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外伝:彼女の恋と彼の特別
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東条ゆい。あたしの名前。
南雲ひろと。あたしの好きな人の名前。
好きになった理由を聞かれれば、女子高生らしくロマンチックでキラキラした理由をあげたいところだが、あたしの場合は残念ながら自分の黒歴史に触れなければならない。
高校二年生の初夏、あたしはグレていた。
グレていた理由もこれまた今思えば恥ずかしい話で、部活で自分が伸び悩んでいる時に優秀な後輩が入ってきたから、という子どもじみたものだ。
高校生にもなってそんな子どもじみた理由で、と思われるのも仕方ない。中学生の頃、田舎に住んでいたあたしはまさに井の中の蛙。競う相手が少ない世界で1番だったという、何とも崩れやすいプライドを持って高校生になったから。
……これ以上自分語りしていると恥ずかしくて死ねるので、さっさと本題に入ろう。
あたしがグレて部活に顔を出さなくなっても、現実というものは漫画みたいに部員が駆け付けて呼び戻しに来たりはしなかった。
実際に現実世界で、話しかけてくるなって態度を出してるやつがいたら誰も話しかけないだろう。
ただそんな態度をとっていても変わらず話しかけてくれた人が居た。ひなと南雲だ。
ひなは天然なのか策士なのか、部活のことには触れずくだらない雑談を毎日話しに来てくれた。
で、問題は南雲の方。ある日あいつは遠慮なく部活についてズカズカと触れてきた。あたしも子どもだったから、それはもう激しい言い合いになった。
いや、激しい物言いをしてたのはあたしだけだったけど。
曰く、伸び悩んでも努力していた姿が美しいだとか。
挫折も嫉妬も自己嫌悪も、健全な若者の青春だとか。
グレたなんて言い訳してても、シューズを捨ててないのは諦めてない証拠だとか。
図星だった。図星だったし、今も思うがあたしのこと見過ぎだと思ったし、正直困惑した。だからその時はすごい罵倒した記憶がある。
でもあいつは引かなかった。最後までこんなあたしに向き合って、最終的にあたしが折れて泣きじゃくった。
チョロいと思われても仕方ない。本当はあたしも諦めたくなかったから。
で、次の日からあたしは部活に戻って。部員にも暖かく迎えてもらえて。
南雲のことが特別になった。
あいつは割と軽率に美しいと言う。本人曰くちゃんとそう思ったものにしか言ってないらしいが。
『やっぱり東条さんが走ってる姿は美しいね』
──なんて言われたら。戻りたかった部活に戻るキッカケをくれた、自分の弱い姿を見せた、そんな相手にそんなことを言われたら。
惚れたって仕方がないだろう。
それに気付いたのはすぐだった。
あいつに美しいと言われたら心が弾んだし、あいつが他の女の子に美しいと言っているのを見るたびに心がキュッとなった。
だけどあいつは多分、ひなのことが好きなんだと思う。
だって何が美しい、何処が美しいとハッキリ言うあいつが、ひなに対してだけはただ美しいとだけ言うのだ。
おまえはマセた小学生か。
それでも告白はしたいと思っている。それはあたしの性格上、この初恋を何もせず終わらせたくないという気持ちもあるけれど。
このままだとこの感情が、他の女の子への嫉妬が増大して、真っ黒な何かになりそうで怖いから。
────────。
────────。
────────。
放課後の教室。南雲と二人きりの静まり返った世界。
あたしは彼に告白した。
ヤバい。心臓が爆発する。
いやもうこれは爆発してるんじゃないか?
顔が上げられない。顔を見られるのも恥ずかしいし何より南雲の顔を見ていられない。
この僅かな間の沈黙が耐えられない、早く何とか言って欲しい。きっとあたしを傷付けないように言葉を考えてくれているんだろうけれど。
「ありがとう、東条さん。すごく嬉しい」
ああ、そんな優しい言葉をかけないで。いっそ手酷く振って。じゃないとあたしは──。
「僕からも、よろしくお願いします」
この恋を諦めきれそうに……。
「へ?」
「これから彼氏として、よろしくお願いします」
ごめん、今ちょっとよく分からなかった。いや意味は分かってるんだけど想像してた展開と違うというか信じられないというかなんかボーッとしてきたというかちょっと待って!
「……えっと、東条さん?あの、今のはぼくも付き合いたいと思ってるって意味で、ちゃんと伝わってるかな?」
「待って!待って待って!今整理してるところだから、畳み掛けないで!」
「あ、ごめん!ぼく告白されたのって初めてで、だから返事とかちゃんとしたいなって思ったんだけど、分かりづらかったね!」
「いやいやいや、あたしも告白とか初めてだから、ちゃんと気持ち伝えられたかなーって、不安だったし!」
何やってるんだろう、あたし達。すっごいグダグダだ。小説で見た高校生の告白はもっとスマートだった気がするけど、あんなのフィクションだ、だってこんなに心臓がバクバクするんだから。
というか南雲がこんなに慌ててるのを初めて見た、よく見たら顔が真っ赤だし。あたしも人のことは言えないだろうけど。
「えっと、一旦、座る?」
「う、うん、そうだね」
なんかお互いカタコトになってるし。
脚に力が入らなくなってきたので、適当な椅子に座る。落ち着いてきたら、今度は幸福感が押し寄せてきた。返事、貰ったんだよな。OKって。
「……」
「……」
どうしよう、告白した後って何を話したらいいのかな。告白のセリフとかは予習しまくったけどそれ以外は全くだ。こんなことなら恋愛小説を貸して、なんて言ってないでアオバに直接相談したら良かった。
「えーっとさ、あの」
「あっ、うん、なに?東条さん」
「南雲って、ひなのこと好きなんじゃないのか?」
「……え?」
いや最低かあたし。告白しておいて他の女の話するとか最低かあたし。
いやでもだってそう思ってたから振られると思ってたし、それにしても何でOKしてくれたのとか聞けば良いものをあたしというやつは。
「な、なんで?」
「いやだってほら、ひなに美しいって言ってるでしょ、何がとか何処が、とかじゃなくて」
「あー……そっか、それでか」
南雲は心当たりがあるような顔をして、あたしがひなの友達だから教えるんだけど、と前置きをしてから話し始めた。
「北添さんがすごい気配り屋さんなのは、東条さんには言うまでもないと思うんだけどね。ぼくみたいな変わり者にも、構わず話しかけてくれるし」
「変わり者の自覚はあったんだね」
「う、うん……流石にね。でも一年生の頃からそんなぼくがクラスで浮かずに居られたのは、北添さんが色々手を回してくれたからだと思うんだ」
「……確かにあたしも、割とすぐに変なやつだなあくらいに受け入れてたかも」
「へ、変な……」
ごめん、でも事実だと思うんだ。
「まあいいや、でもそういうところをわざわざ明言するのは野暮でしょ?」
「それでただ美しいって言ってたのか、そもそも言わないっていう選択肢はなかったのか」
「なかったね」
「早いな……」
なんともまあ、現代社会において色々と苦労しそうな性格である。
だが恋は盲目、あばたもえくぼ。そんなところも含めてあたしはこの人を好きになったわけだが。
「でもぼくももう恋人が出来たわけだし、あんまり人に美しいって言うのも良くないよね」
「そうか?あたしは別に気にしないぞ」
「……本当に?」
「……ごめん、多分めちゃくちゃ嫉妬する」
ちょっと強がったけど、やっぱり無理だ。いい彼女になってやりたいけど、少なくとも今は独占欲が抑えられそうにない。
「謝らなくていいよ、変なのはぼくの方だし」
「ありがとう。……なんでちょっとニヤニヤしてるんだ」
「え、顔に出てた?ごめんごめん、嫉妬してくれるんだって思ったら嬉しくなって」
「嫉妬されて嬉しいのか?変なやつだな」
「変なやつだよ、ぼくは」
「それに嫉妬してる東条さん、すごいかわいいなって」
「か、かわっ!?」
いきなり何を言うんだ、せっかく落ち着いていた心臓がまた爆発しそうだぞ。そのせいで全くかわいくない声を出しちゃったし。
というかこいつ、かわいいとか思う感覚ちゃんとあったのか。
嬉しいな。
その言葉だけで、あたしの心はこんなにも弾むのだから。
あたしはどうしようもなく、恋をしているのだと思った。
<了>
南雲ひろと。あたしの好きな人の名前。
好きになった理由を聞かれれば、女子高生らしくロマンチックでキラキラした理由をあげたいところだが、あたしの場合は残念ながら自分の黒歴史に触れなければならない。
高校二年生の初夏、あたしはグレていた。
グレていた理由もこれまた今思えば恥ずかしい話で、部活で自分が伸び悩んでいる時に優秀な後輩が入ってきたから、という子どもじみたものだ。
高校生にもなってそんな子どもじみた理由で、と思われるのも仕方ない。中学生の頃、田舎に住んでいたあたしはまさに井の中の蛙。競う相手が少ない世界で1番だったという、何とも崩れやすいプライドを持って高校生になったから。
……これ以上自分語りしていると恥ずかしくて死ねるので、さっさと本題に入ろう。
あたしがグレて部活に顔を出さなくなっても、現実というものは漫画みたいに部員が駆け付けて呼び戻しに来たりはしなかった。
実際に現実世界で、話しかけてくるなって態度を出してるやつがいたら誰も話しかけないだろう。
ただそんな態度をとっていても変わらず話しかけてくれた人が居た。ひなと南雲だ。
ひなは天然なのか策士なのか、部活のことには触れずくだらない雑談を毎日話しに来てくれた。
で、問題は南雲の方。ある日あいつは遠慮なく部活についてズカズカと触れてきた。あたしも子どもだったから、それはもう激しい言い合いになった。
いや、激しい物言いをしてたのはあたしだけだったけど。
曰く、伸び悩んでも努力していた姿が美しいだとか。
挫折も嫉妬も自己嫌悪も、健全な若者の青春だとか。
グレたなんて言い訳してても、シューズを捨ててないのは諦めてない証拠だとか。
図星だった。図星だったし、今も思うがあたしのこと見過ぎだと思ったし、正直困惑した。だからその時はすごい罵倒した記憶がある。
でもあいつは引かなかった。最後までこんなあたしに向き合って、最終的にあたしが折れて泣きじゃくった。
チョロいと思われても仕方ない。本当はあたしも諦めたくなかったから。
で、次の日からあたしは部活に戻って。部員にも暖かく迎えてもらえて。
南雲のことが特別になった。
あいつは割と軽率に美しいと言う。本人曰くちゃんとそう思ったものにしか言ってないらしいが。
『やっぱり東条さんが走ってる姿は美しいね』
──なんて言われたら。戻りたかった部活に戻るキッカケをくれた、自分の弱い姿を見せた、そんな相手にそんなことを言われたら。
惚れたって仕方がないだろう。
それに気付いたのはすぐだった。
あいつに美しいと言われたら心が弾んだし、あいつが他の女の子に美しいと言っているのを見るたびに心がキュッとなった。
だけどあいつは多分、ひなのことが好きなんだと思う。
だって何が美しい、何処が美しいとハッキリ言うあいつが、ひなに対してだけはただ美しいとだけ言うのだ。
おまえはマセた小学生か。
それでも告白はしたいと思っている。それはあたしの性格上、この初恋を何もせず終わらせたくないという気持ちもあるけれど。
このままだとこの感情が、他の女の子への嫉妬が増大して、真っ黒な何かになりそうで怖いから。
────────。
────────。
────────。
放課後の教室。南雲と二人きりの静まり返った世界。
あたしは彼に告白した。
ヤバい。心臓が爆発する。
いやもうこれは爆発してるんじゃないか?
顔が上げられない。顔を見られるのも恥ずかしいし何より南雲の顔を見ていられない。
この僅かな間の沈黙が耐えられない、早く何とか言って欲しい。きっとあたしを傷付けないように言葉を考えてくれているんだろうけれど。
「ありがとう、東条さん。すごく嬉しい」
ああ、そんな優しい言葉をかけないで。いっそ手酷く振って。じゃないとあたしは──。
「僕からも、よろしくお願いします」
この恋を諦めきれそうに……。
「へ?」
「これから彼氏として、よろしくお願いします」
ごめん、今ちょっとよく分からなかった。いや意味は分かってるんだけど想像してた展開と違うというか信じられないというかなんかボーッとしてきたというかちょっと待って!
「……えっと、東条さん?あの、今のはぼくも付き合いたいと思ってるって意味で、ちゃんと伝わってるかな?」
「待って!待って待って!今整理してるところだから、畳み掛けないで!」
「あ、ごめん!ぼく告白されたのって初めてで、だから返事とかちゃんとしたいなって思ったんだけど、分かりづらかったね!」
「いやいやいや、あたしも告白とか初めてだから、ちゃんと気持ち伝えられたかなーって、不安だったし!」
何やってるんだろう、あたし達。すっごいグダグダだ。小説で見た高校生の告白はもっとスマートだった気がするけど、あんなのフィクションだ、だってこんなに心臓がバクバクするんだから。
というか南雲がこんなに慌ててるのを初めて見た、よく見たら顔が真っ赤だし。あたしも人のことは言えないだろうけど。
「えっと、一旦、座る?」
「う、うん、そうだね」
なんかお互いカタコトになってるし。
脚に力が入らなくなってきたので、適当な椅子に座る。落ち着いてきたら、今度は幸福感が押し寄せてきた。返事、貰ったんだよな。OKって。
「……」
「……」
どうしよう、告白した後って何を話したらいいのかな。告白のセリフとかは予習しまくったけどそれ以外は全くだ。こんなことなら恋愛小説を貸して、なんて言ってないでアオバに直接相談したら良かった。
「えーっとさ、あの」
「あっ、うん、なに?東条さん」
「南雲って、ひなのこと好きなんじゃないのか?」
「……え?」
いや最低かあたし。告白しておいて他の女の話するとか最低かあたし。
いやでもだってそう思ってたから振られると思ってたし、それにしても何でOKしてくれたのとか聞けば良いものをあたしというやつは。
「な、なんで?」
「いやだってほら、ひなに美しいって言ってるでしょ、何がとか何処が、とかじゃなくて」
「あー……そっか、それでか」
南雲は心当たりがあるような顔をして、あたしがひなの友達だから教えるんだけど、と前置きをしてから話し始めた。
「北添さんがすごい気配り屋さんなのは、東条さんには言うまでもないと思うんだけどね。ぼくみたいな変わり者にも、構わず話しかけてくれるし」
「変わり者の自覚はあったんだね」
「う、うん……流石にね。でも一年生の頃からそんなぼくがクラスで浮かずに居られたのは、北添さんが色々手を回してくれたからだと思うんだ」
「……確かにあたしも、割とすぐに変なやつだなあくらいに受け入れてたかも」
「へ、変な……」
ごめん、でも事実だと思うんだ。
「まあいいや、でもそういうところをわざわざ明言するのは野暮でしょ?」
「それでただ美しいって言ってたのか、そもそも言わないっていう選択肢はなかったのか」
「なかったね」
「早いな……」
なんともまあ、現代社会において色々と苦労しそうな性格である。
だが恋は盲目、あばたもえくぼ。そんなところも含めてあたしはこの人を好きになったわけだが。
「でもぼくももう恋人が出来たわけだし、あんまり人に美しいって言うのも良くないよね」
「そうか?あたしは別に気にしないぞ」
「……本当に?」
「……ごめん、多分めちゃくちゃ嫉妬する」
ちょっと強がったけど、やっぱり無理だ。いい彼女になってやりたいけど、少なくとも今は独占欲が抑えられそうにない。
「謝らなくていいよ、変なのはぼくの方だし」
「ありがとう。……なんでちょっとニヤニヤしてるんだ」
「え、顔に出てた?ごめんごめん、嫉妬してくれるんだって思ったら嬉しくなって」
「嫉妬されて嬉しいのか?変なやつだな」
「変なやつだよ、ぼくは」
「それに嫉妬してる東条さん、すごいかわいいなって」
「か、かわっ!?」
いきなり何を言うんだ、せっかく落ち着いていた心臓がまた爆発しそうだぞ。そのせいで全くかわいくない声を出しちゃったし。
というかこいつ、かわいいとか思う感覚ちゃんとあったのか。
嬉しいな。
その言葉だけで、あたしの心はこんなにも弾むのだから。
あたしはどうしようもなく、恋をしているのだと思った。
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