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神竜家
戦うという選択肢が頭にない
しおりを挟む色んなことを考えながら窓の外に目をやると、ふと佐山のことが気になった。
「あれ? そういえば佐山を見かけなかったよな。家にいないということは、どうにか逃げきれたってことかな? 会いたいなぁ佐山に……」
── まてよ、もしかしたら外に佐山がいるかもしれないぞ。探してみようかな……。
そう思い、家を出て町を見回ることにした。俺は家族よりも佐山が好きだから。
そうと決まれば急いで家を出る。何が起きるか分からないので、家宝の刀を抱きかかえて。
「この刀を手に持ってると、強くなりたいって気持がどんどん大きくなってくる」
そんなことを呟きながら歩いていると、道や庭に人が倒れているのが見える。
犬が走り回っている以外生きている人は見かけないし、見える範囲で無事な家はなさそうだ。
町外れの山からモンスターが押し寄せたのか、別の所から来たのか俺には何も分からない。
佐山を探しながら歩いていると、いきなりモンスターが目の前に現れた。
キョロキョロしながら歩いていたのに、突然現れたモンスターに全く気が付かなかった。
子供の俺の脳では処理しきれない突然の情報に、理解が後から追いついてくる。
── え? モンスター……だ。う、嘘だろ? まだモンスターが残ってたなんて……。い、家を出るんじゃなかった。
佐山に会いたい一心で外に出たのが間違いだった。刀を抱きしめていたが、怖くて戦うことなど出来ない。
というより、戦うという選択肢が頭に無い。
俺はモンスターに詳しくないので、こいつの名前も分からないし特徴も分からない。
何もかも分からない尽くしで、刀を抱きしめ震えながらただ立ち尽くしていた。
「──く、来るな。あっちへ行ってくれよ……」
俺の思いも虚しく、段々と近づいてくるモンスター。
モンスターを前にし、叫ぼうとして口を開けるが声が出ているのかどうかさえ分からない。
目の前にいるモンスターが自分の体の前で手の平を上に向けると、小さな火が現れた。
その火がやがて大きなボール状へと成長していく。
「そ、その火のボールをどうするんだよ? もしかして、俺に向かって投げる気か? や、やめて……」
後退るどころか怖くて脚が震え、体を動かすことさえ出来ない。
人の言葉など分からないであろうモンスター相手に、「やめて!」と口を動かしたが、声に出たのか出なかったのか……。
モンスターがその手をゆっくりと上げ、俺に向かって火のボールを放り投げた。
「あっ、はゎ、あ゛……」
段々と近寄ってくる火のボール。俺にはスローモーションに見えている。
火のボールが来るのを待っている訳では無いが、足が地面に貼り付いて離れない。
「うわ゛ぁぁーーっ!」
火のボールが俺に触れると、ゆっくりと俺の身体を包み込んだ。
── あ、熱いっ!
息を吸った途端に喉が焼け、全身の熱さと痛みで地面に倒れる。
考える余裕などない。熱くて痛くて、ただがむしゃらに動き回った。
「あ゛、い゛……だ、だず……」
焼けた喉がから出る声は、もう言葉ではない。──そして、意識が遠のいていく……。
❑ ❑ ❑
── はっ!
目が覚めて身体を起こそうとした時に、全身に痛みが走っ……らない?
「あれ? 死んでないのか? 確か俺はモンスターに火のボールを投げつけられて、全身火だるまになったんだよな? だったら大火傷を……」
間違いなく熱かった記憶はあるが、自分の身体を見てもどうもなっていない。
触っても痛い箇所はどこにも無かった。
頭に手をやると、髪はゴワゴワで短くなっており、服も焼け落ちている。
つまり裸だ。
辺りを見渡したがモンスターはもういない。
「──なるほど、やっぱり俺は死んだのか」
そう解釈するに至る。
立ち上がり、体ごと一回転しながらもう一度辺りを見渡したが、やっぱり先程のモンスターはいなかった。
見覚えのある景色。
家は崩れ、まだ火が燻っている所もある。道には血を流し倒れている人がいて、庭にも……。
「──ん? モンスターに殺される前に見た光景ばかりだ。俺って地縛霊にでもなったのか……ってもしかして、俺って死んでないのか?」
もう一度身体に目をやると、足元に刀が転がっているのが見えた。
「あっ! 家宝の刀だ。──持てるぞ。幽霊なら持てないよな? やっぱり夢でも無いし、死んでもいないんだ。だったら何で無傷なんだろう? っていうか、振るのもやっとだった刀が少し軽く感じるのはなんでだ?」
生きていることも、刀が軽く感じることもさっぱり分からないが、生きているのなら真っ裸なのがたまらなく恥ずかしくなってきた。とにかく、急いで家に帰ることに。
「だ、誰にも見られてないよな? 真っ裸で外を走ったのは初めてだよ……。──外はもう真っ暗だ。どれくらい気を失ってたんだ?」
家に着くと家の中も変わっていない。俺が斬ったドアもそのままだし、亡くなっている人も動いた形跡はない。
「佐山……結局いなかったなぁ……」
二階の自分の部屋へ行き、パジャマを着てベッドに潜り込むと、いつの間にか眠りについていた。
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