上 下
21 / 50
白の章

白四話

しおりを挟む
 ぶどう畑が広がっていた。ここはスターチス王家の直轄領の町だった。エーデルはスターチス王と町に挨拶に訪れた。
「この町のぶどう酒の一部は王家に献上されています。旅人たちにも人気の町で、旅人はこの町に足を止めると、町一番のワインで口を潤すことを楽しみにしているそうです」
 スターチス王は一軒の屋敷まで馬を進めた。エーデルは付いて行った。王が屋敷に到着すると、屋敷の主人が入り口の外まで出迎えた。
「ようこそいらっしゃいました。スターチス王様」
「ご無沙汰していました」
「こちらが女王様ですね。歓迎致します。さあさ、中へどうぞ」
 屋敷の主に促され、王とエーデルは屋敷の中に入った。
「今年のぶどうも良い出来のようですね」
 スターチス王はにこやかに主人に言った。
「お蔭様でして、はい」
 王とエーデルは客間のテーブル席に案内された。
「今日も一杯召し上がられますね?」
「はい」
「こちらの女王様も大丈夫ですか?」
 エーデルはにこやかに答えた。
「ええ。お城では美味しく頂いてます」
「じゃあ、この日のために取っておいたぶどう酒をお持ちしますですさ」
 主人は気持ちの良い笑顔でワインを取りに行った。
 主人は戻ってくると、1本の白ワインの瓶とグラスを持ってきた。そしてもてなすように王とエーデルにワインを注いだ。エーデルは香りを確かめた。馥郁たる香りが心を楽しませた。
「お祝いの時のぶどう酒はどうでございましたか?」
 主人はスターチス王に尋ねた。王はお礼を言った。
「お祝いにぴったりな味でした。来客の方々も喜ばれていたようです。国として客人をもてなすことができました。ありがとうございました」
「それはこちらも作ったかいがありましたですさ」
 主人は朗らかに言った。
 王とエーデルがワインを楽しんでいる最中、主人の小さい娘が入って来た。娘は手にした白い花束をエーデルに渡した。
「エーデル女王様、スターチス王家に来てくれてありがとうございます」
 エーデルは突然のプレゼントに微笑んで答えた。
「まぁ、ありがとうございます。嬉しいですね」
 娘は白い顔を赤く染めて、語った。
「町の人達は、皆喜んでいます。スターチス王様は家族のように思っているので、心から祝っています」
「そうなんですね。優しい王様の元に来られて私も良かったです」
 屋敷の主人は言った。
「またいつでもこの町に来て下さい。歓迎しますよ」
しおりを挟む

処理中です...