一途な妖精姫は報われない

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「あの子は一体…」

その少女を見た瞬間呼吸が荒くなった。そして脳がその子は危険だと訴えている。

(落ち着くのよフェリシア。大丈夫、大丈夫だから…)

グレース様とその少女の元に行こうとしたが、ある人物が少女の元に駆け寄っているのを見て足が止まった。

困惑している少女を優しく落ち着かせているその人物はライアン様だった。

数分後…ようやく落ち着いたのか少女はライアン様の手をとり笑っていた。

少女がライアン様を見る目は好意に充ちている。その表情は恋している人がする顔。私にはわかる。私もまたライアン様に思いを寄せているから。

ライアン様が少女を見る目もどこか優しい。

ズキッ

ああ、胸が痛いわ…今にも張り裂けそう。その子を見ないで、お願い…そんな優しい目をしないで…息が苦しい。

ライアン様と少女を映した瞳は何故かぼやけてちゃんと見えない。

「フェリシア?どうして泣いてるの!?」

「え?」

グレース様に言われて気づいた。自分が涙を流していることに。

「あ、あれ。なんで泣いているのかしら…」

何も無いはずなのに何故か涙が止まらなかった。

私今悲しいのかしら。ライアン様が少女に向ける眼差しが優しくて嫌なのね。

少女をエスコートして歩いているライアン様。

ズキッズキッ

まただわ。胸が痛い。今すぐこの場から消えたい感情が溢れている。

その時笑い声が聞こえてきた。少し離れた私の所まで聞こえる笑い声。

ライアン様が笑っていた。とても楽しそうに。あんなに豪快に笑うライアン様初めて見た…

「わ、私これで失礼します!」

「え?フェリシア、まって!」

これ以上2人の姿を見ていられなくなりその場を後にした。

急いで馬車に乗り公爵邸に帰り自分の部屋のベットに飛び込んだ。そして枕を濡らした。

コンコン

「ノエルです。フェリシアお嬢様。失礼しますね」

ノエルは私の護衛騎士兼従者だ。幼いころから一緒にいて兄みたいな存在だ。だから部屋を自由に出入りするのを許可している。

「…ねぇノエル。あの話覚えてる?聖女の」

「異世界から聖女が現れたとゆうお話ですか?」

「ええ。さっき聖女らしき少女が宮殿の庭園に現れたの…黒髪黒目だったわ」

「それでねライアン様がその場を対応したの。そしたらその少女ライアン様に惚れてしまっていたわ。ライアン様もどこかいつもより優しい顔だった」

さっきあったことをノエルに最初から最後まで聞いてもらった。

「多分お茶会はなしになったんだろうなぁ。折角可愛くしてもらったのに無駄になっちゃった。こんなにお洒落したのに…ライアン様に見て貰えなかったら意味ないわ」

ハーフアップにした髪を勢いよく解いた。

ノエルは何も言わずぐしゃぐしゃになった髪をといてくれた。

「朝からね嫌な予感がしたの。でねその少女を見た時その嫌な予感はこの少女が原因だと思ったわ。多分私はこの少女に全て奪われるのだと何故か分かったの」

少女とライアン様を見た時分かってしまった。これから起こることは避けられない運命だと。そしてあの少女は危険だと。

「ノエルは…私から離れていかないわよね?」

不安になってノエルに離れていかないでと懇願した。

「…ああ、ずっとフェリシアのそばにいる。何があっても私だけはフェリシアの味方だ」

ノエルのその言葉だけで今は安心できた。
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