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2章 森の中の託児所が始まったようです

43 アインス達の飛行訓練の見学

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「おおっ、今日は晴れたな!これなら良く見えるだろうな。な、皆、良かったな!」
『『『『『うんっ!(ワンッ!)』』』』

 皆でお泊りした翌朝、今日はすっきりとした青空が広がっていた。これなら雪も少しは溶けそうだ。

 昨夜は皆でひっついておしゃべりしていたら、いつの間にか寝てしまっていた。
 目を覚ますと、俺の頭はロトムのお腹に乗り上げ、お腹にはクオンが丸まっていた。キキリはきちんと俺の隣で寝ていたし、ライはドライの背中の上にいたけどな!
 そんな俺たちをアインス達が囲んで、羽毛で包んでくれていたからほっかほかだったから皆ぐっすりだったぞ!

 そして今日は、アインス達の飛行訓練を見学する予定だ。
 昨夜、思い立ったその場でアインス達に頼んだのだ。今日はアーシュが同行する訓練日ではないので、アインス達の飛行訓練を聖地でやって貰うことにしたのだ。
 最近ではアーシュの訓練日ではなくてもアインス達は崖で自主訓練をしているので、飛ぶ姿をきちんと見るのは久しぶりだった。子供達を引率してくれる時は、今でも子供達に付き合って歩いて聖地へ行ってくれているのだ。
 子供達も楽しみなのか、はしゃぎながら朝食を済ませると皆で聖地へ向かった。

『よーーし!じゃあ、聖地の上空を飛び回るから、首を痛めないように見てろよーーーーっ!』
『おうっ!俺の格好いいところを見せてやるぜ!ちゃんと見てろよ!』
『あー……。あの二人が調子に乗って突っ込んできたら、構わず避けて下さいね。その時はシルフに頼みますので』

 アインス達も子供達の期待した眼差しを向けられて、かなり張り切っているようだ。

「まあ、くれぐれも無理しないでいつものように飛んでくれな!俺もアインス達の成長を見れるのは楽しみだけどな!」

 そう声を掛けると、返事をして順番にアインス達が助走を付けて空へと飛びあがった。
 以前はかなり長い距離を助走しなければ飛べなかったし、上空へ上がるにももたついたり、風を読み切れずに上がり切れなくて着地したりしていたのに、全員がスムーズに風を捕まえて上空へと昇って行く。

「おお、すごい!かなり安定した飛行になっているじゃないか!」
『すごい!』『あんなに飛べるなんて』
『キュウーンッ!すごい、すごい!私も、飛びたいっ!』
『ギャウギャーウッ!』
『ワンッワンッワンッワンッワンッ!!』
「お、ハーツ!上見てそんなに走ったら転ぶぞ……って、ああ、ホラ。大丈夫か?ってまた走っているし。ハーツは本当に元気いっぱいだなぁ」

 かなり上空まで一気に登ったアインス達は、そこから旋回しながら高度を変えて飛んでいる。その姿をハーツが走って追いかけて行った。

「でも、アインス達、あんなにもう飛べるようになってたんだなぁ。青空に赤が生えて、すごくキレイだ」

 雲一つない青空に舞うように飛ぶアインス達は、太陽の日差しを受けて羽が朱金にキラキラと輝き、後ろに聳え立つ世界樹と相まって、とっても幻想的な光景だった。

『すごい……僕も、いつか、飛べる、かな』
「ライ……。焦らなくても、絶対にライも自由に空を飛べるようになるよ。その為に、一つ一つ頑張ろうな。一人で無理しなくていいんだ。アインス達にだっていくらでも教えてくれるからな」
『うんっ!僕、頑張る』

 最初は俺の肩にとまってアインス達が飛び立つのを見ていたライは、空を自在に舞うアインス達に引きずられたように、俺たちの周囲を飛んでいた。


 しばらく上空を飛んでいたアインスが、太陽をバックに俺たちの方へいきなり急降下してきた。それに追随するようにツヴァイまで急降下してくる姿に、飛ぶ前のドライの言葉を思い出す。

 あのドライの言葉で、アインスもツヴァイも急降下する気になったんじゃないよな!おい、本当に大丈夫なのか?

「皆、落ち着けよ。大丈夫、大丈夫だからな!」
『おおお!』『かっこいい!!』
『ビューン、ギューンッ!いいなぁ!私も飛んでみたいっ!』
『ギャギャギャ!』
『ワウーンッ!』
『すごい、角度!いいな、いつか僕もやりたい!』

 ……あれ?内心でかなりわたわたしつつ、取り繕って皆を安心させるべく声を掛けたのに、子供達は全くもって怖がりも動揺もしていなかった。

 あれぇーー?なんで皆、そんなのんびり?

 つい呆然とアインスとツヴァイから目線を外して子供達の方を見てしまったが、鋭いアインスの鳴き声にハッと顔を上げると。

『ヒューーーーーーーーーーッ!』

 俺のすぐ上空を急降下から急上昇したアインスが横切っていった。

『『『『『『わーーーーっ!すごーーいっ!(ガウーーンッ!)』』』』』』

 急上昇の時にかなり羽がバサバサしていたのは、まあ、ご愛敬だろう。
 そして飛び去るアインスを見送ると、今度はツヴァイが迫って来てーーーーー。

「っ!?ちょっと、ツヴァイ!危ないだろうがーーーーっ!!」

 急降下して俺たちのすぐ近くまで来て、アインスのように急上昇することなくそのまま超低空飛行のまま横を通りすぎて行った。
 その際に暴風が巻き起こり、一瞬転ぶかと思った。ライは!と思って急いで探すと、俺たちとは離れたところを飛んでいる姿を発見してホッとため息が出る。

『うわっ、うわぁっ!落ちるーーーーーっ!』

 そしてそのツヴァイは、というと、さき程の超低空飛行は風の制御に失敗した結果だったらしく、そのままの勢いで花畑へと突っ込む寸前で不自然に逆風に煽られて勢いが弱まり、なんとか不時着していた。

『まったく、その場ののりで出来もしないことをやろうとするからですよ』
『お前が挑発したからだろう!!でも急降下までは出来たじゃねぇかっ!』

 着地したすぐ傍にドライがストンと着地して呆れたようにツヴァイをからかいだす。言い合い出した二人をポカンと見ていると、そこにアインスも疲れたようにドンッと着地した。

『いやーーーーっ!勢いでやったけど、さすがに羽に負担がかかって大変だったぞーーー!ハッハッハー!まあ、成功したし、なんとかなるもんだなーーーー!』
「っておい、二人とも!なんだよ、無茶するなよなっ!俺は普段通りの訓練の様子を見せて貰えたら良かったのに!」

 今のが行き当たりばったりでやったんだったら、失敗したら大事故だぞ!!まあ、ドライの言葉もあるから、シルフ達がなんとかフォローしてくれるのかもしれないけど、それでもあんま無茶はして欲しくないな……。

『まあ、父さんがいればこんな無茶をやったら無茶苦茶怒られますからねぇ。子供達の前でかっこつけたいのは分かりますが、イツキ、心配しないで下さい。今度父さんに今日のことは言っておきますから』
『『おいっ、ドライっ!お前が焚きつけたんだろうがーーーーっ!!』』

 言い合いをしだした三人を啞然と見ていたら、子供達は興奮してアインス達の方へ走って行った。

『すごかった!!』『かっこよかったぞ!!』
『キュアンッ!すごいすごいっ!いつか私も乗せてねっ!』
『ギュアッ!ギャウゥウ!』
『ワウンワウン!ワウーーーンッ!!』
『すごい、すごい、すごかった!すごかったよ!』

 ロトムとクオンは興奮してアインスに飛び掛かり、キキリもツヴァイの検討をたたえて脚を叩いているし、ハーツは三人の周りをぐるぐる走り出した。そしてライも三人の周りの空をくるくる飛んでいる。皆大興奮だ。

『おう!待ってろよ!もっと大きくなってもっと安定して飛べるようになれば、イツキと一緒に乗せてやるからな!』

 聞こえてきたツヴァイのそんな言葉に、ちょっとうるっと来たのは内緒だ。

 ああ、本当にあの雛がこんなに育ったんだなぁ。

 そう、しみじみ噛みしめながら、子供達のそんな幸せな光景をそっと見守っていたのだった。

 




***
今日はアインス達の見せ場でしたー!
もうちょっと冬が続きます。
どうぞよろしくお願いします<(_ _)>

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