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3章 世界樹と新たな出会い
53 世界樹へ報告をしたようです
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なんとかドワーフ達にいつものように接して欲しい、という俺の要望をのんでもらい、やっと今回来て貰った用件の依頼の話を出来たのは、結局朝食を食べながらになってしまった。
……いや、いつもの起床時間まですったもんだがかかるとは思わなかった。ユーラはまだほとんど意思表示もできないみたいだし、もうちょっと大きくなった時に俺を抜いてああいうことはやって欲しい。
『では、急ぐのはユーラ様を寝せておくのにちょうどいい大きさのベッドと洋服ですな?』
「そうそう。あとは、だっことおんぶが出来るだっこ紐があればいいかなー。それがあれば、ユーラをずっと抱っこかおんぶしていられるしね」
それはどんなものですか!!と興奮するドワーフ達と小人の精霊、トントゥ達の勢いに朝食を食べる手を止めて、昨日ドライにしたように身振り手振りで説明した。
そして一応こんな感じ、と地面におぼろげな記憶を思い出しながら説明する。近所の公園でお母さん達の集会?をしていて、最近の抱っこ紐はこんななのかぁ、と思わず見たんだよな。
「確か、紐は太目で、赤ちゃんのお尻をしっかりと支えるのが良かったんだっけかな?」
『なるほど、興味深いですな!!では、トントゥ達と一緒に丈夫な肌触りのいい布を選び、いくつか作ってみるので試作ができたら試してみて下さい』
「お願いします!」
フムフム、と頷くドワーフのデントさんは、家を作ってくれた棟梁とはまた違うドワーフだ。ドワーフにも専門があるようで、こういう小物はデントさんが一番得意らしい。
「あと、肌触りのいい布ができたら、俺の下着も頼んでいいかな?こっちの下着はどうも頼りなくて……。俺のいた世界の下着をできたら作って欲しいんだ」
『ほおう!!それはとても興味深いですな!!ユーラ様の物が一通り作り終わりましたら、是非!異世界の服や小物などを教えて欲しいですな!!』
「あ、うん。いつも色々作って貰っちゃっているし、いくらでも話すよ」
ドワーフ達はやはり誰もが未知の物への興味が強いらしく、今回も報酬は酒と異世界の知識でいいと言ってくれた。
洋服を手に入れられそうで、俺としてはかなりホッとしたよ。冬に入る前に貰った布でどうにか服を作ろうとしたんだけど、どうやっても無理だったんだよな……。ちょっとしたボタンつけとかほつれを直したりしかしたことなかったのに、いきなり服は無謀だった。
色々と話し込んでいると子供達がどんどん来る時間になってしまい、慌てて残りの朝食をかきこんだ。
『イツキーーっ!あっ!……むう』
ケットシーとクー・シーの子供達を出迎えていると、クオンがやって来た。
いつものように俺に飛びつこうとして、抱っこしているユーラに目をやって止まる。恐らく母親にユーラを優先するように言い含められたのかもしれない。
「どうした、クオン。ほら、おいで」
しゃがんでポン、とユーラ抱いていない方の手で膝を叩くと、うれしそうにトタトタ走って来たクオンがポスンと膝に顔を乗せた。
「おはよう、クオン。今日も元気だな。ユーラはクオンよりも赤ちゃんだから、ちょっとだけ我慢しような」
『……うん、分かった。でも、たまには抱っこしてギュッともして欲しいの』
「ふふふ。分かっているよ。今、ドワーフ達に色々便利になる物を頼んだから、それができ上ればクオンも抱っこできるからな」
『うん、待ってる!』
すりすり手に頭をすりつけるクオンがかわいくて、片手でもふもふしまくってしまった。
それから子供達が来る毎に皆ユーラの顔を笑顔で覗き込んで行く姿がとても可愛い。皆本当にいい子だよな!
全員集まると、いつものように聖地への日課だ。
泉で子供達と別れ、抱っこしたユーラと一緒に世界樹へ向かおうとすると。
『ギャギャ!』
「お、キキリ。キキリが今日も護衛をしてくれるのか?」
『ギャーウギャギャ!』
「ふむ。これから日課には毎日キキリがついて来てくれるんだな?」
うんうん、と頷くキキリにお礼を言い、ゆっくりと泉の湖畔を歩いていると。
「あれ?泉のウィンディーネ達、なんだか集まって来てないか?」
『ギャーギャギャ、ギャウー!』
キキリが身振り手振りでユーラに挨拶を、と教えてくれ、そういえば俺の家には井戸しか水場がないからウィンディーネ達の姿が今朝の挨拶でなかったことを思い出した。
またあれをやるのか……?まあ、でも小さな精霊達の声は俺には聞こえないし、ユーラの顔見せはしとくべきだよな。
「皆!昨日新たに誕生した、世界樹の守り人のユーラだ。この通りにまだ赤ちゃんだから、見守っていてくれな」
泉の湖畔にしゃがみ、ユーラの顔が良く見えるようにウィンディーネ達に見せると、いつも楽し気に跳ねるウィンディーネ達も今日は静かに一礼をした。
「いつも子供達を見ててくれてありがとう。もうちょっと温かくなったら、ユーラも泉で水浴びさせて貰うから、その時はよろしくな!」
そう言うと、いつものように楽し気に水面を跳ねながら手を振って子供達の方へと去って行った。
それからもシルフがたまにユーラの顔を覗きに降りて来たり、ノームやスプライト達が挨拶に来たりとしながらゆっくりと進み、いつもの世界樹の根元に辿り着いた。
世界樹の根のすぐそばにそっとユーラを横たえ、キキリに見ていてくれるように頼む。
そしていつものように世界樹の葉を手に、根に手を添えて目を閉じた。
ユーラは元気にしていますよ。……あまり表情が変わらないから分かりずらいけど、子供達と一緒で楽しそうに見えます。ユーラを赤ちゃんとして誕生させたのは、ゆっくりと楽しんで大きくなって欲しいからですよね?俺にはこの世界はここしか知らないのでどんな状況なのかは分かりませんが、こうして神獣、幻獣、そして精霊の子供達が皆元気に育っていますから、少しでも争いがなくなり、平穏になった世界でユーラはのびのびと大きく育って欲しいと思っています。見守っていて下さい。
いつもの日課の前に、世界樹へと語り掛けてから、温かな陽ざしの中光合成して大きくのびのびと葉を伸ばす様を想像して魔力を注いだ。
世界樹の葉を貰った時のように、語り掛ければ世界樹はこちらの話を聞いているのではないか、と思っている。
今日は昨日までと違い、穏やかに魔力が流れていき、ほどなく止まる。最初の頃に戻ったようだった。
そっと目を開けて世界樹を見上げると、遥か高いところにある枝から優しい光が降り注ぐようにキラキラと煌めいていた。
それを見て、世界樹の葉をしまいユーラを抱っこすると一緒に世界樹のすぐ下へ立つ。
そうすると一層キラキラと煌めいて、ユーラに光が降り注ぐようだった。
「さて。次はユーラの食事だな。花は……」
光が収まりキョロキョロと見回すと、丁度根の向こう側に咲いていた。その花を摘んで昨日のように世界樹の幹へ花を捧げると、先ほどまでの煌めきがまだ残っているかのように、キラキラと煌めきながら雫が花へと降り注いだ。
「おお、キラキラだな、キキリ」
『ギャウー』
煌めきはすぐに収まり、最後の雫が落ちるとそっとユーラの口元へと寄せる。スウッと茎を吸うのを確認し、吸い終わった花を先ほど摘んだ辺りの地面へと刺した。
昨日はまだ動転していたからそのままマジックバッグへ入れて持ち帰ったが、今日はなんだかそうした方がいいような気がしたのだ。
『ギャギャギャ!ギャウー!』
「お、おおーー!すごいな、あっという間に元通りだ!」
刺した時は花の重みに傾いていた花が、みるみる内に真っすぐになり、まるで摘み取る前のように根付いたのだ。
「フウ……。さすがファンタジーな世界!って感じだなー。こういうのを見ると、本当に魔法のある世界に来たんだと実感するよな」
『ギャウー?』
「ああ、なんでもないよ、キキリ。もうちょっとだけここでゆっくりしたら、皆の元へ戻ろうか」
『ギャウギャウ!』
ユーラを抱っこし、キキリとのんびりと世界樹の周りを歩いてから、泉で遊ぶ子供達の元へ戻ったのだった。
****
次回は子供達との交流をもう少し増やしたいですね!!
新しいもふもふの子はもうちょっとお待ち下さい。
どうぞよろしくお願いします<(_ _)
あといよいよ明日!書籍発売です!(こそっと)
……いや、いつもの起床時間まですったもんだがかかるとは思わなかった。ユーラはまだほとんど意思表示もできないみたいだし、もうちょっと大きくなった時に俺を抜いてああいうことはやって欲しい。
『では、急ぐのはユーラ様を寝せておくのにちょうどいい大きさのベッドと洋服ですな?』
「そうそう。あとは、だっことおんぶが出来るだっこ紐があればいいかなー。それがあれば、ユーラをずっと抱っこかおんぶしていられるしね」
それはどんなものですか!!と興奮するドワーフ達と小人の精霊、トントゥ達の勢いに朝食を食べる手を止めて、昨日ドライにしたように身振り手振りで説明した。
そして一応こんな感じ、と地面におぼろげな記憶を思い出しながら説明する。近所の公園でお母さん達の集会?をしていて、最近の抱っこ紐はこんななのかぁ、と思わず見たんだよな。
「確か、紐は太目で、赤ちゃんのお尻をしっかりと支えるのが良かったんだっけかな?」
『なるほど、興味深いですな!!では、トントゥ達と一緒に丈夫な肌触りのいい布を選び、いくつか作ってみるので試作ができたら試してみて下さい』
「お願いします!」
フムフム、と頷くドワーフのデントさんは、家を作ってくれた棟梁とはまた違うドワーフだ。ドワーフにも専門があるようで、こういう小物はデントさんが一番得意らしい。
「あと、肌触りのいい布ができたら、俺の下着も頼んでいいかな?こっちの下着はどうも頼りなくて……。俺のいた世界の下着をできたら作って欲しいんだ」
『ほおう!!それはとても興味深いですな!!ユーラ様の物が一通り作り終わりましたら、是非!異世界の服や小物などを教えて欲しいですな!!』
「あ、うん。いつも色々作って貰っちゃっているし、いくらでも話すよ」
ドワーフ達はやはり誰もが未知の物への興味が強いらしく、今回も報酬は酒と異世界の知識でいいと言ってくれた。
洋服を手に入れられそうで、俺としてはかなりホッとしたよ。冬に入る前に貰った布でどうにか服を作ろうとしたんだけど、どうやっても無理だったんだよな……。ちょっとしたボタンつけとかほつれを直したりしかしたことなかったのに、いきなり服は無謀だった。
色々と話し込んでいると子供達がどんどん来る時間になってしまい、慌てて残りの朝食をかきこんだ。
『イツキーーっ!あっ!……むう』
ケットシーとクー・シーの子供達を出迎えていると、クオンがやって来た。
いつものように俺に飛びつこうとして、抱っこしているユーラに目をやって止まる。恐らく母親にユーラを優先するように言い含められたのかもしれない。
「どうした、クオン。ほら、おいで」
しゃがんでポン、とユーラ抱いていない方の手で膝を叩くと、うれしそうにトタトタ走って来たクオンがポスンと膝に顔を乗せた。
「おはよう、クオン。今日も元気だな。ユーラはクオンよりも赤ちゃんだから、ちょっとだけ我慢しような」
『……うん、分かった。でも、たまには抱っこしてギュッともして欲しいの』
「ふふふ。分かっているよ。今、ドワーフ達に色々便利になる物を頼んだから、それができ上ればクオンも抱っこできるからな」
『うん、待ってる!』
すりすり手に頭をすりつけるクオンがかわいくて、片手でもふもふしまくってしまった。
それから子供達が来る毎に皆ユーラの顔を笑顔で覗き込んで行く姿がとても可愛い。皆本当にいい子だよな!
全員集まると、いつものように聖地への日課だ。
泉で子供達と別れ、抱っこしたユーラと一緒に世界樹へ向かおうとすると。
『ギャギャ!』
「お、キキリ。キキリが今日も護衛をしてくれるのか?」
『ギャーウギャギャ!』
「ふむ。これから日課には毎日キキリがついて来てくれるんだな?」
うんうん、と頷くキキリにお礼を言い、ゆっくりと泉の湖畔を歩いていると。
「あれ?泉のウィンディーネ達、なんだか集まって来てないか?」
『ギャーギャギャ、ギャウー!』
キキリが身振り手振りでユーラに挨拶を、と教えてくれ、そういえば俺の家には井戸しか水場がないからウィンディーネ達の姿が今朝の挨拶でなかったことを思い出した。
またあれをやるのか……?まあ、でも小さな精霊達の声は俺には聞こえないし、ユーラの顔見せはしとくべきだよな。
「皆!昨日新たに誕生した、世界樹の守り人のユーラだ。この通りにまだ赤ちゃんだから、見守っていてくれな」
泉の湖畔にしゃがみ、ユーラの顔が良く見えるようにウィンディーネ達に見せると、いつも楽し気に跳ねるウィンディーネ達も今日は静かに一礼をした。
「いつも子供達を見ててくれてありがとう。もうちょっと温かくなったら、ユーラも泉で水浴びさせて貰うから、その時はよろしくな!」
そう言うと、いつものように楽し気に水面を跳ねながら手を振って子供達の方へと去って行った。
それからもシルフがたまにユーラの顔を覗きに降りて来たり、ノームやスプライト達が挨拶に来たりとしながらゆっくりと進み、いつもの世界樹の根元に辿り着いた。
世界樹の根のすぐそばにそっとユーラを横たえ、キキリに見ていてくれるように頼む。
そしていつものように世界樹の葉を手に、根に手を添えて目を閉じた。
ユーラは元気にしていますよ。……あまり表情が変わらないから分かりずらいけど、子供達と一緒で楽しそうに見えます。ユーラを赤ちゃんとして誕生させたのは、ゆっくりと楽しんで大きくなって欲しいからですよね?俺にはこの世界はここしか知らないのでどんな状況なのかは分かりませんが、こうして神獣、幻獣、そして精霊の子供達が皆元気に育っていますから、少しでも争いがなくなり、平穏になった世界でユーラはのびのびと大きく育って欲しいと思っています。見守っていて下さい。
いつもの日課の前に、世界樹へと語り掛けてから、温かな陽ざしの中光合成して大きくのびのびと葉を伸ばす様を想像して魔力を注いだ。
世界樹の葉を貰った時のように、語り掛ければ世界樹はこちらの話を聞いているのではないか、と思っている。
今日は昨日までと違い、穏やかに魔力が流れていき、ほどなく止まる。最初の頃に戻ったようだった。
そっと目を開けて世界樹を見上げると、遥か高いところにある枝から優しい光が降り注ぐようにキラキラと煌めいていた。
それを見て、世界樹の葉をしまいユーラを抱っこすると一緒に世界樹のすぐ下へ立つ。
そうすると一層キラキラと煌めいて、ユーラに光が降り注ぐようだった。
「さて。次はユーラの食事だな。花は……」
光が収まりキョロキョロと見回すと、丁度根の向こう側に咲いていた。その花を摘んで昨日のように世界樹の幹へ花を捧げると、先ほどまでの煌めきがまだ残っているかのように、キラキラと煌めきながら雫が花へと降り注いだ。
「おお、キラキラだな、キキリ」
『ギャウー』
煌めきはすぐに収まり、最後の雫が落ちるとそっとユーラの口元へと寄せる。スウッと茎を吸うのを確認し、吸い終わった花を先ほど摘んだ辺りの地面へと刺した。
昨日はまだ動転していたからそのままマジックバッグへ入れて持ち帰ったが、今日はなんだかそうした方がいいような気がしたのだ。
『ギャギャギャ!ギャウー!』
「お、おおーー!すごいな、あっという間に元通りだ!」
刺した時は花の重みに傾いていた花が、みるみる内に真っすぐになり、まるで摘み取る前のように根付いたのだ。
「フウ……。さすがファンタジーな世界!って感じだなー。こういうのを見ると、本当に魔法のある世界に来たんだと実感するよな」
『ギャウー?』
「ああ、なんでもないよ、キキリ。もうちょっとだけここでゆっくりしたら、皆の元へ戻ろうか」
『ギャウギャウ!』
ユーラを抱っこし、キキリとのんびりと世界樹の周りを歩いてから、泉で遊ぶ子供達の元へ戻ったのだった。
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次回は子供達との交流をもう少し増やしたいですね!!
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