スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

四章 後編 交戦する戦闘と、戦う意味と【ヒルフェ】

８

　その時に、俺は背筋に寒気が走るのを感じた。
　ふと辺りの気配も、嫌な雰囲気となる。とてつもない緊張感や薄気味悪さが漂い、ひしひしと伝わってくる。
　隣でミーツも、何かの気配を感じとり、目付きを鋭くしていた。
　｢何だ？｣
　と俺は思わず周囲を警戒して、彼方此方を見渡していく。
　すると再び森の奥で、何かが動きだし、ゆっくりと此方の方へと近づいてくる。
　どうやら気配からして、人間のようである。やがて、森から出てくると姿を現した。
　そこには、怪しい二人組の男達がいた。
　一人は、短い茶髪の大男だ。背中に大剣を背負い、抜刀するや切っ先をまっすぐ向けてくる。
　もう一人は、紫色の派手な髪をした細身の男である。なよなよと、しなをつくる仕草をしていて女のようだ。右手に鞭を持ち、地面に叩きつける。
　どちらも癖が強い見た目をしていて、普通の人には感じられない。明らかに蛇神結社の仲間だと思われる。
　「あっ！！？」
　ほぼ同時に、ミーツは驚いて声を漏らしながら、男達を凝視している。やや口を開くと噛み締めて、歯を剥き出しにする。まるで獣の威嚇のようだ。
　俺も改めて振り返ると、戦う構えをしたまま、拳を強く握りしめる。自ずと男達の方を警戒していた。
　その直後に、茶髪の大男が真っ先に動き出し、此方へと突撃してきた。背中の鞘から大剣を抜くと、出鱈目に振り回しだし、すぐ近くにいる兵士達を襲いながら、次から次へと薙ぎ倒していく。
　「ふはは！！…オラァ！…掛かってこいよ！！」
　「…さぁ、こっちも準備なさい。」
　さらには細身の男も行動を始めたようだ。腰から鞭を手に取ると、先端を地面に叩きつけて大きな音を出し、背後の森に向かって合図を送っていた。
　次第に奥の森からは、新たな蛇神結社が数人も姿を現した。ついでに全員で、鎖で繋いだ大きな何かを引っ張っている。
　そこから、また荒熊(ラーギング・ベア)達が現れ、姿を見せる。
　全ての魔物は首輪で鎖に繋がれており、ざっと数えて数匹はいた。どれもが血走った両目で睨み付けており、今にも襲いかかろうとしている。
　さらに、その内の一匹が咆哮をあげだした。凄く怒りを露にしながら、興奮している。