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出会い
『最強』は最強だった
しおりを挟む✡貴史視点
京子の昔話を聞いて俺は笑った。
「はははっ。なんだよ、京子って天然なんだな」
「天然って言わないで! 好奇心が旺盛なだけよ……」
でもなんか安心する。
京子は年上だし何でも出来るのは心強いけど、少し天然な方が一緒にいて楽しい。
「ちょっと気になったんだけど、お爺さんはなんでそんなスキル玉を持ってたんだ? お父さんが会社員なら、お爺さんも冒険者じゃないんだろ?」
「私も気になってその時にお父さんに訊いてみたんだけど、お爺ちゃんは昔からレア物が好きらしいの。別にスキル玉が特別好きではないらしいんだけど、レアだと聞いたら何でも買う癖があったみたい。良くも悪くもレアなら買うんだって」
人の趣味に口を出すのはナンセンスだ。だけど一つ言わせてもらえるなら、悪いレア物は隠しておいてほしいなぁ……。
ここで俺はサッと右手を高々と挙げた。
「質問! スキル玉ってどうやって手に入れるんですか?」
「本当に貴史は何も知らないのね……。まぁ、スキルに興味がなかったんだから、しょうがないか。──あのね、スキル玉はエネビ玉と同じでモンスターを倒したらドロップするのよ。エネビ玉との違いは、エネビ玉は必ずドロップするのに対して、スキル玉はドロップしたりしなかったりするの」
「そうかぁ。だから、俺がゴブリンを倒した時にエネビ玉はドロップしたけど、スキル玉はドロップしなかったんだ」
京子の説明が続く。
「B級以下のモンスターなら、スキル玉のドロップ率は30%。B級なら25%。A級だと10%。S級は5%らしいわよ。私も本で読んだだけなんだけどね。だいたいそれ位って書いてあったわ。──ついでにだけど、そのモンスターが保有してるスキルがドロップするの」
「結構低い確率なんだなぁ。U級なら1%とかかな? そんなモンスターが保有してるスキルがドロップされたら、奇跡だ。──でも、職業に付与されるスキルなんかは、モンスターが保有してることってあるのかな? もしモンスターが保有してないスキルが欲しくなったら? この場合、スキルがドロップすることはないから、自分は保有出来ないのか……」
京子が口角を上げた。
「スキルは入れ替えが出来るんだけど、スキル玉を握って入れ替えたいって念じると、手に握ってたスキル玉のスキルと元から保有してるスキルが入れ替わるのね、そうすると手に握ってるスキル玉に元のスキルが入るのよ。職業に付与されるスキルはモンスターが保有していないのが多いから、あまり聞かない使い勝手の良いスキルは超レアってこと。だから高く売れるらしいわよ。スキルショップっていうのが都会にはあるらしくて、そこで売り買いできるんだって。──余談だけど、病気や事故、寿命で亡くなった人のスキルは消えてしまうけど、殺人ならモンスター同様ドロップするとかしないとか?」
うん。眠たくなったてきた。
「聞いてる?」
「き、聞いてるよ。最後の方は怖いから耳を閉じてたけど……スキルショップか、行ってみたいなぁ。──っで、そろそろ俺のスキルはどんな感じなのか教えてくれる?」
京子が自慢気に胸を張った。
「貴史のスキルは、もう私の頭の中に情報があるからすぐに見れるわよ。心の準備はいい?」
京子が自慢気にしている意味は分からないが、俺は生唾を飲み込んだ。
最強じゃなくて最悪だなんて言われ、名前が格好いいだけで全く使えないお飾りだと思っていた俺のスキル『最強』。
俺の中では、もう何も期待していなかった。
その『最強』という名のスキルの謎が京子によって解明され、今まさに開示される。
京子に俺のスキルはチートだと言われ、どんなスキルなのか気になってしょうがない。
俺は緊張で手にかいた汗を服で拭いながら、京子に返事をした。
「う、うん。お願いします……」
「じゃあいくわよ、『情報漏洩』!」
京子がスキルを発動させると、空間に俺のスキルの情報が浮かび上がった。
━━━━━━━━━━━
スキル ─ 最強
詳 細
・自分に害のあるもの全てを吸収して強さに変換する
(傷や病気等身体に異変が生じても強さに変換する過程で治るが、五感は機能するので苦しさや痛み等は感じる。寿命には抗えない)
・倒した相手のスキルをコピーする
(但し情報を読み取るスキルはコピー出来ない)
━━━━━━━━━━━
俺は開いた口が塞がらなかった。
京子がそんな俺の肩に手を置いて、こう言葉にする。
「貴史は呪われてなんかいないわ。まだ体は子供だけど、頑張って鍛錬して大人になれば、地球上で貴史に勝てる人なんていなくなっちゃうわよ。──なんで泣いてるの?」
── 泣いてる? 俺が?
指で目の下を拭ってみると、確かに濡れている。
でも悲しいんじゃない。
自分のスキルの情報を見て嬉しいとは思うが、今のこの感情を表現するには言葉が違う。
安堵。
そう、今はこの言葉がしっくりくる。
俺は呪われてなんかいなかった。
そして、文字の意味が逆でもない。最強じゃなく最悪だとしたら、こんなスキルにはならないはずだ。
「俺のスキルは何かをするために発動させるものじゃなかったのか……。──京子……ありがとう。まだ10歳だけど、10年生きてきた中で今日が一番幸せだよ」
横に座っている京子の両腕が俺の首に回る。
「貴史、良かったね。スキルの情報を見ただけで知らずに涙が流れるなんて、かなり辛い思いをしてきたんじゃない? 貴史の職業が『神』でスキルは『最強』。私、『最強』の詳細を見て思ったことがあるの。神だから最強だし、神にステータスなんか無いのよ。だから、貴史の価値は0円。だって最強の神、そう、最強神に値段なんか付けられないでしょ?」
京子の話を聞いていると、ずっと何かが喉に詰まっているような状態や、ずっと胸の中をギュッと握られているような息苦しさ、足元から血の気が引き言いようのない不安に駆られている感覚から開放されていくのが分かる。
そして、また涙が頬を伝う。俺は、頬を伝う涙を拭いながら思った。
── 不安がないってこんなに楽なんだ……。よ~し、この職業とスキルに見合う身体を作ってやる。──って、こんなことを考えられるようになる日が来るとは思いもしなかった。京子には感謝しないと。そうだ!
「俺の目標が決まったよ」
俺の首元に回っている京子の腕に手を添えてそう言葉にした。
京子が俺の首に腕を回したまま訊き返してくる。
「どんな目標?」
その問に、俺には珍しく力強い声で京子に答えた。
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