スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

間章 ある男の末路とその他の行く末(２話)

８

　やがて砂浜に、全ての受験者達が集まった。
　その直後に、アルフォンスが大声を張り上げて喋りだす。
　「皆様！…試験会場に現れた魔獣は、退治されました！…もう大丈夫です、ご安心ください。…繰り返します、暴れていた魔獣は退治されました！…」
　すると次の瞬間に、受験者達が喝采をあげだした。
　さらに次々と人々が唐突に走り出し、ヒルフェの周りを囲んでいくと、称賛の言葉を送っていた。
　「おぉ！…少年よ！…ありがとう、君のお陰で助かったのだ！」
　「あぁ、そうだ。…あんたが逃がしてくれたから、俺達は大した怪我もなく、無事だったんだ。」
　「…すまん。…こっちは何も助けられなくて。」
　それにヒルフェは、戸惑いを露にしているようだった。
　しかし、その後も続々と受験者達は集まってくる。
　そんな様子を、リキッドは静かに眺めながら、微笑んでいる。さらに心の中では、嬉しさや誇らしさ等の感情が渦巻いており、今にも抱きしめたい衝動を、ぐっと堪えていた。
　「旦那様。」
　やや遅れて、ダフネが合流しながら呼び掛けきた。さらに彼の様子に気がつき、声を掛けようとしていた。
　しかし、それをリキッドは手で制止し、再び周りのギルドの職員達の方に向き直ると、
　「ほら、我々は後の始末や片付けをしよう。」
　と、指示を飛ばしていた。
　それからダフネ及びギルドの職員達も、すぐに行動を開始しだした。各々が抜き手も見せぬ動きで作業に取り掛かりだした。
　「さて、…ここからは、忙しくなるな。」
　リキッドも彼等を見送ると、間髪入れずに気絶したターナを運ぶのに、加わっていった。
　そうして、ランク取得試験での騒動は、一旦は終結したのだった。