逃がしてください!王子様!

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7)新しい友達?

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「ではSクラスの顔合わせはここまで。明日から通常通り授業を行なって行くので寝坊しないようにするんだぞ☆」

うちの担任はまるで嵐のような人だった。サプライズのびっくり箱のような所から出てきたと思ったら、自分の言いたい事を言い終わったら風のように去っていった。いつの間にか終わっていた顔合わせについて行けず、僕を含めたほとんどがキョトンとしている。

皆どうしたら良いのか分からず、自分の席から動けないでいると教卓の前に第二王子殿下が立つ。

「今、魔法づてにナタリー先生から伝言が来てね。明日、僕たちの実力を見た上でこのクラスの学級委員長と副委員長を決めるらしいよ。だから今日は皆寮に戻って入学式の疲れを取ろうじゃないか」

第二王子殿下の言葉を聞き、一人、また一人と席を立ち始める。

(お、もう帰ってもいいのかな?)

立ち上がる人たちが増えたのは決して帰るためなどではなかった。次々に第二王子殿下や、レナート様、ルーナ嬢の元に我先にと駆け寄っていく。まだここは高等部とはいえほぼ貴族社会の様なものだ。皆、高等部を卒業した後のコネが欲しくてたまらないのだ。また、親に『第二王子殿下とお近づきになりなさい』とでも言われているのだろう。

何故、コネが欲しくてたまらない僕がその輪の中に入らないのかって?それよりもお金になる人物がいるからである。王子様や、公爵家の後継者よりもお金になる人物、それは商人や話の分かる教師などだ。教師に関しては魔法の応用方法なども教えてくれる場合があるため得られるものが多い。

正直、貴族の子供に商品を売りつけようとしたところでここの人たちはほとんどお金の話がわからないだろう。領地が潤っていればいるだけお金は何もせずとも入ってくるし、考える機会なんてないだろう。しかも、お金のある貴族は僕たちを見下している人がほとんどでもはや交渉すらできないのだ。

(ここはSクラスだし、商人の子なんて見つかるはずないか)

諦めて寮に帰ろうとした。僕は今、意識阻害できる眼鏡をかけているため帰ったとしても誰にも気づかれることは無いだろう。気づかれたとしても僕が誰だか分からないはずだ。静かに席を立ちその場を離れようとした時、ふと誰かに手を握られる。

「君はいいの?」

僕の手を引いたのは糸目に若草色の髪が特徴的な男の子だった。正直、気づかれるなんて思っていなかったから驚く。

「そういう君こそに入った方がいいんじゃないか?」

質問を質問で返す。多分彼は僕と同じタイプの人間だろう。

「自分はあの中に入るよりも君の方がお金の匂いがすると思ったからね。例えば、その顔につけてる魔道具とか」

「…よく気づいたね。君の名前を聞いても良いかな?」

「自分はネイロ・ジャバス。一応今は男爵家の三男。よろしくな」

「僕の名前はフィオーレ・アルノート。であれば聞いたことあるかもしれないが没落寸前の貧乏貴族さ」

僕がなぜこんなに堂々と「没落寸前の貧乏貴族」と言うことができているのかというと、彼、ネイロ・ジャバスは僕に触れた瞬間に僕と彼を包み込むように防音魔法をかけたのだ。この魔法がかかっているうちは外にこの話が漏れたりはしないだろう。

「自分達気が合うと思うんだ。良ければ友達にならないかい?」

「僕も君の様な友達が欲しかったんだ。静かな場所で話さないか?」

「喜んで」

防音魔法がかかっているとは言え、ここは教室の隅だ。誰に見られているかわからない。多分それを彼も理解しているのだろう。教室を出た僕は彼に連れられて静かな裏庭のベンチに座る。人通りのない静かな場所だ。

「君は自分が商人だって気づいていたよな。何で分かったん?」

「普通の貴族だったらあの場で防音魔法をかけてまで僕に話しかけたりしないよ。彼らは貧乏人には興味ないからね」

「まあ、その通りやな。Sクラスなんてカモを見つけるためだけに入った様なもんやけど同業のもんに会えるなんてついてるわ」

Sクラスはそんな「カモを見つけるために入る」と言って入れるほど簡単ではないんだが…。僕がSクラスに入れたのも、授業料を削減するために死ぬほど勉強したからだ。

それからネイロとは自分の生い立ちから、高等部に入ってから卒業するための目標までを語り尽くした。ネイロは元々ジャイロ商会の三男として生まれ、物心着くときから兄達に商売のイロハを教えてもらっていたという。卒業後は自分の商会を一から立ち上げて独り立ちしたいらしい。

「自分の兄達はだいぶ過保護でな、何かしようとする度ちゃちゃ入れてくるんよ。息が詰まりそうだったから学園に通うことができて本当に良かったわ」

きっとこれは照れ隠しなどではなく、本心なのだろう。だからと言って兄が嫌いなわけでは無いそうだ。彼も僕と同じように家族に恵まれて育ったのだろう。

「もうこんな時間か。そろそろ寮に行かないと」

「高等部に入ったら強制的に寮生活とか終わってるよな。どうせならフィオーレが同室なら良いのになあ」

「もしそうなればこの3年間充実したものになりそうだ」

高等部に入って初めて友人ができたことでこの先の学園生活が幾分か楽しみになってきた。僕たちはその場を後にし、寮に向かうのだった。


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