スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

２話 四章 冒険者ランク取得試験 (後編)

２９

　「ヒルフェ様、」
　「…なんだよ？」　
　「ありがとうございます。」
　「…あ、あぁ？…」
　「私の家族を助けてくれて、ありがとうございます。」
　「………。」
　それを俺は聞いていると、次第に何も言えなくなった。おまけに視線を反らしてしまい、頬を指で搔いている。あまりにも感謝されて、こそばゆい気持ちが溢れるのを誤魔化していた。
　「ふふ。…そうして誤魔化すのは、旦那様と一緒ですね。」とダフネは、さらに言葉を続けてくる。
　「お疲れ様でした。…」
　「っち、…」
　と、俺は思わず舌打すると、寝返りをうちながら、今度こそ顔を背ける。ついでに、
　「だから、俺は疲れないんだってば。…」
　と、か細く小さな声で悪態を呟いていた。もはや顔が熱っているようだ。自分でも解ってしまっていた。もう必死に目を合わせない様に周囲に視線を向けていく。
　視線の先では、今回の後処理が行われているようだ。
　離れた場所では、ギルドの職員達が蛇の口から、他の受験者達を救出しており、金髪の若者やサベルが出てきている。
　その手前では、ヒナがキリエを伴いながら、此方に向かって、ゆっくりと近づいてくる姿があった。
　「ふん。」
　と俺は鼻を鳴らすも、心から安堵していた。ゆっくりと息を吸い込んでから、静かに吐くと、今回の騒動が終わったのだと実感したのだった。