在宅ワーカーと小学生

Aria

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――4月 新しい出会い――

第4話 夕焼けに染まる部屋の中で

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 卯月に元々いた家の荷物を運びたいと言ったところ、明日は特段やる事がないらしく学校での用事が終わり次第こっちまで来てくれるとのことだ。…正確には施設で合流してからだけど。
「あ、そうだせめて大家さんにくらい挨拶しておかないとな。…鍵開けちゃったけどいいか、別に遠出するわけでもないしすごい時間がかかるわけでもないし」
 実際誰かが上がって行ったら分かるしな、そもそもここは交番が近いから犯罪は起きにくいだろう。…この時この判断がまさかあんなことになるとは思ってもいなかった。

「いや~すっかり日が暮れっちゃったなぁもう少し早く帰るつもりだったんだけど」
 施設を出てから約1時間、部屋に入り窓の外を見ると空が赤く、日が沈んでいくのが見える。
「この部屋は日が沈むところが見えるちょうどいい位置だからちょっと気に言ってたんだけど…。今日でこの部屋から見る夕日は最後かぁ。全く…今日も異常なくらい綺麗に輝きやがって…」
 初めの内はただ眩しいだけだと思っていたのだが、いざこうして見納めとなると少し寂しくなる。もちろん寂しくなったから引っ越しません!とはならないけどね。
「いやぁ~本当にきれいですねぇ…。三弦さんの部屋ってこんなきれいな景色が毎日見れたんですね」
「毎日って訳じゃないけど晴れた日は大体…って、はぁ!?弥生!?なんでいるの!?」
 びっくりするくらい自然に会話に入ってきたから思わず返事を返してしまったが、俺の横には確かにさっきの施設にいた花藤弥生がちょこんと座っていた。
「えへへぇ…なんて言うんでしたっけ?びこう?してきました!部屋は三弦さんが鍵を閉めてないのが見えたのでそ~っと入りました」
「いや、どんな才能だよ。尾行はともかく、部屋に入ったの全く気付かなかったんだけど!?」
 尾行されていたのにも驚きを隠せないが、階段を上る音や玄関のドアの開け閉めの音すら聞こえなかったから本当に気づかなかった。というか俺が部屋に入ってからどこにいたんだよ…。確か俺が今の位置に来るまでにはいなかったはずなんだけど…。
「三弦さんって意外と鈍感なんですね。私もよく鈍感だなってもみちゃんに言われるんですよ」
 え?これって俺が悪いの?確かに尾行に気づけなかったのは鈍感って言われてもしょうがないけど、部屋にいることに関しては俺というより弥生の方に問題があると思うんだけど。
「…なんか腑に落ちないけど…まぁ、いいや。それで?尾行してきてまで何しに来たの?言っとくけどこの家は明日には俺の家じゃなくなるから知ってても意味ないぞ?」
「それはもちろん知ってます。でも…もっと三弦さんのことをしりたくて…。で、でもみんなの前だと恥ずかしくて…それで…その…すいません…」
 最後の方はかすれたような声を出して誤ってきた。確かに、勝手についてきてしかも勝手に人の家に侵入してきているのだから小学生じゃなかったら立派な犯罪だ。…あれ?ちょっと待って?確かどんな理由があっても親の許可なく子供を家に入れたらその時点で誘拐した判定になるんじゃなかったっけ…?
 ま、まぁ弥生はもう家族みたいなもんだし大丈夫…かな…?いやいや、そんな事よりもそこでしゅんとしている弥生の対応をした方がいいか。そう思い、手を縦にして弥生の頭軽くポンと叩いた。
「ほえ…?」
「いちいちそんなんで謝らなくていいよ。確かにびっくりはしたけど怒ってはいないよ。それとわざわざ尾行してまでついてきたんだから今日は泊まっていきな。見た感じ学校の道具とか制服とか持って来たんでしょ?」
 部屋の隅っこの方を見るとランドセルと袋が置いてあるのが見える。もともと泊まらせてもらう予定だったんだろう。という事は卯月にも言ってあるみたいだから安心だ。…にしても本当によく音を出さずに部屋に入ったな…ランドセル持ってるのに…。
「えへへ…バレました…?卯月さんやみんなにもちゃんと言ってあるので安心してくださいね。それで…その…もっと知りたいと言っておいてあれなんですけど…。…えっと、ぎゅ…ぎゅーってしてもいい…ですか…?」
「…え?」
 弥生はぎゅーと言いながら腕を伸ばしてきた。あまりにも予想外な要求過ぎて正直頭が回らなかった。言動と行動から見てもおそらく…いや間違いなくハグをしていいかと聞いてきたのだろう。
「……はぁ、わかった。こっちおいで?」
 初めは断ろうと思ったのだが、恥ずかしそうに言葉を発した後に軽く泣きそうになりながら俺の方に手を向けている姿を見ていると流石にそれは出来ないとも言いにくい…。
 さっきまで不安そうにしていた弥生だったが、すぐに顔を明るくして俺の方に飛び込んできた。なかなかの衝撃で後ろに倒れこみそうになったが、そこを何とか持ちこたえ弥生を受け止めるように腕を回した。
「…なんででしょうか。やっぱり三弦さんといると落ち着きます。あったかくて、ずっとこうしていたいです。えへへ…なんか今日の私…少し変です…ちょっとドキドキします…」
 そんな言葉生まれてから始めて言われたんだけど…しかも今日初めて会ったこんな小さな女の子に言われるのは異常なまでの犯罪臭がする…。
 弥生はその一言だけいい黙ってしまった。俺もなんて言ったらいいか分からず少し気まずくなり始めた時に弥生は静かに俺から離れた。
「えへへ…ありがとうございます…!」
「う、うん…どういたしまして…」
 弥生が照れくさそうにそう言うもんだから、俺まで照れくさくなってしまった。そもそも俺は異性とハグをしたことがないから余計照れくさくなる…。
「…それで聞きたいことは?一応答えられることは何でも答えるよ」
 お互いが少し落ち着く時間を作り、俺も弥生も少しは落ち着いたかなというタイミングで声をかけた。
「…あれ?何を聞こうとしたんでしたっけ…?忘れちゃいました!」
「ええ!?じゃあ君は本当に何しにここまで来たのさ!?」
 本当に何を考えてるんだこの子は…今日一日通して分かったことは弥生は海友以上にふわふわしている子だという事。かと言って無頓着というわけではなく、しっかりと周りを見て物事を把握のは分かる。…どこまで把握できているかはいまいちよく分からないが。
「まぁそのうち思い出すかもしれませんし、今日は三弦さんの家に泊まりにいく…という事が目的でいい気もします」
「弥生がそれでいいなら、別にいいんだけど…ちなみに今からちょっと買い物に行かないと弥生の分のご飯は無いからな。俺一人ならまだしも弥生の分まで作れるほど買い込んでなかった…というよりは明日買いに行くつもりだったから」
 朝冷蔵庫の中をのぞいたら今日一日分は持ちそうだったので、買い足しは明日でもいいかと思い、今日は何も買わずに帰ってきた。弥生がいなかったら何も買い足しに行かなくても済んだというのに…。全く…余計な手間をかけやがって…。
「そんなぁ…あんなに歩いたのにまた外行かないといけないんですかぁ?…もうつかれましたよぉ~…」
「じゃあ今日の弥生の夜ご飯は無しという事で。俺だって今から外に出るのは嫌なんだから我慢しな。弥生の好みとか分からないから食べたいならついてきてもらわないと困るんだが?」
 弥生は渋々といった感じで立ち上がり、俺も財布とスマホ、家の鍵だけをもって外に出て、2人で夜ご飯買い足しに出かけるのだった。

 結局俺がカップ麺を食べることになり、弥生がもともと俺が食べるつもりだったチャーハンを食べることになった。
「ん~、美味しいです!三弦さん料理できたんですね!」
「チャーハンくらい誰でも出来るよ…それくらいで料理が出来るんですねとか言わないで…」
 よっぽどのことがない限りは作れると思っているんだけど、多分弥生は無理そうだなぁ…。何を質問するか忘れるくらいだから料理は出来なさそう…すっごい偏見だけど…。
「わたしチャーハンって作ったことないんですよねぇ~。他の料理なら作れるんですけど」
「え…?」
 思わず声が出てしまった。もしかして弥生自身が作ったことがないから、俺が料理出来る人だと思ったって事…?だとしたら俺がさっき思っていた事と真逆って事…?
「ごめん弥生…てっきり弥生は料理できないのかと思ってた」
「えぇ~ひどいですね。ゆーいつわたしが得意なことなんですよ?いつもわたしがご飯作っているんですから!」
 へぇ~以外、海友はともかく紅葉とか料理得意そうなのに…。人を見た目で判断してはいけないってことなんだなぁ…改めて実感するわ。
「ふぅ…ごちそうさまでした!すいません、三弦さんが食べる予定だったものを食べちゃって…」
「はい、お粗末様でした。別にいいよ、そこまで気にしなくて。おかげでちょっと安く済んだしね。今から風呂沸かすと時間かかっちゃうからシャワーで申し訳ないけど浴びてきな、明日も学校あるんだから」
 時間的には8時と割といい時間になってしまっていた。俺は割とここからが本番って感じだからいいんだけど、弥生の場合はそうもいかないだろうから…というのは建前で本音は弥生より前に入りたくないだけなんだよなぁ…。気持ち的な問題で…。
「あ、ありがとうございます。では浴びてきますね…」
「うん、どうぞ。バスタオルは脱衣所にあるからそれを使って。あぁあと着替えも持って行けよ~」
「わ、忘れるところでした…ありがとうございます…」
 着替えを持って行かなかったらどうやって着替えるつもりだったのか…。あれか?体にバスタオル巻いて出てくるつもりだったのか?そこまで来たら本当に俺が犯罪者になってしまう可能性が高くなるから本当にやめて欲しい。

 さっき買い出しに行った時に買ったお酒をちょこちょこと飲みながら明日スムーズに引っ越せるように軽く荷造りをしていた。すると浴室から上がりたてでまだほかほかなのか、頭から若干湯気を出しながら弥生がシャワーから帰ってきた。
「はぁ~…あったかかったですぅ~…次三弦さんどうぞ~」
「ん、いや俺は基本的に朝に入るタイプだから今はいいかな。うし、弥生も上がってきたし髪乾かしてあげるからこっちおいで」
 荷造りしながら出しておいたドライヤーをコンセントにつけながらそう言うと弥生は「はーい」と言いながら俺の膝の上に座り込んだ。
 そのままドライヤーの電源をつけ、弥生の髪の毛を乾かし始めた時、弥生が思い出したかのように声を出した。
「そういえば今日聞きたかったことなんですけど、1つだけ思い出したんですよ」
「おぉ、思い出したんだ。それで?」
 ドライヤーの音にかき消されないようにかつ近所に迷惑にならないようにお互いがお互いの声が聞こえるように声を出した。そもそもここの家自体が壁薄いからあまり大きな音を立てれないんだけど、そこも弥生は気づいているようで助かる。
「はい、えっと…どうして三弦さんはわたしたちの施設にきたのかなぁって思って。今まで何人か施設に来てましたけどみんな断っていたので…」
「あぁ、そのことか。うーんどうしてか、か…。もちろん卯月には昔からお世話になっているって言うことも理由の1つではあるんだけど。1番は1人でいるよりはいいかなって思ったからかな。1人でいると仕事柄か知らないけど割と塞ぎ込みがちになるんだよね…困ったことにね。まぁだから誰かと暮らすことで自分にとっていい刺激になるかなって思ってさ。簡単に言うと気まぐれだね」
 気まぐれではないんだけど近い表現がぱっと思いつかなかったからいいかなと。小説の内容とか考えてるときにちょっと沼ると1週間筆が進まないなんてこともざらにあったから、刺激が欲しいって言うのはあながち間違いでは無い。実際そういう時は外に出かけることが多いし。
「なるほど…それでわたしたちの施設に…だったら運命かもしれないですね!」
「運命…?」
「はい!だってわたしたちの施設に小桜さんがいなかったら三弦さんはいなかったし、三弦さんが小説のお仕事をしていなかったらもしかすると断っていたかもしれないじゃないですか!それはもう運命みたいじゃないですか!」
 運命って言うよりは奇跡って言った方がいいとは思うけど、そんなこと小学生の弥生にいちいち指摘することではないだろう。それにしても運命…か…。まさか弥生にそんなことを言われるとは思ってなかったな。
「運命ね…ただの偶然かもしれないけどね…。でも確かに俺と弥生たちが出会ったことは運命だとか奇跡とかに近い事なのかもね…。さ、髪の毛渇いたよ」
「ふぁぁ…いつもならまだおきている時間なんですけど…今日はもう眠たいです…三弦さ~ん…いっしょにねましょ~…?」
 今日はずっと歩いていたからな、眠くなるのも無理はないだろう。
「一緒に?…そういえばそこにあるベット以外に布団ないのか。しょうがないな今日だけだからね?一緒に寝るのは」
「もちろんですよ~…みんなの前だったら恥ずかしくてそんなこと言えませんよ…」
 かなり眠たいのか言葉と言葉の間に少し間が開いている。かく言う俺も今日は若干眠たい。いつもなら3時とかまで起きているからこの時間に眠たくなることは久しぶりだ。
 俺と弥生は1つのベットに入り、眠りにつこうとした。流石に弥生の方は向いて眠れないから弥生とは反対の方を向いてはいたけど。お酒も飲んでいたしね。
「三弦さん…おやすみなさい…」
「あぁ、おやすみ」
 しばらくすると弥生が眠りについたのかすぅすぅと可愛い寝息が聞こえてきた。その可愛い寝息を聞きながら俺も精神世界へと身を任せるのだった。

 次の日目を覚ました俺と弥生は素早く身支度を済まして学校へと向かった。なぜ俺も一緒に学校へ行かないといけないのかとは思ったけど、弥生がぶーぶーうるさかったので仕方なく一緒に登校した。
 弥生と別れた後手で持てる物くらいは先に送って行こうと思い元居た家と施設を何回か行ったり来たりしているとそれを見かねた大家さんが車を出してくれた。引越しの手伝いもしてくれて、卯月が帰ってきた後に持って行こうとしていた大きい物も運ぶことができた。
 大家さんに深くお礼をしてから、施設の中に入り軽く一息ついた。
「ふぅ…大家さんの優しさには本当に頭が上がらないな…さてこれからどんな生活になるか今から楽しみだな…」
 外出時に使うノートパソコンを開きながらそんなことを呟いた。昨日の事もあってかかなり筆が進みそうだ。初日からあんなにいい刺激を貰えるのはいいことだ。
「いやいい事ではないだろ…。小学生にシャワーを貸して一緒のベットで寝るのは…。普通に変な誤解をされたら言い訳できる気しないんだけど。流石にこのことは小説にしたためるのは止めておこう…ちょっといい感じのシナリオは思いついたんだけど…」
 本当にこれから俺の小説はどうなってしまうのか…変な方向に向かわなければいいが…。
 そんなことを考えながらパソコンと向き合い1度背伸びをしてから作業へと向かうのであった。
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