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三章 山での攻防 前編
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その結果、全員が散り散りに別れてしまった。
もうだいぶ時間が経過している。
俺は森の中を彷徨っていた。右も左も、方角さえも分からない。ずっと闇雲に歩き続けていた。
ふと唐突に、目の前の藪が不自然に動く。ガサガサと音を立てていた。
すぐに俺は身構え、戦う備えをした。魔物かも知れないと、思っていたら、ー
直後に藪を突き抜けて、杖を持った少年が姿を現した。
鉢合わせた途端に、彼は目が合うや泣き出した。
「うえぇ。…」
「だ、大丈夫か?」
と俺は聞き返した。
「よ、よかった。…ずっと一人で、…心細くて、…途中で魔物に会ったら、どうしようって。」
と少年は、ポツリポツリと喋りだす。終いには此方に抱きつくと、離れようとしない。
「お、おい!?」
「う、うぅ。…」
「えっと、…」
さすがに俺も困惑してしまう。対処の仕方に思い至らない。力任せに拒否も出来ずに途方に暮れた。
その時、脳裏に昨日のリキッドとの、やり取りが過る。
「はぁ。…仕方ないなぁ。」
俺は呟くと、徐に少年の頭に手を置いて、優しく撫でだす。
対して少年は驚き目を丸くしているも、徐々に落ち着きを取り戻していく。
俺も一息つき、胸を撫で下ろした。ただ同時に自分の様子にも疑問を持つ。やはり今日の行動には、違和感しかない。かつての自分なら、あり得ない事だらけである。
「あ、あの。…」
と、少年が不安そうに呼び掛けてきた。
俺は「なんでもない。」とだけ伝えて、誤魔化していた。
それから俺達は、ようやく移動を再開しだす。行く宛もなく、目につく方へと進んでいる。
隣では少年が引っ付きながら、付いてくる。片方の手で此方の服を掴んで、頑なに離なさい。
「大丈夫だ。…置いて行かないし、…でも歩き難いんだ。…離してくれないか。」
「…。」
「えっと、…お前。…山の道は解るか?」
「…。」
俺は可能な限り優しい口調で、喋りかける。
少年は無言だった。ただし首を横に振って返事した。
「道は解らないか。…なら、テッド達を探すしかないな。」
と俺は結論づけると、辺りの様子を伺う。さらに耳を澄ますと、
離れた場所から、微かに音がする。
何かが勢い良くぶつかっているようだ。転々と音のする位置が変わり、次第に離れていくようだった。
ボアが通っている時の騒音だ。と俺は確信すると、音のする方向へと進路を切り、ゆっくりと慎重に歩きだす。
「待ってください…。は、速いですよ。……」
と少年は呟きながらも、歩く速度を合わせて付いてきていた。
もうだいぶ時間が経過している。
俺は森の中を彷徨っていた。右も左も、方角さえも分からない。ずっと闇雲に歩き続けていた。
ふと唐突に、目の前の藪が不自然に動く。ガサガサと音を立てていた。
すぐに俺は身構え、戦う備えをした。魔物かも知れないと、思っていたら、ー
直後に藪を突き抜けて、杖を持った少年が姿を現した。
鉢合わせた途端に、彼は目が合うや泣き出した。
「うえぇ。…」
「だ、大丈夫か?」
と俺は聞き返した。
「よ、よかった。…ずっと一人で、…心細くて、…途中で魔物に会ったら、どうしようって。」
と少年は、ポツリポツリと喋りだす。終いには此方に抱きつくと、離れようとしない。
「お、おい!?」
「う、うぅ。…」
「えっと、…」
さすがに俺も困惑してしまう。対処の仕方に思い至らない。力任せに拒否も出来ずに途方に暮れた。
その時、脳裏に昨日のリキッドとの、やり取りが過る。
「はぁ。…仕方ないなぁ。」
俺は呟くと、徐に少年の頭に手を置いて、優しく撫でだす。
対して少年は驚き目を丸くしているも、徐々に落ち着きを取り戻していく。
俺も一息つき、胸を撫で下ろした。ただ同時に自分の様子にも疑問を持つ。やはり今日の行動には、違和感しかない。かつての自分なら、あり得ない事だらけである。
「あ、あの。…」
と、少年が不安そうに呼び掛けてきた。
俺は「なんでもない。」とだけ伝えて、誤魔化していた。
それから俺達は、ようやく移動を再開しだす。行く宛もなく、目につく方へと進んでいる。
隣では少年が引っ付きながら、付いてくる。片方の手で此方の服を掴んで、頑なに離なさい。
「大丈夫だ。…置いて行かないし、…でも歩き難いんだ。…離してくれないか。」
「…。」
「えっと、…お前。…山の道は解るか?」
「…。」
俺は可能な限り優しい口調で、喋りかける。
少年は無言だった。ただし首を横に振って返事した。
「道は解らないか。…なら、テッド達を探すしかないな。」
と俺は結論づけると、辺りの様子を伺う。さらに耳を澄ますと、
離れた場所から、微かに音がする。
何かが勢い良くぶつかっているようだ。転々と音のする位置が変わり、次第に離れていくようだった。
ボアが通っている時の騒音だ。と俺は確信すると、音のする方向へと進路を切り、ゆっくりと慎重に歩きだす。
「待ってください…。は、速いですよ。……」
と少年は呟きながらも、歩く速度を合わせて付いてきていた。
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