スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

四章 後編 交戦する戦闘と、戦う意味と【ヒルフェ】

１７

　そんな大人達の後ろ姿を、俺は呆然と見つめていた。だんだんと目の前の光景を見ていると、疎外感を感じてしまい、自分自身にも腹が立った。同時に情けなさや悲しい気持ちも溢れて、途方に暮れてしまう。
　暫くすると、此方の周囲には重苦しい雰囲気が漂う。
　なんとなく俺は、居心地の悪さを感じており、心の中で苛つく感情が渦巻く。
　すぐ側のヒナやキリエも、そわそわと落ち着かない様子だ。
　「ねぇ、…ひーにぃ。」｢少し、お話があります。｣
　だが突然、ヒナ達が話しかけてきた。
　対して俺は前を向いたまま、視線だけを向けながら、「何だ？」と一言だけ返した。
　すると彼女達は、やや躊躇しながらも、やがて意を決した表情となると、再び喋りだした。
　「ヒルフェ様！…我々だけミーツさんを、助けましょう。」
　「行こうよ。…ひーにぃ。」
　「何？！」
　それを俺は聞いて驚くと、ようやく彼女達の方へと顔を向け、話に聞き入っていく。
　「叔母様の言い分は、最もです。…それでも、私達にも悔しい気持ちもあります。…目の前で、人が拐われたのに、何も出来なかったのは。……だからこそ、このまま黙ったまま何事もなく、過ごすなんて、自分が自分を許せなくなります。」
　と、キリエが代表して、己の主張を伝えながら、此方に視線を向けていた。両目には強い意思を秘めている。
　同じくヒナも無言のまま、此方を見ており、両手の拳を力強く握りしめている。
　その後に、俺は交互に二人の顔を見つめ直すと、
　(…そうか。…俺も悔しかったんだな。…それに、)　
　と、心の中で引っ掛かっていた事を悟った。
　それから三人で話をしていく。
　｢…もし仮に、俺達だけで助けに行っても、…俺だけ力不足だ。…お前達を守りながら、戦えない状況に陥るかもしれない。…その時は、危険な目にあうぞ。｣
　「…心得ております。」「…私だって、戦えるもん。」
　｢…わかった。…二人とも、俺の我が儘に付き合ってくれ。…だけど、危なくなったら、無理せずに自分達の身を優先して守るんだぞ。｣
　｢｢はい！！｣｣
　｢なら、…やるぞ。｣
　と、俺は最後に合図をし、話を打ち切ると、作戦を相談し合い、やがて行動を開始した。
　全員で大人達の方の様子を伺う。
　未だに彼等は、慌ただしくしていた。
　リキッド達は、話し合いを続けており、夢中になっている。
　兵士達も忙しそうに作業しており、動き回っている。
　誰も彼もが此方の存在に気にしていない。
　今だけが行動に移すチャンスだった。