理想メガネ男子と子猫

カナデ

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にゃん 2 子猫は喉を鳴らす

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 ◇◆◇◆◇ 晃 side


「ブハァッ!ブクククク、だ、だって、晃っ。お前こんなの言われたの初めてだろ?」

 絶句。
 絶句するっていうことはこういうことなんだな。と恭介と和樹の笑い声を聴きながら思った。
 選ばれた時にはなんで俺なんだ?って思ったけど。
 キラキラ顔を輝かせて言ったセリフがあれ。そのままキラキラした眼差しで見つめられて、どういう態度をとったらいいのか分からずに固まった。
 勿論そんなことを言われたのは産まれてこの方初めてだ。顔を褒められたことはいくらでもあったけれど、そんなメガネを掛ける理想のラインとか…。はあ?って思うけど。

「ね、ねえ君。ちょっとこれからお茶でもしない?もうちょっと詳しく聞きたいな。僕と恭介のメガネが似合う理由とかもね」
「ええ、いいですよっ!ついでに出来たらでいいんですが写真もお願いしてもいいですかっ!明日からの為にっ!」

 まあこの娘に興味がわいたからお茶はいい。もうちょっと話を聞いてみたいと俺も思ったし。でも。
 彼女のこの明日からの為っていうのは何なんだ?写真を撮りたいと女に言われたことは覚えていないくらいはあるけれど、彼女の言葉のこれは…。

「プッ!も、もしかした明日からの為ってさっき言ってた僕達が君の理想のメガネ男子だから?」
「そうですっ!探し求めてもうすぐ20年!の理想なんですよっ!ちょっと皆さん顔が良すぎてますけどっ!」

 はあ?良すぎる?もしかして俺のことも入っているよな?
「ぶわははははっ!か、顔が良すぎるっ!だ、だめだ。おかしすぎるっ。俺、ちょっとお茶買ってくるからそこの裏手のベンチでも座ってて」
 なんなんだ、この娘。こんなに驚いたのも意表をつかれたのも、吹き出しそうになるくらいに笑えるのも生まれて初めてだ。本当にこの娘は女性なのか?他の別の生き物なんじゃないのか?

「宜しく、恭介。ほら晃も行くよ。ごめんね、多分ここの中のお店とかフードコートとかだと話しても落ち着かないと思うから。そこの裏手のベンチでもいいかな?ちょっと日陰だから寒いかも知れないけど人が来ないから、さ。」
 この店の並びの裏手は隣のビルとの間にあって、その隙間にベンチが置かれている。ほとんど知る人ぞいない場所だけに、ここに来る時の俺達のいつもの休憩場所だった。

「ああっ!成程っ!皆さんっさきから女の方が凄く寄って来てましたものねっ!やっぱりイケメンさんだと大変そうですね~」
 そう。真面目に実はそんな理由なんだが。何故女性のはずのこの娘はそこまで他人事なんだ?本当に予想外な事ばかりでいっそ気分爽快になって来た。外に出てこんな気分になるのはいつ以来だ?

「プププっ。でも君には顔が良すぎて逆にちょっとなんだろう?僕たちは」
「はい!やっぱりメガネをかけたらカッコよく見えるっ!てとこのポイントもあるんですよっ!でも皆さん元が良すぎるからいくらメガネがばっちり似合っててもカッコよく見えるのはメガネのおかげじゃないんですよねっ。そこだけが残念ですが…」
「アハハハハっ!残念、残念かっ!本当に面白いね、君!」
 残念!そこまで言のか、女なのに。確かに面白いな、この娘。

「おいおい和樹。そういう面白い話は俺が戻ってからにしてくれよ。ホラ、適当に買って来たから。ねえ彼女は甘いの大丈夫?一応カフェラテ買って来たんだけど、大丈夫かな?」
「はい!ありがとうございます。すいません、今お金を…」
「いいよいいよ、それくらい。こんなとこに付き合ってベンチでお茶なんだし。とりあえず座って。で、自己紹介から始めようか。せっかくなんだし」
 いいだろ?とコーヒーを渡されながら視線で問われ、頷き返す。

 普段俺は絶対外で女とはこういう機会をとらない。けど、彼女のことはもっと知ってもいいか、という気分になっている。そんな俺の心情もこの二人にはお見通しなんだろう。
 彼女の座ったベンチに間を開けて和樹が座り、俺は隣のベンチに座る。恭介は座らずに彼女の前に立って手すりに寄りかかった。
「じゃあまず俺からね!俺は相沢恭介。こいつらとは生まれた時からの幼馴染だよ」


 ◇◆◇◆◇ 綾乃 side

 ああ、3人とも生まれた時からの付き合いなんだ。どうりで距離感がない付き合いって感じだったもんね。
「僕は花村和樹です。ちなみに3人とも25歳ね」
「…祠堂晃だ」
 おお、こんな声なんだ。
 茶髪なフレームレスさんが花村さん、オールバックの銀のフルフレームの人が相沢さん。そしてほぼ声も出さずに笑っていたから声をまともに聞いたのも初めてなのが祠堂さん。この人一言も話さなかったからね。
 3人の中で一番の好みなのがこの祠堂さんなんだけど。ああ、この人、声もいいんだな。

「私は三宅綾乃です。ちなみに25歳なんで同じ年ですね!学年では1つ上かもですが」
「ええっ、どういうこと、それっ」
「私の誕生日、4月1日なんです。だから同じ年だと大体学年は1つ上で」
 よくエイプリルフール女ーとか小学生の頃は言われてたっけな。

「ああ、成程。うわーっ、なんか年上って感じしなかったわ!小っちゃいから三宅さん、っていうか子猫ちゃんって感じがするわ。ミケ猫よりもぶち猫イメージだけど」
「うわっ!それって私が落ち着きがないってことですよねっ。う、ま、まあ、今日は皆さん見てフィーバーしてしまってはしゃいでますけどっ!」
 相沢さんに子猫って言われて小さい頃のあだ名を思い出す。この人知ってるわけないよね?小学生の頃はミケって呼ばれてたの。

「ねえねえ三宅さん?ミケちゃん?うーん。…綾乃ちゃん、かな?何か月かの差しかないからいいよね、綾乃ちゃんで」
「えっ、ええっっと」
 あ、綾乃ちゃんっ?男の人に名前を呼ばれるなんて初めてだっっ!女友達なら言われたことあるけれど!まあ彼氏なんていた試しは生まれてこの方ないんだから当たり前だけどねっ!(ヤケ)
「イヤ?ああ僕達のことも名前で呼んでいいよ。僕は和樹であっちが恭介。で、君が一番気に入ったメガネ男子な晃ね」
「ええっと。か、和樹、さん?」
 うっわーー。男の人の名前呼びなんてハードル高いねっ!まあ、でもなんかこの人に言われるといいかなって思えてくるから不思議だわー。さすがイケメン。女子扱い能力半端ないねっ!まあ、私は例えどんな扱いでも理想のメガネ男子に言われたら、はい!って言っちゃいそうだけどねっ!

「そうそう、それで。ねえ、晃の理想的なメガネ男子具合は聞いたけどさ。僕と恭介のも教えて欲しいな」
「はいっ!和樹さんは顔のバランスとラインが凄いですっ!どんなフレームを掛けても似合う鼻、耳、頬の配置が絶妙なんですっ!」
 和樹さんはどちらかと言うとキレイ系で。多分何年か前までは女装も似合ったんじゃないかな?って感じのユニセックスな顔で、顔が小さくて長すぎず短すぎず丁度いいバランスだった。
 絶対どんなメガネ掛けても合わないメガネがない顔だわっ!ある意味追い求めていた理想のメガネ男子の完成形の顔なんだよねっ!

「へえー。そういわれれば和樹はサングラスとかしても似合ってたよな。妙な迫力もあったけど。で!俺は?俺はどの辺が似合ってるところ?」
「恭介さんは指ですっ!ブリッジを上げる指がもう理想的で!細すぎてもごつすぎてもいない、色気がある指ですよねっ!」
「指っ!ここでまさかの指かっ!メガネ好きなのに指まで関係あるのっ!まあ、色気があるっていうのはうれしいけど」
「勿論ですよっ!メガネに関する仕草とか、もう萌えるところいっぱいですから!」
「アハハハハっ!本当に面白いね、ミケちゃんはっ!」
「ミ、ミケちゃんですか…」
「やっぱり子猫ちゃんみたいだからね。そうやって顔を輝かせて語ってるところなんて!」
 む、むう。確かに理想のメガネ男子をこうやって見られているからスーパーハイテンションは継続中だけど!脳内はもうルンバにサンバ踊りまくってるけどっ!だってこうやって話をしている間も、ひたすら眼福、どちらを見ても理想のメガネ男子しかいないのだから!

「そっかー。でも綾乃ちゃんのお気に入りは晃、ね。ね、綾乃ちゃん。晃もどんなメガネでも合うって言ってたのよね?」
「ええ!鼻と耳のラインが凄く絶妙なんで絶対どんなフレームでも合うと思うんですっ!」
「じゃあ、ちょっと晃、いい?」
 なんかニヤリ、とちょっとなんか黒いような笑みを浮かべてた和樹さんが立ち上がって、晃さん(何も会話してないから呼びずらいけどどうしよう)の前に立って何やらいじり出した。
「これでよし。ほら晃、仕上げにちょっと僕のメガネ掛けて。ねえ、綾乃ちゃん。これならどう?晃は」
 これ、と和樹さんに背中を押されて視界に入るように正面を向いた晃さんを見ると。

「おおおおっ!やっぱり細いテンプルも似合いますねっ!ブリッジも細めでもしっかり鼻のカーブにあってるしっ!やっぱり思った通りですっ!」
 太い黒ぶちのフレームだとちょっと隠されていたラインが細めのフレームだと全面的に見えて。
 うっわー!いいわ、やっぱりっ!これぞ追い求めていた理想のラインっ!
 まあ、和樹さんのメガネだから顔の幅に合ってない分、蝶番からテンプルのラインが顔に合ってないから、絶妙なラインを拝むにはちょっと物足りないけれど。

「ぷぷぷっ。やっぱりそれだけなんだ。晃の前髪いじったし僕のはフレームレスだから顔も全面的に見えてるんだけど?」
「?ああっ!すっごいおきれいな顔をしてますよね!でもいくら太いフレームしてても顔立ちがいいのは気づいてましたよ?眼鏡の似合う顔のラインを私はじっくり見てましたからっ!」

 そう。最初に見た時から気づいてたから。3人とも全員がイケメン過ぎて勿体ないって。
 ハッキリ見た晃さんの顔は、キレイ系な顔立ちで多分誰が見ても文句なく美形だという顔だった。好みを超越してる、そう、芸能人でもなかなかここまで造形が理想的な顔立ちって見ない気はする、っていうくらいのイケメンさんだった。
 和樹さんも恭介さんもタイプの違ったイケメンさんだから、晃さんが変装?をやめてしまって3人並んだイケメンパワーは物凄かった!もう、そこら辺のアイドルも目じゃないって感じで。もう歌って踊ってないのが不思議なくらいだよ!
 こりゃ変装でもしないと外歩く気にはならないよね…。
 メガネを掛けたらイケメンに見える!んじゃなくて、メガネを掛けてイケメンに見えなくする!っていう目的でメガネを掛けるのだけは、個人的には納得出来ないところだけどねっ!

「じゃあミケちゃんは最初からイケメン過ぎて残念に晃も入ってたんだね」
「勿論ですよっ!絶対メガネかけたら見違えた!っていう王道パーツなのにキレイな顔すぎてメガネの魅力が全然発揮でないから残念ですよね…」

 本当に勿体ない。ああ、でも…。やっぱり見れば見る程メガネを掛けるには素晴らしいライン過ぎるっ!晃さんっ!

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