familyー幸せな花婿ー

夏瀬檸檬

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おじさん

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第4話
おじさん


家に入ると、あの人が麻婆豆腐と、サラダを作って待っていた。
「おかえりなさい。茉莉乃ちゃんは元気だった?」
「…はい。」
あなたには関係ないのに…
彩りが悪い。そんなことより。
スプーンの並べ方がパパやママと違っている。
パパと同じじゃないから
嬉しいはずなのに…なんとなく嫌だった。
家の風習。なんて言い方じゃないかもしれないけど……。。
そういうやり方をしないのもなんか嫌だ。
わがままなのはわかるけど…
パパとやり方が違うのも嫌なんだ。
中途半端は嫌なの。
どうしても。許せなくなるの。
「雪乃ちゃん。ご飯できたよ。」
「あ、どうも。」
私は席に着いた。
スプーンを取って、口に運ぶ。
「おいしい?」
「…はい。」
麻婆豆腐は、すごく甘くて、パパと違っていて、なんだか、変な気分だった。

今は夜12時。
ベッドの中。なかなか寝付けない。
あの人は、二階の和室で布団を敷いて寝ている。
ガチャガチャ。
鍵が開く音。
ママだとすぐわかった。
私は、おじさんを起こさないように階段を降りた。起きてほしくなかった。
玄関にはやっぱり、ママが居た。
「あら。雪乃ちゃん。まだ起きていたの?」
「ママ!」
私は抱きついた。
あの人にこの家が汚染されそうで怖かった。
私は、茉莉乃とママしか信じられない。
「あらあら。どうしたの?。今日は甘えん坊ね。お姉ちゃんなんだから。しっかりしてもらわなくちゃ困るわよ。ふふふ。」
そう。私はお姉ちゃん。茉莉乃のお姉ちゃんなんだ。だから、強くいないといけない。
だから。明るく頼りになる人でいなければならない。
「…あのね。ママ。プリン作ってたんだよ。」
「ええ?すごいね。見たいわ」
「あー。でも、プリンの素で作っただけなんだけど…」
「それでもすごいわ。雪乃ちゃんは、お料理得意じゃなかったでしょう?」
「ママの料理はいつも美味しいよね」
「あら?今日は馬鹿に褒めてくれるのね。何か企んでいるの??」
「やだぁーママったらひどーい」
「あ、雪乃ちゃん。静かにね。裕司が寝てるから。ね?」
「あ。うん。」
はっきり言ってあの人はどうでもよかった。
ただ、ママとあの人を会わせたくなかっただけ。ママとあの人が会ったら私は1人になっちゃう。ママと、あの人がもう惹かれあってるから、もう、1人だけど…
『本当』に1人にはなりたくない…

「おはよう」
「おはよおー雪乃ー」
「おはよう。南。莉央」
机の中に教材を入れるとき南たちは来た。
「ねぇ、明日ね。給食センターが、お休みなんだって!」
「なに?莉央。どこ情報?」
南が言う。
「いいから聞いっててってば」
「はいはい。」
「明日お弁当になるんだってー!」
「え??」
「え。そうなの?」
南に続いて反応する。
「なんでー?」
「そりゃ南。給食が出ないからでしょ」
「でも嬉しいわ。ここの給食それほど好きではなかったし。明日は、お母さんと一緒に作った特製弁当を持参できるなんて」
「私も!唐揚げいっぱい入れてもらうの!」
莉央がよだれを垂らす。
莉央は給食が大好き。
もともと食べたり運動したりするのが好きな莉央は、女の子なのに50メートル走が7秒を切りそうなのだ。見た目はとてもかっこよくて、ポニーテールがよく揺れる。空気が暗いと盛り上げようとする、思いやりのあるとても良い子。
ちなみに給食の中では唐揚げが大好物みたい。
南はあまり給食が好きではない。
南はとても勉強のできる優等生。
優しくて、大人しいけど少しドジっ気もあったり私はそんな南が好きだ。
給食が嫌いなのは、昔小学生の頃の給食に異物が混入してから不安で食べるのを嫌がるようになったと言っていた。
「それより、雪乃。茉莉乃ちゃんもう直ぐ退院だって聞いだけど、」
「南ったら情報が早いのね。うん。もう直ぐ退院よ。あの子も心の力もついてきて元気になってきたからもう直ぐ退院できるよって先生に言われたの。」
「そう。よかったわね!…?どうしたの?浮かない顔して…」
私は下を向いて暗い顔をしていた。
「茉莉乃が。。おじさんを認めてしまったらどうしよう。」
「え?」
「茉莉乃があんな叔父さんがお義父さんになっていいって言ったら…私…どうすれば。」
「雪乃…。」
「なに…?」
「もう少し、その叔父さんを理解してあげたほうがいいと思うよ。」
「南?どういうこと?」
南はこの上なく真剣な顔をして私に言う。
「雪乃はおじさんのこと一方的に悪口を言ってるけどおじさんにはおじさんの事情があるかもしれないでしょう?それは、考えたりしなかった?」
「え…。おじさんに事情?」
「雪乃。おじさんにどんな事情があるかもしれないのに鼻っから決めてかかるのはよくないわよ。おじさんの中身を知ってからの悪口と決めてかかる悪口は全くの別物なのよ。」
「なにそれ…。」
私はなにも知らない南に言われるのが腹立たしくてならなかった。
「南になにがわかるの。なにも知らなくせに。いきなり知らない男の人が来る怖さを知らないくせに。」
「知ってる。」
「へ?」
「知ってるよ。だって、私の家にも知らない男の人が来たんだもん。」
「どういうこと…?」
「雪乃たちに出会う前にお母さんは再婚したの。実のお父さんは私が生まれてから何年かして直ぐに死んじゃったって言ってた。だから、私にとってのお父さんは今のお父さん。でも、あのお父さんが来たとき不安で怖かった。お母さんと二人で生きてきた中にあんな叔父さんが入るの?って。幸せが崩れたりしない?すごく不安だった。でも、話してみるといい人で、今はお父さんが大好きよ。あの人もバツイチで奥さんに亡くなられてるんですって。寂しかったんだろうなって思った。先方には先方のこちらにはこちらの事情があって再婚するものでしょう。家族だってわかりあわなきゃ進めないのに。赤の他人とは話合わなきゃ進まないのよ。だから、まずはその人のことを知らなきゃならないんだよ。中身を知ってそれから好き嫌いを判断しなよ。そうしなきゃ進めないよ。」
「…私はそんなことを言ってほしくて南たちに相談したわけじゃないよ!」
「なら、なんて言って欲しかった?大変だね…辛いね…なんて、心にも思ってないこと言えないよ。」
南は目をそらすことなく私の顔をしっかり見て言う。
なんで、そんなこと言うのか私にはわからない。
おじさんに事情なんてあるわけない。
あるわけなんてないんだ。
南にはわからないのよ。私のことなんて。
「ちょ、もうやめてよ。どうしたの?二人とも。」
莉央が言う。
莉央。あなたは変わらないね。
こんな状況にいてもあなたはなにも言わないんだね。
「ちょ、南!」
南はそのまま歩いて自分の席に戻っていった。
それを莉央は追いかける。
私のことで…私の心が狭いからいけないのかな。
おじさんに事情があるわけないもん。
あ、違う。私のこういうところがいけなかったんだね…。
鼻から決めてかかってその人のことを知ろうとしない。私には中身がないんだ。中身を知ろうとしないんだ。。
そのことにも気付かなかった。
私はこんな、こんなことで、最愛の友達を失うことになった。
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