スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

３話 三章 祖父の友達と同世代の亜人と【ヒルフェ】

４

　やがて日は暮れてしまった。
　すっかりと空は闇夜となる。
　分厚い雲の隙間から、満月の光が差し込んでおり、辺りを照らしているも、右も左も解らない程に真っ暗だった。
　だが少し離れた場所では、湖がある。湖面にも光が反射して、白く輝く部分が揺れて、ゆらゆらとしている。
　そこへと馬車は迷わず向かい、ゆっくりと停車した。
　ほぼ同時に、他の馬車から兵士達が次々と降りてきて、夜営の準備を進めている。
　やがて湖の畔に、大きな焚き火が焚かれた。
　さらに沢山のテントが設営された。
　「…そろそろ作業も終わるようだな。…我々も降りるか。」
　とドンドがワゴンの扉を開けて降車する。
　やや遅れてアスターも続いていくと、笑顔で此方に振り返りながら手招きし、付いてくる様に促している。
　俺は頷きつつ、後を追いかけて、ワゴンから外に出たのだった。
　そのまま三人で、焚き火に近づき、側で暖を取り出す。
　次の瞬間には、ドンドが身体を伸ばして、ぼやきだした。
　「あぁ～、やっと降りれたぜ。…腰が辛いなぁ。」
　「いやはや、長い時間も座っていると疲れたね。…ヒルフェ君は、どうだい？」
　と、ついでにアスターも同意すると、此方にも話を振ってくる。
　「いや、俺は別に疲れないから。」
　と、俺も答えた。
　だがアスターは、「若いねぇ。…叔父さんは、もう年だから。」と勘違いした発言を呟くだけで、再び焚き火の方に意識を向けていた。
　「ん？…あれは？」
　すると、不意にドンドが何かに気がつき、前方を指差した。
　この場にいる全員が振り向く。