スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

２話 二章 ギルドの屋敷のあれこれ

１５

　「そういえば、アルフォンス様。…ここへ来る途中で、ダフネ様から言伝てを承りました。」
　「ほう。…して先輩は、何と言っていたのですか？」
　「はい。…リキッド様のお仕事が、すぐには終わりそうにないので、ヒルフェ様達は先に食事を済ませる様にとの事でして。」
　「そうですか。…では、我々で給仕をしますよ。」
　「な、に！？」
　それを俺は聞いて、驚愕しながら声を漏らしており、愕然と肩を落とす。助けを求められるかと目論んだが、宛が外れてしまう。
　「ひーにぃ、食べようよ。…あたし、お腹すいた。」と、ヒナが言ってきた。此方の様子を気にも止めてないようだった。
　仕方なく、俺も黙って頷きながら返事を返すと、一緒に食卓を囲む事にし、食前の祈りをしていた。だが、すぐに次の脅威が迫りくる事になる。
　「…本日のお食事は、鶏肉のソテーハニーマスタードソース、温野菜、白身魚のムニエル、パン、チーズ、燻製肉のスープでございます。」
　と、マアが料理の説明をする。他の二人が給仕し、此方の前に料理の皿を置いていた。
　その皿をヒナは見て、「わぁ！」と歓喜の声を漏らす。さらには、ナイフとフォークで自分の分の肉を一口大に切り分けたら、
　「はい、ひーにぃ。」
　「なんだ？」
　「あーん。」
　と、肉を刺したフォークの先端を、此方の口の方に向けてきたのだった。
　「げっ！？…」
　対して俺は僅かに表情を引きつらせながら、後ろに距離を取るが、椅子の背凭れに阻まれてしまう。再び恥ずかしがこみ上げており、全身が拒否反応を示していた。だが、ダフネの言葉が脳裏を過りだし、あまり強く拒否するのも憚られた。
　ふとメイド達から、また興味津々の視線を向けられており、「キャー！…大胆。」という甲高い声も聞こえくる。
　(あぁ、もう！)
　俺は心の中で悪態をつくと、彼女のフォークの料理に食らいつき、即座に離れると咀嚼していた。しかし、味は何もわからなかった。
　「…美味しいでしょ？…これ、…あたし、すきなの。…こっちも美味しいんよ。」
　そんな此方の様子にも、ヒナは気がつかないまま、また同じ行動を繰り返す。今度は魚の方を切り分けて、差し出してきた。さらには満面の笑みを浮かべながら、此方に向かって期待の眼差しを向けてくる。若干だが頬も赤くなっていた。
　「あぁ、そうかい。」
　「…ほら、このパンも柔らかいよ。」
　「…もう、いいよ。自分で食えるし、お前も自分のを食べろよ。」
　「え～、やだ！…あーん！」
　「…くっ、…………。………あーん。」
　もはや俺は抵抗するのを止めた。相手の気が済むまで、されるがままの状態を受け入れているのだった。