逃がしてください!王子様!

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9)始動!学園生活

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「ふわあ」

僕はいつも6時に目を覚ます。昨日は第二王子殿下…クラウン君と同室になりどうなることかと思っていたが、寝室は別のためゆっくり眠りにつくことができた。寮のベッドは僕が毎日寝ている家のベッドとは違い、ふわふわとしていて身体が吸い込まれるような気持ちよさだった。

(危うく初日から寝過ごしてしまうところだったな)

まだぼーっとしている頭をどうにか覚まそうと体を起こす。クローゼットの中には制服と、マジックアイテムが入っている。基礎魔法を使って素早く着替える。見た目は普通の服だがかなり軽い素材でできていて少しの攻撃も防いでくれるほどの優秀さだ。どんな生地を使っているのか是非とも聞いてみたいものだ。

朝ごはんを食べるために部屋の共同スペースに移動する。ほんの少しだけ忘れていた。僕があのとルームメイトだということを。

「やあ、フィオーレ早起きだね。おはよう」

「お、はようございます」

「朝ごはんを持ってきて貰ったから一緒に食べよう」

寝室を開けると、ニコニコといつもの笑みを浮かべたクラウン君が朝ごはんの準備された食卓についていた。朝ごはんというには豪華な食卓に胃もたれがする。パン一つでさえいい素材を使っているのだろう。まだ朝なのにお肉が出るとはどういうことだろうか、きっとこの朝ごはんだけでも僕たちの一週間分くらいの食費になるだろう。

「意外とフィオーレは少食なんだね」

「そうでしょうか、でも確かにあまり食べる方ではないかもしれません」

「今日から授業も始まるわけだし、しっかり食べていた方がいいよ」

何故王子殿下にそんなことを言われなければいけないのだろうか。そんなに貧弱そうに見えたのか?しかし僕は毎日学園には徒歩で通学してきたため体力には自信がある。そこら辺の貴族には負けていないだろう。僕は少し意地になっていつもよりも多めに朝食を取ることにした。貴族は毎日こういう食事をとっているのだろうか、美味しいが量が多すぎて苦しい。

僕は重たくなったお腹を支えながら学園に向かった。僕がご飯を食べている時も殿下は何考えているのかわからない笑顔でじっと僕をみていた。それがどこか居心地悪くて、お腹いっぱいで休みたかったのを我慢しながら寮を後にしたのだ。

寮を出て周りに誰もいないことを確認してから認識阻害用のメガネとローブをかける。メガネは昨日一つ路地裏にいた男に渡してしまったから、スペアを持っていく。こんなこともあろうかとスペアを数個家から持ってきていたのだ。

(やっぱりこれをつけていると落ち着く)

僕は一目につくことがあまり得意ではないらしい。育ちのせいもあるだろうが、他人の視線には敏感に反応してしまう節がある。それが悪意でも善意でのだ。だから僕は周りからの視線を消すためのマジックアイテムを開発した。実の話、このメガネとローブは魔物討伐の際にも役に立つらしくそこそこの売れ行きだ。

ーーー

「おはよう、ナタリー先生だぞ☆みんな揃っているかな?」

軽快な挨拶と共に教室に入ってきたのはSクラスの担任のナタリー先生だ。

(何故彼は普通に教室のドアから入って来ないんだろう)

今日のナタリー先生は天井からポンっと蝙蝠のような姿で登場した。心臓に悪いから早急にやめてほしいものだ。周りも担任の奇行に呆気に取られている。

「今日は待ちに待った初授業!ああ、この日をどのくらい待ち侘び侘びたことか!」

ナタリー先生がパチンと指を鳴らした瞬間視界が一気に変わる。いつ魔法陣の展開をしたのか一切わからなかった。こんなにふざけていても王国最高の魔術師の名は伊達ではないようだ。

「ああ、悪い悪い。説明がまだだったね。今日は君たちの技量を見ていきたいから外での授業だぞ☆」

周りを見渡すと特に何もなく、ただただ広いグラウンドのようなところに飛ばされたようだ。ナタリー先生の話からすると魔物のいる森にでも放り出されるものかと思っていたが…

「ああ、魔物とか魔獣を相手にすると思っていたのかい?そんなこと初回からしないよ。君たちの相手はこの僕だ」

「…これって」

「そう、君たちのことは少し調べさせて貰ってね。今手元にあるものは君たちにあった武器だ。それを持って僕を倒しにきたまえ」

僕の手元にはいつの間にか杖が持たされていた。確かに僕は魔法を使う時は杖の方が使いやすいが…周りを見渡すとそれぞれ剣であったり、斧、槍などそれぞれに合っているであろう武器を持たされている。ちらりと先生の方を見るが相手は丸腰、隙はあるように見える。

「とりあえず、先生を攻撃すればいいのですね」

(あれはウォルター家の…)

そう言って彼は先生に狙いを定めた。魔術師の家系で水魔法に特化していると聞く。そんなことを考えているうちに彼は先生めがけて水魔法を繰り出した。だが、それが先生の元へ届くことはなかった。

「君たちの相手をするのは僕じゃないさ。期待をさせてしまったのだったらごめんね。君たちの相手をするのはこの子たちだ!」

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