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出会い
お化けじゃなくて女の子
しおりを挟む今日の鍛錬を止めると決めたのはいいが、家には帰れない……。
「家には帰れないよなぁ、あそこで生活は……出来ないよなぁ……。でもここに来るまでに、寝泊まり出来そうな所もなかったし。──はぁ、自分の家に帰るしかないか……。ん~、あの家で生活するんだったら、あのままじゃ無理だ。まずは息のない皆を外に出して埋めてあげないと……」
行く当てがないので自分の家に帰らないと寝られない。まあ、子供の俺が家に帰らないとか、強くなるだとか、いくら良いように考えたって出来ることはたかが知れてる。
考えていた事が全て上手くいく訳は無い。
改めて考えてみると分かるのだが、強気な俺が姿を見せはじめ、全て上手くいく気がしていたのも事実。
そして、そうでもない現実に肩を落とした。
── 早く大人になりたいなぁ……。
降ろしたリュックをまた背負い、肉を自転車のカゴに乗せてバッグを荷台へ括る。
そして家に向かってペダルを漕ぎ出した。
「でも、こうやって毎日家と山を往復すれば、それだけでも体力がつくはずだ。うん、良いように考えよう。それに、息のない皆を外に運んで、穴を掘って埋めてあげれば相当体力が付くよな。──俺の力じゃ、人一人家の外に出すだけでも時間はだいぶ掛かるだろうけど……」
自分にそう言い聞かせながら山を離れ、一軒目の家を横切り町の中へと入っていく。
重く感じるペダルを踏み込み五軒目を横切ろうとした時、それは突然聞こえてきた。
「ま゛っでーーっ!」
「うぉーーっ!」
人の声が聞こえてくるとは思っていなかったので、驚き過ぎて叫んでしまった。
無意味に自転車のブレーキを思いっ切り握ってしまう。すると足音が近づき、振り返る前に自転車がいきなり揺れた。
「い゛がないで~!!」
「ぎぃやぁーーっ!」
自転車を前後に揺らされ、聞こえてくる濁音ばかりの言葉に恐怖を覚える。
思考が追いつかずに、まだ明るいのにお化けが出たんだと思い込んだ。
怖すぎて思いっ切り目を瞑り、ブレーキを力一杯握り締めていると、今度は泣き声が聞こえてくる。
「ううっ、ひんっ、ひんっ、ずずっ……」
その泣き声に、恐怖心が関心に変わった。
この泣き声はお化けじゃなくて人だなと思い、怖くて瞑っていた目を、今度は逆にどんな人が何故泣いているのかが気になり開けた。
ゆっくりと振り返ると、女の子が自転車の荷台を掴み俺の方を見て涙を流している。
「や、やっぱり人か……。お化けじゃなくてよかった」
ショートカットで、背は俺より高そうだ。俺の身長が135なので、150以上はありそうに見える。
腫れている目に涙をいっぱい溜めて、溜めきれない涙はどんどん頬を伝って流れている。鼻水を垂らし、口はへの字口になっているので、変な顔に見えた。
「どうしたんだよ? っていうのは変か……。──なんで泣いてるの? って聞くのも可怪しいな……。こういう状況の時は何て話し掛ければいいんだ?」
ぶつぶつと言いながら悩んでいると、女の子が笑い出した。
「ひんっ、ふふっ、へん゛っなの……」
「怖いから泣きながら笑うなよ……。──君は一人なの?」
女の子が涙を拭いながら答える。
「ぐすっ。うん、皆帰ってこない、の。家に一人で居たら凄い唸り声が聞こえて……。窓の……外をみたら、モンスターだらけで、怖くて、地下に隠れ……てたの。ううっ」
── 俺と同じだ。
「家族の人達はどこに行ったんだよ」
女の子に流れる涙はもう無い。落ち着いた様子で話し出した。
「昨日はね、町内の集まりで、お母さんとお父さんがね、近くのグラウンドに出掛けたんだけど……帰ってこなくて。──2人共帰ってこないから、昨日の夜は凄く寂しくて……お母さんとお父さんに会いたいよ~」
たぶんここに来る途中に見たグラウンドだ。あの黒くなった人の山。俺が見た限りでは生存者はいなかった。
もし昨日息があったとしても、今日の時点で起き上がれていないなら恐らくもう命はないだろう。
その事を話そうかとも思ったが、やっぱり話すのは止めた。
「そっか……それは心配だよな。──俺は、家の人全員死んだんだ」
女の子がまた悲しげな顔をしている。
「そ、そうなのね……。外を見ていても、人も車も通らないし、周りの家も焼けたり壊れたりしてたから、この周りの人達もモンスターに殺られたのかも……。私のお母さんとお父さんも……もう、死んじゃってるのかな?
ぐすっ……ここらへんで生き残っているのは私達だけかもしれないわ。そんなふうに考えたくはないけど……。貴方はここで自転車に乗って何をしてるの?」
恥ずかしいが、嘘をつく理由もないので正直に答えた。
「──ん~、あの、俺……弱いんだよ。価値が0円なんだ。──皆モンスターに殺られたから頼れる人もいないし、こんな自転車じゃ山を越えることも出来ないだろ? だからそこの山で体を鍛えながら、モンスターを全部倒してやろうと思って……。変なヤツって思わないでくれよ? これでも本気で言ってるんだから。──それで、今はその帰り」
女の子が驚いた顔をしている。
「価値0円って……。もしかして、神竜貴史君って貴方のこと?」
俺の名前を知っている? 噂か……やっぱり噂が広がっているんだとこの時実感した。
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