南雲くんはナルシストではない

あるふれん

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3.東条さん

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東条ゆい。私の友達。

動きやすい服が好き。部活は陸上部。

時々、言い回しが古い時がある。

高校二年生の初夏に、本人曰くグレたのが黒歴史。
申し訳ないけど、グレたって言い方とか自分で言ってしまうところはかわいいと思う。



「あれ、ひなの弁当、なんかめちゃくちゃデカいエビフライ乗ってない?」
「西尾くんがくれたんだよ。さっき手伝ってくれたお礼にって」
「ああー、そういやなんか手伝ってたね」
「食べる?あーんしてあげるよ」
「いやいいわ。どっちも遠慮しておくわ」
「……」
「あれ、アオバちゃん食べたかった?」
「あ、いや、尊いものを見られたなって。ありがとうございます」
「……?よく分からないけど、どういたしまして?」

お昼休み、私たちは仲の良い3人でご飯を食べていた。
アオバちゃんは二年生になってから仲良くなった子で、作家を目指してるからなのかたまに難しいことを言う。

「にしても付き合い良いよね、あんたも」
「そう?西尾くんの方がよく手伝ってると思うけど」
「それはそうだけどさ、あんたは自主的にやってるじゃん」
「西尾くんのことが好きとかでは?」
「それはないかなー」
「ですよねえ」

別に、困っている人は全員助けたいとか言うつもりはないけれど。
友達の力になれるならなりたい、それくらいの気持ちだ。

「じゃあ南雲は?あいつ、ひなのことよく美しいって言ってるじゃん」
「南雲くんって、結構誰にでも美しいって言ってませんか?」
「いや、あいつ他の人には何処が美しいって言うんだけど、ひなにはただ単に美しいって言ってるんだよね」
「ほうほう、それは面白そうな。ぜひともひなさんの意見が聞きたいですね」
「あはは、ないない」
「一笑に付しましたね……」
「南雲くんはお友達かなー。それに南雲くんも私のことお友達だと思ってるだろうし」
「そうなのかね、結構な特別扱いだと思うけど」
「そうですよ、もし告白されたらどうするんですか」
「うーん……お断りするかなあ。誰にでも美しいって言っちゃう人はちょっとね」

というか南雲くんが私のことを好きな前提で話を進めているが、そんなことは全然ないと思う。
勝手に話を進めて勝手に振ってごめんね、南雲くん。

「なーんだ、残念です」
「創作のネタになりそうにないからって露骨にガッカリしたな」
「だって恋愛ものは王道中の王道じゃないですかー」
「自分で恋愛したらいいじゃない」
「わたし、興味ありませんし。だから人の話が聞きたいんですよ」
「……あたしにもし恋人ができても、アオバには言わないわー」
「あはは、私も」
「えー、ひどーい」

女子高生だというのに華のない会話だが、現実はそんなものだろう。私たちはこれが楽しいのだから問題ない。

「あ、じゃあゆいさんはどうなんですか?最近わたしから恋愛小説借りてますよね」
「え、ゆいちゃんが?」
「ゆいちゃんが、ってどういう意味だ、ひな」
「ごめんごめん、ぐりぐりしないでー」
「尊い……」

またアオバちゃんが変なこと言っている。

「あたしだってそういう作品が読みたい時くらいあるよ」
「まあ小説で読みたいのと実際にしたいかは別ですよね、分かります」
「じゃあゆいちゃんも恋愛には興味ない感じ?」
「興味ないとは言わないけど……。いややっぱこの話はやめよう、アオバの視線がウザい」
「ひどい!」



────────。



恋がよく分からない。恋って何だろう、友達よりも大好きな人に抱くものなのかな。

でも私にも普通の友達より大好きな人は何人か居るけど、その誰とも恋人になりたいわけじゃないと思う。



南雲くんや西尾くんに恋人ができたところを想像する。

うん、心の底から祝福すると思う。そういう確信がある。

ゆいちゃんやアオバちゃんに恋人ができたところを想像する。

こっちも心の底から祝福できると思う。

でもこの四人は私の大好きな人たちなのだ。他にも友達は居るけれど、その人たちよりも。
だからこれを恋と呼ぶのなら、私は四人に恋をしていることになってしまう。



「うーん」
「北添さん、大丈夫?」
「え、わっ、南雲くん」
「驚かせてごめんね、手が止まっていたから。彫刻中にボーっとしてると、危ないよ」
「そうだね、ごめんごめん」
「ううん、ケガしなくて良かった。何か悩み事?」
「悩み事、というか。うーん」

異性に聞くのはちょっと、いや結構恥ずかしいことなんだけど。
でも南雲くんならこういう話題に明るいかもしれない。モテそうだし。

「南雲くんって、誰かと付き合ったりしたことってある?」
「ぼく?ないよ、一度もない」
「そうなんだ、ちょっと意外かも」
「そうかな、ぼくには相応しいと思うけど」
「相応しい?」

「みんなはちゃんと、美しいものを持っている。ぼくにはそれが無いから」

南雲くんの方を見ると、手を止めていて。
その表情はなんだか寂しそうな、羨んでいるような気がした。



「南雲くんは、美しいよ」
「……ありがとう、北添さん」

違う。違うんだよ、南雲くん。
多分その顔は、私の言いたいことがちゃんと伝わっていない。
この感覚的なことを、そのまま南雲くんの中に送り込むことが出来たらいいのに。



南雲くんだって、自分自身を誇っていいんだよって。
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