自伝であり遺書である。

とまと

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6話

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某掲示板サイト
特設!【トット氏を暖かく見守る会】
8月○日
F局 19:00 ~『身近なマジシャン頂上決戦!』にてトット氏出演決定!





ビスまる子
「ちょwトット氏やらかしてるwwww」

サルマール人
「ガチガチでしたねw」

サブイボ氏
「あかん!身内の失敗見てるみたいでめっちゃはずい!!」

明太子リスト
「あの人ティッシュ好きすぐる笑!」

新鮮な組
「がははは!流石はトット氏、我らの期待を裏切りませんなっ!」

空白
「実質1分位しか出てないww」

PPv
「緊張してたのかな??様子変だったね」

明太子リスト
「放送事故レベル」

母からオカカ
「出てきた時の愛想笑い気持ちわりぃな!」

亀吉代打
「四足歩行」

カール1世
@PPv
「変でしたね!挙動不審だったし」

正すタダシ
「本日急上昇ワード1位、トット氏薬物疑惑」

ノータリーズカフェ
@正すタダシ
「やめなさい」

ロリポップロリポップ
「ミーちゃん出ない…グスンっ」

祖父リーズ
「流石ベテラン司会者、上手い事誤魔化してたな」

チキンとミート
「明日の配信が楽しみ♪」

亀吉代理
「除菌消臭!!」

雄チキン
「う○こ漏れそうだったとか笑?」

大空つかさ
「録画した、10回は抜けるwww」

鉄 コウタ
「ははっ!ホモサピニッシュにしては良くやった方だな!!」

サブイボ氏
「落ち込んどるやろな~、明日は励ましたるか!それと亀吉代理スベっとるから自重して」

PPv
「しかしドンドン登録者数伸びてるな~、トットさんもお金持ちの仲間入りか」

いつもココから
@PPv
「ほんと、凄い事なってますね。トレンド1位にも入ってますよ」

JK代表おばさん
「そんなトット氏が好き♡」

明太子リスト
「トットさんのゴールはどこなんですかね?」

佐川遅便
@明太子リスト
「さぁ笑?」










通路を足早に進む、エレベーターに乗り込み控え室のある4階のボタンを押す。

ガンっ!誰かの手が挟まり閉まりかけのドアが開く。

「はぁ! はぁ! トットさん、はぁ!
大丈夫ですか??」

息を切らせ亀吉が入ってくる、亀吉が入りきると閉まるのボタンを連打する。

「…そのう、ごめんなさい!私が本番前に余計な話をしたせいで…」

狭い空間の中で、膝に顔が付きそうな程上半身を折り曲げ謝る。

「いえいえ!気にしないで下さい。多分テレビが性に合ってないだけで、亀吉さんのせいじゃないですよ!ちょっと背伸びし過ぎちゃいましたね」

カラカラと愛想の無い笑い声を出す。

「折角の亀吉さんの番組を台無しにしちゃって申し訳ありません!」

ふと我に返り謝る。ペコリと頭を少し下げまたドアの方を向く。

エレベーターのドアが開き、足早に通路を進む。後ろには亀吉がついて来ていた。トット様と書かれた控え室に着くと急いで扉を開ける。トットはテーブルの上に置かれた自分の携帯電話をサッと引き寄せる。液晶を確認すると着信が一件、ジジからだった。

「えーっとえーっと…」

ジジからの着信は無視し、急いでカカの番号を出す。数度の呼び出し音の後、カカの声が耳に届く。

「ちょっとあれなに??久しぶりに大声で笑ったんだけど」

いつものカカの声に、安堵する。ポタポタと身体中に付けた重りが、一つまた一つと落ちていく様だ。

「ああ!ああ!ちょっと緊張しちゃって。ミーは今何してるの??」

ふーんと声が聞こえ、ミーにトトさんだよと言う。ガサゴソと音がしてミーが電話に出る

「トトっ?いまごはんたべてた!てれびでてたねー!みんなびっくりしてたねー!」

モゴモゴと食べながら喋るミー。御行儀が悪いよと言ってミーにお茶を飲ませるカカ。

「ミーがねー!あれトトがトイレいくときのかおだーっていったらねー、カカがすっごくわらってたんだよー!」

電話の向こうで2人の笑い声が聞こえる。
そうかそうかと言って話しを聞き、直ぐに帰るからと言う。切る間際カカが「大丈夫?」と聞いてくる。「全然問題ないよ」と言って電話を切る。

「はぁぁぁぁぁ~、無事だった…良かった、良かった~…」

吊り上げられた糸が切れる様に、床に座り込む。そっと寄り添う様に亀吉も座る。

「ごめんなさい、ご家族の事まで考えが至らなくて…」

目まぐるしく動く時の中、トットの心配ばかりで家族の事に思慮が至らなかった事を後悔する。

「いやいやいや!亀吉さんが謝る事じゃ無いですって!!私が変な想像をして1人で焦っただけなんですよ!」

不意に番組の事を思い出し、自責の念にかられる。

「そっそれよりも番組はどうなりましたか??私、よく覚えて無くて…ぶち壊したりしてませんか??」

そんな事は無い、全く気にしなくて良いと言われ、少し気持ちが楽になる。

「ただ一応発案者なのでスタジオに戻ります。トットさんはこちらでゆっくりされても良いですし、直ぐにお家に帰られても大丈夫です、後はこちらでやりますので」

帰るのだったら車を用意すると言われたが丁寧に断る。安心したのか急に疲れが襲ってくる、だが完全に不安な気持ちが拭えたわけでは無かったので、急いで帰る事にする。

荷物をまとめテレビ局を出る。勿体無いがタクシーを使おうと探していると後ろから声をかけられる。

「小沢さん、小沢時寺さん」

若い女性の声に振り返る、そこには先程のスタジオに居た、高低差のある男女の2人組が立っている。一瞬身構えるが、優しそうな笑顔に弛む。

「わたくし、こういったモノです。少々お時間宜しいでしょうか?」

差し出された手には一枚の紙が握られている。トットは受け取り、名刺に書かれた文字を読む。

[ 真実新聞 社会部  木村ハナコ ]

聞いた事も無い新聞会社だった。正直名前も取って付けた様に感じる。

「そのう、どう言ったご用件でしょうか??」

名刺を見ながら質問する。

「小沢さんのについていくつかご質問があります」

木村が答える。2人ともニコニコとしているが、男性の方は一言も喋らない。

「いや~今日はちょっと疲れてて。後日私から連絡します」

どうにかその場を後にしようと誤魔化す。

「いえいえお時間は取らせません。今から帰るのでしたら私共の車で御送りします。○○は通り道ですし」

唐突に住所を言われ反応してしまう。後ろで男が「あっ」と言うのが聞こえた。
木村の方は意にも介さず話を続ける。

「お話は、車内で済ませますので」

またもやゾワゾワと不安感に襲われてくる。
足元から徐々に登ってくる様に…
何かこの場を切り抜ける手は無いかと考える。手に持ったままの名刺が目に入り裏返す。
そこには真実新聞社の住所や電話番号が書かれていたが、どれも1・2・3・4…と数字が並んでいる。確実に偽物だと確信し立ち去ろうとした時、ちっ!と舌打ちする音が聞こえる、男の顔から笑みが消えていた。

「いえいえ!そんなご迷惑でしょう!私は歩いて帰りますので失礼します!!」

ジワジワと後退りながら喋る、はぁっと溜息を吐く木村。後ろに控えていた男がトットへと詰め寄る。

「まあ遠慮せずに、こちらへ来て下さい」

そう言ってトットの肩を掴もうとする。

肩を…二の腕を……腰を………足首を??

驚きの表情で見つめる2人、トットの足は地面から離れ、今や地上から3m程の高さまで浮かんでいる。番組の締に用意していた、『浮遊術』である。
トットは驚く2人を地上に残し、ドンドンと遠くなる。



男「だから俺に任せろって言っただろうがっ!」

女「あいつは女に弱そうだって言ったのはそちらでしょうに」

男「それにしたって何だあの名刺は!適当にも程があるだろうが!?」

女「だって一回しか使わないのに面倒じゃないですか、それに私確認しましたよ」

男「いつ確認したって!?」

女「あなたがアホヅラ下げて、宙に舞うティッシュを見てる時です」

男「ぐう…!」




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