の魔物の『人を千人よこせ』という要求と、『王様と第1王子が魔物に洗脳されている』と言うフレッドの言い分を突き詰めると、魔物は、増え過ぎた人を今度こそ減らそうとしているって事なのだろうか。
その手段が戦争であるなら。
そこまで考えて、背筋がゾクリとする。
つじつまが合い過ぎる。
そんな風に考えていると、
「師匠、我も王城に行きたいです。 父上が捕らわれているのですから、助けて差し上げなければ」
とヒルダが言う。
自分の父親なのだから、そう思うのも当然だろう。
しかし、オズワルドさんは、頑としてそれを認めなかった。
「如何にアーティボルト殿下が軍を把握しようとも、フレデリック殿下の警備に軍の多くを割く事はないでしょう。 やはり王城の方が軍の詰め所もありますし、警備も固いので多勢に無勢となる可能性が高い。 しかしマナ殿とファリニシュを始めとした犬達ならば、何とかできると踏んでおります。 逆にフレデリック殿下の幽閉先は、少数精鋭が守りを固めている事でしょう。 それこそ、我等、錬金術師の腕の見せ所となるであろうよ」
そう言っていたが、たぶん、前回のヒルダの負った外傷性ショックを思うと、ご自身で弟子を守りたいのだろうな、と思う。
「それに、ヒルダには、弟子としてわしの足になってもらわねばならん」
そう言って微笑むオズワルドさんに、
「えぇー、我は足の役割のために行くのですかー?」
と、むくれるヒルダ。
「あとは、オズモワールがどちらにいるのか分からぬが、プラヴァシの守護を得たマナ殿も、奴の師匠であったこのわしも、互角に戦えると思っておりますのでな」
オズモワール、あの指をパチンとはじくだけで、人をあっという間に傷付ける事ができる、悪魔との契約者。
あの時は、空中に張り付けられたヒルダを降ろしてあげる事さえできなかったのに、本当にわたしが互角にやり合えるのだろうか?
そう考えると同時に、ふわりと胸の真ん中から少しだけ右にずれた辺りに、じんわりとした暖かさが蘇る。
あの光達の囁きが、そこにあるのがわかる。
ありがとうと、助けたい。
その思いが交じり合った、あの時の安心感。
そうだ、わたしは一人きりで戦うんじゃない。
たくさんの小さな太陽の光、その思いと一緒に、正しいと信じる事を成すために立ち向かうんだった。
改めて思いを決すると、わたしは
「では、計画をたてましょう」
と、オズワルドさんとヒルダに向かって言った。
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