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空白の記憶
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空白の記憶
第1記録
お母さんは私を嫌っている。
いつからだろうか。
或る日突然私のことを嫌うようになった。
私はお母さんと二人暮らし。
お父さんは、ずっと前に亡くなった。
朝。私は制服を着る。着替えたらリビングに降りる。
ジャー。水道の音が聞こえる。
お母さんは私よりも一時間早く起きる。
私より早く起きて、炊事洗濯を終わらせて私よりも早く家を出る。そして、遅くに帰る。そんな毎日の繰り返し。お母さんと私の会話といえば必要連絡事項だけ。提出物の催促をするときや、文房具や欲しいものを買ってもらうときの単語くらい。
まぁ、昔は頑張ったけど…。私の顔を見て褒めてくれる日を信じて。でも、そんな私の努力は虚しく、私の顔を見て褒めてくれた日は一度もない。私を嫌う前まではすごく仲の良い家族だったと思う。今とは真逆のあの頃。
「お早う。お母さん。」
「…おはよう。京香。」
「いってきます。」
私は朝ごはんを家では食べない。気まずい空間になるだけだから。
家の近くの登校途中にあるコンビニで何かしら買って学校に行く。
お母さんと私の間は冷めきっているように見えるけど、本当は心の中で褒めて欲しい 抱きしめて欲しい 叱って欲しい いろんな思いがあるんだ。お母さんは心でどう思ってる…?こんな娘いらないって?辛いよ…。
私の名前は、高橋 京香。15歳。
中高一貫校の私立校の3年生。
「おはよう。」
私が教室に入ると一瞬みんなこっちに気をとられるが、すぐみんなおしゃべりに戻る。いつもの光景。心の中で『なんだ。こいつか…』って思ってるのだろうか。
「京ちゃん。おはよう。待ってたよー!」
話しかけてきたのは、田中 歌音。
音楽一家の一人娘。私が唯一心を許している友達だ。
「おはよう。歌音。」
「…あれ?京ちゃん目の下クマできてる。夜更かしでもしたの?」
「うそー。できてる??実は夜にずっと本読んでて。」
「そ?ちゃんと寝なよ?」
「うん。」
「今日も今から朝ごはん?」
「うん。ロールパン買ってきたの。」
「じゃ、食べよ食べよ。私もグミ持ってきたの。あげるよ。」
「ありがとう。」
歌音には家庭の事情は全て話した。
歌音は聞いた時、小さく『へぇ。なら学校ではその分遊ぼうね。』と言った。その瞬間、私は仲良くなれるように気がした。
歌音が変な思想や偏見を持つ子でなくて安心した。家に帰っても何も楽しいことがない私からしたら、歌音の人生は薔薇色だと思う。
歌音は、比較的裕福な家に生まれた。
お父さんが作曲家で、お母さんがヴァイオリニスト。おじいさんは、チェリストでおばあさんはピアニスト。音楽一家の一人娘として歌音は育った。歌音はギターとマンドリン、ヴァイオリンなど弦楽器が得意で、音楽の授業の成績は10段階中10だ。歌音はお父さんとお母さんの血を両方上手に受け取って育ったのだと思う。お家も大きくて、誰もが羨む人生だと思う。でも、歌音もお父さんたちとぶつかったこともあるみたいで例としては、両親は音楽系の中高一貫に進んで欲しかったのに歌音は両親と同じ道を歩くのはつまらないと言ってこの中学に進んだらしい。その時の喧嘩は尋常ではなかったと笑いながら歌音は言った。歌音の家に行ったこともあるが、お母さんも優しくて羨ましいことだらけだった。
「京ちゃん?」
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた。」
「おばさんとは今どう?」
「相変わらず避けられてるよ。多分ずっと変わらない気がするな。」
「そんなことないって!ってか、またうち来なよ。パパもママも待ってるよ。京ちゃんは家に来ないの?ってよく聞かれるし!ほら、パパ達京ちゃんのこと本当の娘みたいに思ってるからさ。」
「ありがとう。心強い。」
「ううん!気にしないで!パパたち待ってるからさ。」
大切で大切でたまらない歌音 あなたがいれば私は幸せだよ。でも、一人でも多くの人に好かれたいっていう気持ちはある。大切な人たちに大切にされたい。誰だってそう思うよね。
「ただいま。」
私が帰ってもお母さんはまだ仕事中でいつもいない。お母さんがいない間私は宿題をやってる。
私は最近何かを忘れていると思うようになった。何か、私は心の記憶から忘れ去った気がする。お母さんが私を嫌うようになったあの日。あの日からきっと大事なことを忘れている。そして、きっとお母さんはその事を隠している。
一体私はどんな事を忘れてしまったのだろうか。
私は押入れの中を探してみることにした。
お父さんが亡くなって長いこと押入れの整理もしていなかった。押入れは埃まみれで汚く、お父さんの大事にしていた時計や思い出のものがたくさん出てきた。そして、一つのものに目がついた。
「これ…。」
埃まみれになった押入れから一人の写真が出てきた。私が小さい頃の写真。お父さんも一緒に写っているから相当昔だ。
その写真に違和感を感じた。
いや、これは違和感ではない。誰でも気付くであろう『この人』は誰…?
その写真には、私の見覚えのない綺麗な顔立ちをした女子中学生くらいの女の子が私の隣に立って一緒に微笑んでいた。
「だれ?この人…。なんで一緒に写っているの?」
私はやっぱり何かを忘れている。
『何か』を私は忘れ去られた。
第1記録
お母さんは私を嫌っている。
いつからだろうか。
或る日突然私のことを嫌うようになった。
私はお母さんと二人暮らし。
お父さんは、ずっと前に亡くなった。
朝。私は制服を着る。着替えたらリビングに降りる。
ジャー。水道の音が聞こえる。
お母さんは私よりも一時間早く起きる。
私より早く起きて、炊事洗濯を終わらせて私よりも早く家を出る。そして、遅くに帰る。そんな毎日の繰り返し。お母さんと私の会話といえば必要連絡事項だけ。提出物の催促をするときや、文房具や欲しいものを買ってもらうときの単語くらい。
まぁ、昔は頑張ったけど…。私の顔を見て褒めてくれる日を信じて。でも、そんな私の努力は虚しく、私の顔を見て褒めてくれた日は一度もない。私を嫌う前まではすごく仲の良い家族だったと思う。今とは真逆のあの頃。
「お早う。お母さん。」
「…おはよう。京香。」
「いってきます。」
私は朝ごはんを家では食べない。気まずい空間になるだけだから。
家の近くの登校途中にあるコンビニで何かしら買って学校に行く。
お母さんと私の間は冷めきっているように見えるけど、本当は心の中で褒めて欲しい 抱きしめて欲しい 叱って欲しい いろんな思いがあるんだ。お母さんは心でどう思ってる…?こんな娘いらないって?辛いよ…。
私の名前は、高橋 京香。15歳。
中高一貫校の私立校の3年生。
「おはよう。」
私が教室に入ると一瞬みんなこっちに気をとられるが、すぐみんなおしゃべりに戻る。いつもの光景。心の中で『なんだ。こいつか…』って思ってるのだろうか。
「京ちゃん。おはよう。待ってたよー!」
話しかけてきたのは、田中 歌音。
音楽一家の一人娘。私が唯一心を許している友達だ。
「おはよう。歌音。」
「…あれ?京ちゃん目の下クマできてる。夜更かしでもしたの?」
「うそー。できてる??実は夜にずっと本読んでて。」
「そ?ちゃんと寝なよ?」
「うん。」
「今日も今から朝ごはん?」
「うん。ロールパン買ってきたの。」
「じゃ、食べよ食べよ。私もグミ持ってきたの。あげるよ。」
「ありがとう。」
歌音には家庭の事情は全て話した。
歌音は聞いた時、小さく『へぇ。なら学校ではその分遊ぼうね。』と言った。その瞬間、私は仲良くなれるように気がした。
歌音が変な思想や偏見を持つ子でなくて安心した。家に帰っても何も楽しいことがない私からしたら、歌音の人生は薔薇色だと思う。
歌音は、比較的裕福な家に生まれた。
お父さんが作曲家で、お母さんがヴァイオリニスト。おじいさんは、チェリストでおばあさんはピアニスト。音楽一家の一人娘として歌音は育った。歌音はギターとマンドリン、ヴァイオリンなど弦楽器が得意で、音楽の授業の成績は10段階中10だ。歌音はお父さんとお母さんの血を両方上手に受け取って育ったのだと思う。お家も大きくて、誰もが羨む人生だと思う。でも、歌音もお父さんたちとぶつかったこともあるみたいで例としては、両親は音楽系の中高一貫に進んで欲しかったのに歌音は両親と同じ道を歩くのはつまらないと言ってこの中学に進んだらしい。その時の喧嘩は尋常ではなかったと笑いながら歌音は言った。歌音の家に行ったこともあるが、お母さんも優しくて羨ましいことだらけだった。
「京ちゃん?」
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた。」
「おばさんとは今どう?」
「相変わらず避けられてるよ。多分ずっと変わらない気がするな。」
「そんなことないって!ってか、またうち来なよ。パパもママも待ってるよ。京ちゃんは家に来ないの?ってよく聞かれるし!ほら、パパ達京ちゃんのこと本当の娘みたいに思ってるからさ。」
「ありがとう。心強い。」
「ううん!気にしないで!パパたち待ってるからさ。」
大切で大切でたまらない歌音 あなたがいれば私は幸せだよ。でも、一人でも多くの人に好かれたいっていう気持ちはある。大切な人たちに大切にされたい。誰だってそう思うよね。
「ただいま。」
私が帰ってもお母さんはまだ仕事中でいつもいない。お母さんがいない間私は宿題をやってる。
私は最近何かを忘れていると思うようになった。何か、私は心の記憶から忘れ去った気がする。お母さんが私を嫌うようになったあの日。あの日からきっと大事なことを忘れている。そして、きっとお母さんはその事を隠している。
一体私はどんな事を忘れてしまったのだろうか。
私は押入れの中を探してみることにした。
お父さんが亡くなって長いこと押入れの整理もしていなかった。押入れは埃まみれで汚く、お父さんの大事にしていた時計や思い出のものがたくさん出てきた。そして、一つのものに目がついた。
「これ…。」
埃まみれになった押入れから一人の写真が出てきた。私が小さい頃の写真。お父さんも一緒に写っているから相当昔だ。
その写真に違和感を感じた。
いや、これは違和感ではない。誰でも気付くであろう『この人』は誰…?
その写真には、私の見覚えのない綺麗な顔立ちをした女子中学生くらいの女の子が私の隣に立って一緒に微笑んでいた。
「だれ?この人…。なんで一緒に写っているの?」
私はやっぱり何かを忘れている。
『何か』を私は忘れ去られた。
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