街の小さな交番

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3人目「飲酒運転」

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「友人君、最近変わったな。なんというか自分の中で信念が固まったというか」

先輩の唐突なボヤきに私はドキッとした。丁度同じことを考えていたからだ。珍しく街の小さな交番には静寂が訪れていた。カッコつけずに言うなれば暇だった。


[ザザッ....〇〇町〇〇丁目でひき逃げ事件が発生。容疑者は酒に酔っている。担当警察官によるアルコール検査を振りほどき車で逃走中。応援を要請する ]

無線で連絡が入る。

「車を向かわせろ。俺らの車体をぶつけてでも止めてやれ」

友人は運転席に座る部下にそう言った。

「へぇ、恐ろしいことを言いますね。」

そんなことを話しながら部下は現場に向けてハンドルをきる。事件現場はそう遠くはなく車内での無言の時間は数分に留まった。唐突に前の道路から逃走車が向かってくる。

「とんでもない勢いで曲がってきましたよ先、ッ!、」

部下の言葉の途中で窓から顔を出した友人が逃走車に向けて発砲する。銃弾はフロントガラスを貫き容疑者の頭をも貫いた。逃走車はその場で回転しながら停止した。  部下が呆気に取られて車を停めると友人は車から降り、逃走車のドアをこじ開け、既に動かなくなった容疑者を引っ張り出し、後から追いかけてきた警察官達に引き渡した。車に戻った友人を乗せて部下は警察署への帰路に着く。

「先輩、、何してるんですか、」

あまりの重たい空気に耐えきれなくなった部下が口を開く。

「あの車、放っておいたらさらに何人殺したと思う」

友人は逆に問いかけた

「だからって、なにもあんなこと、」

後輩は言葉に詰まりながら話した

「体当たりしたかったのか?察してくれ、お前を守るという意味でもの行動だ」

部下は何も言い返すことが出来なくなりスピードを上げた。


「結局友人君の判断は適切ということで処理されたようだ。難しいところだな」

小さな交番での静寂は長く感じた。先輩の言葉に我に返った私は素っ頓狂な返事を返したのだと思う。記憶がない。

交番での勤務を終え、帰路に着いた私の前に1台の車がとまった。

「明日休みだろ。飲みに行かないか」

前の崖で見た目とは違う、いつもの無邪気な目をした友人がそこに居た。

「いいよ、どうせ暇だし」

その目に安心して誘いを承諾した。聞きたいことも色々あるし丁度良いと思った。友人の車に乗り、飲み屋街を目指す。その道のりで改めて私の務める交番のある場所の田舎具合を実感する。大きな山を見つめていると制限速度より余裕を持って走っている車が遅く感じる。この仕事をしていなければ私も友人ももっとスピードを出していたであろう道。気づかないだけで友人だけでなく、私も変わったんだろうか、などと考えているとネオン輝く飲み屋街に到着していた。

「何してるんだー早く降りてこいよ」

友人はいつの間にか車から降りていた。私も慌てて車を降りる。飲み屋街は酔っ払いで溢れかえっていた。

「まるで酔ってない俺らがおかしな奴みたいな雰囲気だな」

何故友人がそんなことを言ったのか理解できなかったが、適当に返事をして2人で居酒屋に入っていった。友人は車もあるのでノンアルコールビールをどんどん空けていった。面白くないなと思いながら私はビールを飲んで他愛もない話をした。
帰り道の車内で友人が真面目な声でよく分からない事を言い始めた。

「俺は酔っていないはずなのに、周りからは変な目で見られるんだ。」

私は酒のせいもあってか、これを軽くとらえて適当に返してしまった。

「ノンアルで酔ってるのか?」 

友人は暫く考えた後に

「俺が飲酒運転をしてるとでも言いたいのか」

と、だけ答えた。今思えばこの時真面目に話を聞いてやれば良かったのだと思う。戻しようの無いくらいまでにこの瞬間歯車が狂ってしまった。


あれから暫くたったある日、いつも通りの静かな交番。そんな静寂の中に騒音が発生する。金属のきしむ音、ペダルを荒々しくこぐ音、それが交番の近くで倒されていっそう大きな音をたてたかと思うと今度は慌ただしい足音が響く。交番に飛び込んできたのは先輩だった。

「どうしたんですか、そんなに慌てて」

私が先輩に問うと先輩は一息飲み込んでこう答えた。

「〇〇警察署の署長が射殺された。」

私は顔をしかめた。確かに大事ではある。しかしそこまで慌てる理由が分からない。先輩の顔を改めて伺うと何か言いたそうにしている。どうやら本当に伝えたいことはこの後らしい。

「もしかして犯人が知り合い、とかですか」

先輩はこれまでになく怖い顔で言った

「友人君がやったんだ」 

一瞬何を言っているのか理解できなかった

「へぇ、友人が」  

素っ頓狂な答えを返した私だが、それを理解した時には目の前が歪んでおり、私は気を失った
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