2 / 22
2
しおりを挟む
食事の後、ガーラが風呂へ行き、フローは居間で盗賊の道具を並べて、刃のあるものは磨き、スプレーなどは中身が少なくないか確認していった。クオはその横で盗賊の持つ不思議なアイテムを眺めた。
「ん? クオも興味ある~?」
鼻歌交じりに道具の確認をしていたフローが、クオに尋ねた。
「そうだな。便利な道具はどれくらい持っているんだ?」
フローは軽快に答えた。
「シーフの隠し道具はだいたい百五十くらいかな~。大きい物から小さい物まで揃ってるぜ」
「ウィンデラでは魔法アイテムは作っていなかったが、どこから仕入れているんだ?」
「シーフの隠し道具は、アイテムを作る専門の町があって、そこからウィンデラに回ってきてるんだよね~。今度、その町にも行ってみる?」
「怪しい町、ではないのか?」
クオは慎重に尋ねた。フローは肯った。
「そだねー。ウィンデラみたいに裏の者がいないと入れない町だね。ガーラに言えば、きっと行ってみたいと言いそうだけど」
商人のガーラは、珍しい魔法アイテムを仕入れるのが上手であった。クオはガーラが喜ぶことを想うと心が温かくなった。クオは低い声で呟いた。
「そうだな。今度、な」
フローもにっと笑った。
ガーラが入浴から居間へ戻ると、フローは魔法アイテムを片付けて、代わりに風呂へ行った。ガーラは濡れた銀色の髪をおろして、暖炉の前に座った。暖炉に炎は無かった。
ガーラは、リュックから本を出した。タイトルは西大陸の言葉で『夏の夜の異界の小話』。ガーラはクオに問いかけた。
「ねぇ、クオはチェスの時に見た、“向こうの世界”の同じクロスを持つ女学生に会ってみたい?」
「そうだな……。異世界は気になるが、会わなくてもいいな。恐らく向こうでも同じ事を言いそうだがな。心が繋がっているだけで、会わなくても心強い“相方”だったな」
クオは夏の間、心が繋がった女学生を思い出した。真面目で頼りになる性格だった。自分と似ている所があり、不思議な縁は楽しかった。
「向こうで、私と同じクロスを持つ少女と、クオの夢の女学生が会った時、私、クオだと分かったわ」
ガーラはクオの漆黒の瞳を見つめて言った。
「俺は何となく知り合いの感じがしたの覚えている。同じ白のポーンとしてな」
クオは視線にゆるく応えた。
「私はクオがどんな姿をしていても、あなただと分かると思うわ」
ガーラの言葉には熱があった。旅の中で、いつからか、クオとガーラは言葉を贈りあい、心を温め合うことがあった。クオはガーラの心に応えた。
「そうか……ありがとう、ガーラ」
「フローはどうだったのかしら?」
「“向こう”でも会ったが、性格がフローらしかったぞ」
「そうなのね。面白いわね」
ガーラは笑った。
「ん? クオも興味ある~?」
鼻歌交じりに道具の確認をしていたフローが、クオに尋ねた。
「そうだな。便利な道具はどれくらい持っているんだ?」
フローは軽快に答えた。
「シーフの隠し道具はだいたい百五十くらいかな~。大きい物から小さい物まで揃ってるぜ」
「ウィンデラでは魔法アイテムは作っていなかったが、どこから仕入れているんだ?」
「シーフの隠し道具は、アイテムを作る専門の町があって、そこからウィンデラに回ってきてるんだよね~。今度、その町にも行ってみる?」
「怪しい町、ではないのか?」
クオは慎重に尋ねた。フローは肯った。
「そだねー。ウィンデラみたいに裏の者がいないと入れない町だね。ガーラに言えば、きっと行ってみたいと言いそうだけど」
商人のガーラは、珍しい魔法アイテムを仕入れるのが上手であった。クオはガーラが喜ぶことを想うと心が温かくなった。クオは低い声で呟いた。
「そうだな。今度、な」
フローもにっと笑った。
ガーラが入浴から居間へ戻ると、フローは魔法アイテムを片付けて、代わりに風呂へ行った。ガーラは濡れた銀色の髪をおろして、暖炉の前に座った。暖炉に炎は無かった。
ガーラは、リュックから本を出した。タイトルは西大陸の言葉で『夏の夜の異界の小話』。ガーラはクオに問いかけた。
「ねぇ、クオはチェスの時に見た、“向こうの世界”の同じクロスを持つ女学生に会ってみたい?」
「そうだな……。異世界は気になるが、会わなくてもいいな。恐らく向こうでも同じ事を言いそうだがな。心が繋がっているだけで、会わなくても心強い“相方”だったな」
クオは夏の間、心が繋がった女学生を思い出した。真面目で頼りになる性格だった。自分と似ている所があり、不思議な縁は楽しかった。
「向こうで、私と同じクロスを持つ少女と、クオの夢の女学生が会った時、私、クオだと分かったわ」
ガーラはクオの漆黒の瞳を見つめて言った。
「俺は何となく知り合いの感じがしたの覚えている。同じ白のポーンとしてな」
クオは視線にゆるく応えた。
「私はクオがどんな姿をしていても、あなただと分かると思うわ」
ガーラの言葉には熱があった。旅の中で、いつからか、クオとガーラは言葉を贈りあい、心を温め合うことがあった。クオはガーラの心に応えた。
「そうか……ありがとう、ガーラ」
「フローはどうだったのかしら?」
「“向こう”でも会ったが、性格がフローらしかったぞ」
「そうなのね。面白いわね」
ガーラは笑った。
1
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる