3 / 5
待ってるから
しおりを挟む
第3話
待ってるから。
私は、茉莉乃のいる病院に向かった。
茉莉乃がいるのは南棟の精神科。204室。
「あら。貴方松谷 茉莉乃ちゃんのお姉ちゃんよね。」
「はい。」
「茉莉乃ちゃん落ち着いてきたわよ。今なら全然面会できるわ。来て。話していってちょうだいね」
とても明るい看護婦さん。
優しい顔。
吸い込まれるような綺麗な瞳。
こんな人になりたい。
そんな事を思った。
「茉莉乃ちゃん。開けるわよ」
看護婦さんが茉莉乃の部屋のカーテンを開ける。茉莉乃はベッドに座って本を読んでいた。
「茉莉乃。」
「お姉ちゃん」
「茉莉乃。日を改めて外出許可がでたら、すぐに実咲ちゃん達の両親にも謝罪しに行きましょう。」
「…会わせる顔ない。」
「だめよ。逃げちゃだめよ。どうにか自分で収集をつけなさい。自分で蒔いた種は自分で摘むのよ。実咲ちゃん達をまた今度ここに連れてくるわ。まずは実咲ちゃん達に謝りなさい。許してくれなくても何度でも。貴方は謝る義務があるのよ。」
「………」
「それと…ママが再婚するって」
「え?」
「再婚するんですって。」
「だれと?!」
「前原裕二さん。。私たちの知らない男の人」
「なんで…」
「茉莉乃がパパ パパいうから、ママ。茉莉乃には新しい人が必要って思っちゃったのよ。」
「私が欲しいのはパパなのに。お義父さんなんかじゃない。ましてや、そんな、私たちの知らない。ママだけしか知らないお義父さんなんていらない。」
茉莉乃。私も思いは一緒よ。
でもね。ママには、幸せになって欲しいのよ。
お義父さんと再婚して、幸せになって欲しいのよ。
「お姉ちゃん。そのおじさんどんな人?」
「優しそうでかっこいい人よ。静かそうな人で、38歳よ。パパに似ている。。さっきまでファミレスで一緒にお茶してたのよ。でも、飛び出してきちゃった。」
「え?」
「だって、あの人にパパの代わりは勤まってもパパには慣れっこないもん。」
「お姉ちゃん」
まるで、大好きな目的の漫画を買っておまけで付いてきた必要のないあってもなくても変わらないそんな付録みたいだ。
「…私もう帰るね。また、電話するから」
「あ…うん。私もまた連絡する。」
家に帰る。
見たことない車が止まっている。
もしかして、おじさんの…
私は帰りたくない。
「雪乃?」
この声は。
「ママ」
「雪乃。コンビニ行ってたのよ、さっきの事は咎めないわ。さぁ、裕二さんもお待ちよ。家に入りなさい。」
やっぱり。
おじさんがいるんだ。
ママに無理やり家に入れられる。
和室のパパの仏壇の前におじさんが座っている。いやだ。離れて。
こんな人はパパじゃない!
そんな念をおじさんに送る。
おじさんは立ち上がってリビングに行く。
私はホッとした。でも、それも束の間。
おじさんはパパが座っていた椅子に腰をかけたのだ。。
私は自分が怖かった。
おじさんを殴ってしまいそうだ。
自分の部屋に行く。
階段を上る。
「雪乃ちゃん」
おじさんが私の名前を呼んだ。
少しホッとした。
雪乃ちゃん。この呼び方はパパはしていなかった。良かった。ホッとした。
パパは、『雪』か、『雪乃』だった。
安心した。
「はい?」
「雪乃ちゃんは今日の夜ごはんなにがいい?」
「え。?」
「今日は僕が作るんだよ。。何が食べたい?」
ママ。私はパパとママのごはんが好きなのよ。
おじさんのごはんなんて…
「やっぱり、ハンバーグとか、オムライスとか?あっ!おじさんの得意料理はね。麻婆豆腐なんだよ。」
私は胸が痛くなった。
パパの得意料理と一緒。
パパの麻婆豆腐は、少し辛くてでも美味しくて大好きだった。茉莉乃も大好きだった。
ママ。貴方はなぜパパと似ている人を再婚相手に選んだの?嫌だよ。
こんな、こんなおじさんが、パパに似ているなんて。パパについてくる付録みたいなものなのに。
「雪乃ちゃんは何がいい?」
「…す…いませ…ん。私気分が悪いので今日よりごはん入りません。もう部屋で休みます、」
私は逃げるように部屋へ向かう、
部屋へ戻って至る所にある家族写真。
その中でも1番特別。
パパと最後に行った旅行での写真だ。
パパは優しく微笑んでいる。
ママはパパを見てニコニコしている。
茉莉乃はカメラを見て歯を出して笑っている。
私はこれが最後の家族旅行になるとは思ってもいなかった。
「パパ。一度で良いから…会わせてよ。言いたいことたくさんあるよ。」
パパじゃなきゃ嫌なのよ。
なんで…これまでのあの時間を大切にしなかったの。そう後悔してももう遅い。
翌日
「おはよう」
「おはよう。」
「おはよう」
2人に挨拶するとこだまのように帰ってきた。
莉央は、場を盛り上げようとしているのかニコニコ。
南は私の心を察知しすぎて暗い顔。
「ねぇー。きいてよおー!!」
「どしたの?莉央」
「バカな私追試なんだよぉ~」
「莉央。場の空気を読んでよ!」
南に怒られている莉央。
「南。いいのよ、、私も明るい場にいないとやっていけないもの」
「雪乃」
明るいところ。
そんなところに入れる私は幸せね。
「ちょっと、二階に行ってくるね。。」
「なんでぇ?」
莉央が首をかしげる
「部活の後輩。実咲ちゃん達に用があって」
「あ…あぁ。そうだったね。ついていこうか」
「ううん。大丈夫。ありがとう。南」
「…もう直ぐ授業始まるから、急ぎなね。」
「うん。行ってくるわ」
「ただいまー」
私は家に帰った。
今日は疲れているの。
そういう相手がいないのは悲しい。
「あ。おかえりなさい」
「え。」
家にはおじさんがいた。
なんで。
「な…んで。」
「あ。驚かせちゃったね。ごめんね。百合さんに鍵をもらったんだよ。」
「え。。あ、、いえ。こんにちは。」
おじさんは台所の掃除をしていた。
フライパンの場所を変えている。
わたしは心の中で確かに叫んだ。
フライパンはパパのお気に入り。
勝手に触らないで。パパのお気に入りの思い出のもの。やめて、、
「叔父さん。フライパンは触らないで。」
「え?」
わたしはとっさにそういった。
「そのフライパンはパパのお気に入りのなんです。パパがそれを使ってよくオムレツを作ってくれた大切な思い出のものです。」
「あ、、ごめんね。そうだよね。」
「いえ。これから、気をつけていただければ」
ハッとした。
私はこの人を認めているんだ。。
『これから』なんて…これからも私はこの人を家に入れるの??なんで…
「雪乃ちゃん?」
「あ、なんでもないです」
「そう?。今日は、百合さん遅いみたいなんだ。だから、今日は僕が泊まって、夕飯を作ってくれって頼まれたんだ。今日は何がいいかな?」
「え。」
ママ。ひどいよ。
よくそんなひどいことができるね。
パパが可哀想だよ。
パパに会いたいよ。
「雪乃ちゃん?」
「あ、今日は、、なんでもいいです。ちょっと病院に行ってきます」
「え?風邪でも引いたの?だいじょうぶ?」
「茉莉乃がいる病院です。」
「あ、そうなんだ。ごめんね。1人で行けるかな。。僕が送ろうか」
「大丈夫です。バスで駅まで行って、一駅乗るだけですから。」
「そう…なんだ、」
この人は何も知らない。家の事情も、、茉莉乃のことも、。私の好きだったパパがどんな人かそんなことさえも知らない。大嫌いだ。
私はスマホと財布を通学鞄から取り出して、
鞄にもう一度詰めて、家を足早に出る。
…でも、パパがいなくなることを理解できない茉莉乃の気持ちは痛いほどわかる。
私だって、涙が出なかった。茉莉乃と同じで。
私たちは、パパのお葬式の時も涙が全く出なかった。涙が出なくて、よく分からなかった。
親戚の人にもママにも不謹慎だと、なぜ泣かないのかと、問い詰められたりした。
その質問には答えられなかった。パパは帰ってくる。家に帰ったらパパがいるんだ。そう思ってそう信じていた。火葬をする時まで。
なんで焼くの?熱いじゃん。パパが可哀想だと、私はその時初めて涙を流した。パパはもう帰ってこない。そう、教えられた気がした。
もう会えないと。
でも、それでも茉莉乃は、
『お姉ちゃん。パパはね。家にいるんだよ。早く帰りたいね』
そう言っていた。
その言葉を聞いた親戚の大人たちはみんな泣いていた。この子は本当にパパを愛しているのだと、そう確信できたからだ。
この、茉莉乃が1番可哀想だ。1番…優しい子だと。そんな風に思った。
その日家に帰って、茉莉乃は泣いた。
パパが家にいないからだ。
『なんでいないの?』と言って…
ママも誰も茉莉乃を諭す人はいなかった。
それから、茉莉乃は、笑う、ということを一切しなくなった。
パパが死ぬことが私たち一家を狂わせたんだ。
パパをひいた人が憎い。
「お姉ちゃん」
ハッとした。
「あ、ごめん。ぼーっとしてた」
「大丈夫?」
「うん。茉莉乃。みさきちゃんたちに謝ってきたよ。許してくれたわ。だから次はあなたが謝りなさい。それで解決だから」
「うん。」
「まぁ、もうすぐ退院だろうから、前を向いてね。いこうね。」
「うん。私も早くそのおじさんに会いたい。どのくらい変な人かも知りたいわ」
「物好きね。あんな人が。いるとムカムカするだけなのに」
「お姉ちゃん。」
「あ、ごめんごめん。」
「私も気持ちが落ち着いてきたし、また支えるよ。」
「うん。ありがとう。」
でも、あなたにはまだそんなことできないよ。
出来るはずがないのよ。。あの人が家に入り込んできて、、私たちがいる場所も消されてしまいそうだ。
「あ、もうこんな時間ね。帰るわ。あの人が家でなんか作って待ってるみたいだし」
「お姉ちゃん…」
「ん?」
「お姉ちゃん。結局その人受け入れてるじゃない。」
「え。」
私は、くらっとした。確かに私はあの人を受け入れてる。
何をやってるんだ。
でも…
「受け入れてないわ。ただ、。あの人。寂しそうなの。さみしそうにしているの。まるで落ち込んでいるパパみたいで。。なんとなく。ほっとけなくて。。茉莉乃。パパと似ている人は、嫌ね。本当に嫌ね。」
私は、そのまま、病室を出た。
病院を歩いている。
背後からざわざわした声と足音が聞こえる。
「お姉ちゃん!!」
茉莉乃の声だ、
茉莉乃が病室から出て私の方に走ってくる。
それを必死に止めている病院の人たちがいた。
「お姉ちゃん!私。治すから!!心も、これまでのように、お姉ちゃん!待ってて。置いていかないで!」
茉莉乃は、寂しかったの?
寂しいのは誰よりも私がよくわかっている。
茉莉乃が寂しいのも、私も寂しいのよ。
「茉莉乃、、、待ってる!早くこっちにおいで!」
茉莉乃は床に座って泣いている。
13歳の子が背負うには大きすぎる重荷だったのかもしれない。
茉莉乃は、私にとって大切な家族。
私は歩き出した。
私たちが前へ進むために、歩き出した。。
まだまだゴールは先だと知るために…
待ってるから。
私は、茉莉乃のいる病院に向かった。
茉莉乃がいるのは南棟の精神科。204室。
「あら。貴方松谷 茉莉乃ちゃんのお姉ちゃんよね。」
「はい。」
「茉莉乃ちゃん落ち着いてきたわよ。今なら全然面会できるわ。来て。話していってちょうだいね」
とても明るい看護婦さん。
優しい顔。
吸い込まれるような綺麗な瞳。
こんな人になりたい。
そんな事を思った。
「茉莉乃ちゃん。開けるわよ」
看護婦さんが茉莉乃の部屋のカーテンを開ける。茉莉乃はベッドに座って本を読んでいた。
「茉莉乃。」
「お姉ちゃん」
「茉莉乃。日を改めて外出許可がでたら、すぐに実咲ちゃん達の両親にも謝罪しに行きましょう。」
「…会わせる顔ない。」
「だめよ。逃げちゃだめよ。どうにか自分で収集をつけなさい。自分で蒔いた種は自分で摘むのよ。実咲ちゃん達をまた今度ここに連れてくるわ。まずは実咲ちゃん達に謝りなさい。許してくれなくても何度でも。貴方は謝る義務があるのよ。」
「………」
「それと…ママが再婚するって」
「え?」
「再婚するんですって。」
「だれと?!」
「前原裕二さん。。私たちの知らない男の人」
「なんで…」
「茉莉乃がパパ パパいうから、ママ。茉莉乃には新しい人が必要って思っちゃったのよ。」
「私が欲しいのはパパなのに。お義父さんなんかじゃない。ましてや、そんな、私たちの知らない。ママだけしか知らないお義父さんなんていらない。」
茉莉乃。私も思いは一緒よ。
でもね。ママには、幸せになって欲しいのよ。
お義父さんと再婚して、幸せになって欲しいのよ。
「お姉ちゃん。そのおじさんどんな人?」
「優しそうでかっこいい人よ。静かそうな人で、38歳よ。パパに似ている。。さっきまでファミレスで一緒にお茶してたのよ。でも、飛び出してきちゃった。」
「え?」
「だって、あの人にパパの代わりは勤まってもパパには慣れっこないもん。」
「お姉ちゃん」
まるで、大好きな目的の漫画を買っておまけで付いてきた必要のないあってもなくても変わらないそんな付録みたいだ。
「…私もう帰るね。また、電話するから」
「あ…うん。私もまた連絡する。」
家に帰る。
見たことない車が止まっている。
もしかして、おじさんの…
私は帰りたくない。
「雪乃?」
この声は。
「ママ」
「雪乃。コンビニ行ってたのよ、さっきの事は咎めないわ。さぁ、裕二さんもお待ちよ。家に入りなさい。」
やっぱり。
おじさんがいるんだ。
ママに無理やり家に入れられる。
和室のパパの仏壇の前におじさんが座っている。いやだ。離れて。
こんな人はパパじゃない!
そんな念をおじさんに送る。
おじさんは立ち上がってリビングに行く。
私はホッとした。でも、それも束の間。
おじさんはパパが座っていた椅子に腰をかけたのだ。。
私は自分が怖かった。
おじさんを殴ってしまいそうだ。
自分の部屋に行く。
階段を上る。
「雪乃ちゃん」
おじさんが私の名前を呼んだ。
少しホッとした。
雪乃ちゃん。この呼び方はパパはしていなかった。良かった。ホッとした。
パパは、『雪』か、『雪乃』だった。
安心した。
「はい?」
「雪乃ちゃんは今日の夜ごはんなにがいい?」
「え。?」
「今日は僕が作るんだよ。。何が食べたい?」
ママ。私はパパとママのごはんが好きなのよ。
おじさんのごはんなんて…
「やっぱり、ハンバーグとか、オムライスとか?あっ!おじさんの得意料理はね。麻婆豆腐なんだよ。」
私は胸が痛くなった。
パパの得意料理と一緒。
パパの麻婆豆腐は、少し辛くてでも美味しくて大好きだった。茉莉乃も大好きだった。
ママ。貴方はなぜパパと似ている人を再婚相手に選んだの?嫌だよ。
こんな、こんなおじさんが、パパに似ているなんて。パパについてくる付録みたいなものなのに。
「雪乃ちゃんは何がいい?」
「…す…いませ…ん。私気分が悪いので今日よりごはん入りません。もう部屋で休みます、」
私は逃げるように部屋へ向かう、
部屋へ戻って至る所にある家族写真。
その中でも1番特別。
パパと最後に行った旅行での写真だ。
パパは優しく微笑んでいる。
ママはパパを見てニコニコしている。
茉莉乃はカメラを見て歯を出して笑っている。
私はこれが最後の家族旅行になるとは思ってもいなかった。
「パパ。一度で良いから…会わせてよ。言いたいことたくさんあるよ。」
パパじゃなきゃ嫌なのよ。
なんで…これまでのあの時間を大切にしなかったの。そう後悔してももう遅い。
翌日
「おはよう」
「おはよう。」
「おはよう」
2人に挨拶するとこだまのように帰ってきた。
莉央は、場を盛り上げようとしているのかニコニコ。
南は私の心を察知しすぎて暗い顔。
「ねぇー。きいてよおー!!」
「どしたの?莉央」
「バカな私追試なんだよぉ~」
「莉央。場の空気を読んでよ!」
南に怒られている莉央。
「南。いいのよ、、私も明るい場にいないとやっていけないもの」
「雪乃」
明るいところ。
そんなところに入れる私は幸せね。
「ちょっと、二階に行ってくるね。。」
「なんでぇ?」
莉央が首をかしげる
「部活の後輩。実咲ちゃん達に用があって」
「あ…あぁ。そうだったね。ついていこうか」
「ううん。大丈夫。ありがとう。南」
「…もう直ぐ授業始まるから、急ぎなね。」
「うん。行ってくるわ」
「ただいまー」
私は家に帰った。
今日は疲れているの。
そういう相手がいないのは悲しい。
「あ。おかえりなさい」
「え。」
家にはおじさんがいた。
なんで。
「な…んで。」
「あ。驚かせちゃったね。ごめんね。百合さんに鍵をもらったんだよ。」
「え。。あ、、いえ。こんにちは。」
おじさんは台所の掃除をしていた。
フライパンの場所を変えている。
わたしは心の中で確かに叫んだ。
フライパンはパパのお気に入り。
勝手に触らないで。パパのお気に入りの思い出のもの。やめて、、
「叔父さん。フライパンは触らないで。」
「え?」
わたしはとっさにそういった。
「そのフライパンはパパのお気に入りのなんです。パパがそれを使ってよくオムレツを作ってくれた大切な思い出のものです。」
「あ、、ごめんね。そうだよね。」
「いえ。これから、気をつけていただければ」
ハッとした。
私はこの人を認めているんだ。。
『これから』なんて…これからも私はこの人を家に入れるの??なんで…
「雪乃ちゃん?」
「あ、なんでもないです」
「そう?。今日は、百合さん遅いみたいなんだ。だから、今日は僕が泊まって、夕飯を作ってくれって頼まれたんだ。今日は何がいいかな?」
「え。」
ママ。ひどいよ。
よくそんなひどいことができるね。
パパが可哀想だよ。
パパに会いたいよ。
「雪乃ちゃん?」
「あ、今日は、、なんでもいいです。ちょっと病院に行ってきます」
「え?風邪でも引いたの?だいじょうぶ?」
「茉莉乃がいる病院です。」
「あ、そうなんだ。ごめんね。1人で行けるかな。。僕が送ろうか」
「大丈夫です。バスで駅まで行って、一駅乗るだけですから。」
「そう…なんだ、」
この人は何も知らない。家の事情も、、茉莉乃のことも、。私の好きだったパパがどんな人かそんなことさえも知らない。大嫌いだ。
私はスマホと財布を通学鞄から取り出して、
鞄にもう一度詰めて、家を足早に出る。
…でも、パパがいなくなることを理解できない茉莉乃の気持ちは痛いほどわかる。
私だって、涙が出なかった。茉莉乃と同じで。
私たちは、パパのお葬式の時も涙が全く出なかった。涙が出なくて、よく分からなかった。
親戚の人にもママにも不謹慎だと、なぜ泣かないのかと、問い詰められたりした。
その質問には答えられなかった。パパは帰ってくる。家に帰ったらパパがいるんだ。そう思ってそう信じていた。火葬をする時まで。
なんで焼くの?熱いじゃん。パパが可哀想だと、私はその時初めて涙を流した。パパはもう帰ってこない。そう、教えられた気がした。
もう会えないと。
でも、それでも茉莉乃は、
『お姉ちゃん。パパはね。家にいるんだよ。早く帰りたいね』
そう言っていた。
その言葉を聞いた親戚の大人たちはみんな泣いていた。この子は本当にパパを愛しているのだと、そう確信できたからだ。
この、茉莉乃が1番可哀想だ。1番…優しい子だと。そんな風に思った。
その日家に帰って、茉莉乃は泣いた。
パパが家にいないからだ。
『なんでいないの?』と言って…
ママも誰も茉莉乃を諭す人はいなかった。
それから、茉莉乃は、笑う、ということを一切しなくなった。
パパが死ぬことが私たち一家を狂わせたんだ。
パパをひいた人が憎い。
「お姉ちゃん」
ハッとした。
「あ、ごめん。ぼーっとしてた」
「大丈夫?」
「うん。茉莉乃。みさきちゃんたちに謝ってきたよ。許してくれたわ。だから次はあなたが謝りなさい。それで解決だから」
「うん。」
「まぁ、もうすぐ退院だろうから、前を向いてね。いこうね。」
「うん。私も早くそのおじさんに会いたい。どのくらい変な人かも知りたいわ」
「物好きね。あんな人が。いるとムカムカするだけなのに」
「お姉ちゃん。」
「あ、ごめんごめん。」
「私も気持ちが落ち着いてきたし、また支えるよ。」
「うん。ありがとう。」
でも、あなたにはまだそんなことできないよ。
出来るはずがないのよ。。あの人が家に入り込んできて、、私たちがいる場所も消されてしまいそうだ。
「あ、もうこんな時間ね。帰るわ。あの人が家でなんか作って待ってるみたいだし」
「お姉ちゃん…」
「ん?」
「お姉ちゃん。結局その人受け入れてるじゃない。」
「え。」
私は、くらっとした。確かに私はあの人を受け入れてる。
何をやってるんだ。
でも…
「受け入れてないわ。ただ、。あの人。寂しそうなの。さみしそうにしているの。まるで落ち込んでいるパパみたいで。。なんとなく。ほっとけなくて。。茉莉乃。パパと似ている人は、嫌ね。本当に嫌ね。」
私は、そのまま、病室を出た。
病院を歩いている。
背後からざわざわした声と足音が聞こえる。
「お姉ちゃん!!」
茉莉乃の声だ、
茉莉乃が病室から出て私の方に走ってくる。
それを必死に止めている病院の人たちがいた。
「お姉ちゃん!私。治すから!!心も、これまでのように、お姉ちゃん!待ってて。置いていかないで!」
茉莉乃は、寂しかったの?
寂しいのは誰よりも私がよくわかっている。
茉莉乃が寂しいのも、私も寂しいのよ。
「茉莉乃、、、待ってる!早くこっちにおいで!」
茉莉乃は床に座って泣いている。
13歳の子が背負うには大きすぎる重荷だったのかもしれない。
茉莉乃は、私にとって大切な家族。
私は歩き出した。
私たちが前へ進むために、歩き出した。。
まだまだゴールは先だと知るために…
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる